横内謙介さん主宰、劇団扉座公演

「新浄瑠璃 百鬼丸」

を観てきました。


手塚治虫さんの「どろろ」を原作にしながら、

どろろの設定が変わっていたり、

浄瑠璃で描かれる場面があったり、

シレッとギャグが出てきたり、

横内ワールド全開。

偶然同じ回を観ていたある監督は、

「傑作。ひとつも無駄がない」

と絶賛していました。



天下盗りを目論む戦国武将が、

生まれてくる我が子の肉体の48ヶ所を

魔物たちに与える取引をします。

そのため、

心と僅かな部分だけで生まれてきた百鬼丸。

川に流されながらも生き延び、

自分の体を取り戻すため、

純真無垢な心と、

母が持たせてくれた霊剣の力で

魔物を退治していくのですが…


物語が進むにつれ、

魔物とは、

人間の弱さや欲深さだと

気付かされます。

ピュアそのものだった百鬼丸でさえ、

人間の形に近づくにつれ、

我を忘れてしまう場面も。

一方で

百鬼丸と旅する羽目になったどろろは、

最初は一番しょうもない人間なのですが、

次第に百鬼丸と心通わせ、

最後は、

誰もが陥るやもしれぬ人間の愚かさを

突きつけられてきた観客にとって、

救いになります。

哀しくも。


ベテラン劇団員の皆さんは、

立ち姿や歩く様だけでも心情が滲み、

中堅劇団員は力強く存在感を放ち、

若手が名脇役にもなれる。

原作や脚本、演出の素晴らしさは

言うまでもないのですが、

今回、劇団としての色んなものが

バチっとハマった感じでした。

今、ここでしか観られない傑作、的に。


客演の吉田美佳子さんは

黒子として舞台に立ち、

百鬼丸の心の声を熱演されていました。

まっすぐ透明感のある声は

百鬼丸の純真無垢さにぴったりなのですが、

圧巻なのは、

百鬼丸に血が通ったときの爆発力。

そして、

声を発しないときの心の動き。

思考を巡らせていたり、

イラついていたり、

心が粉々に砕けたり。

原作では「…」と表現されるような

セリフのない、

でもとても大事な一コマが、

黒子という手法だからこそ、

吉田さんの表情や佇まいから、

鮮明に伝わってきました。


どろろ役の山中崇史さんはもう、

基本ずっとダメ人間なのですが(笑)

どうしても憎めない。

そして、最後には希望の光になるのだから

参っちゃいます。

それを、

自然体で演じられてしまうところにも。

10年ぶりの再々演なのに、

セリフ入っていたんですって。




東京公演は明日千秋楽ですが、

来月には千葉市と厚木市で上演されます。


そうそう、観に行かれる皆さま、

ハンカチをお忘れなく!

私は鼻が詰まって苦しかった…

バタバタしていて日焼け止めだけで

出かけましたが、結果大正解(笑)

メークしてたら

終演後はどろどろになっちゃって

皆さんに会えなかった気がします。