報恩の鐘を撞いて 岩船寺古刹に車を走らせて足元に白いミヤコワスレの咲く境内は一層静寂である。濃淡の緑に包まれてひっそりと建つ、十三重の塔の石の重なりの見事さを愛で、花の盛りの過ぎた黄菖蒲の群れの池の畔に立つ。蓮の葉に覆いつくされた池の面に、1輪の花を見つける。「ご~~ん」本堂の屋根を見下ろすように境内は、上り坂になる。坂を登っている途中、境内の緑の中に梵鐘が一つ流れた。その音に誘われるように登っていった。「報恩の鐘」いかされていることに感謝し心を込めておつきください。素晴らしい言葉との出会いである。生きているという不遜なものでなく、確かに人は生かされているのである。自分以外の全ての事象に感謝の気持ちを込めて、梵鐘をつかせてもらった。その響きが山に消えていくのを確かめて坂を下った。