12月3日、こまつ座の「連鎖街のひとびと」を観ました。

全く予備知識なしで行った私、今頃わかったこと。

連鎖街とは戦前の満州国大連の繁華街の名前であった。

 

この作品の舞台になっている満州は、1906年日ロ戦争前までは、ロシアが租借(中国の土地なのに実質的な統治を)していたところ。

それが日露戦争後、日本の租借地にし、その後日本は満州国という国を作ってしまった。

1945年戦争が終結すると再び、ロシアの占領下になる、という時代背景です。

 

1945年8月末、日本に引き上げることもままならず、たえず、ソ連の強制収容所に送られる恐怖の中で繰り広げられる劇は、面白可笑しくすすめられます。

そんな重い、大事なことを笑いの中で伝えようとする、井上ひさし、という人はすごい作家だったな、と改めて思います。

 

1947年生まれの私も子供のころ、満州、開拓、引き上げ、という言葉は日常よく聞きました。

長野県が一番多いようですが、東北地方からもたくさんの人が満州の開拓団となっていきました。

(祖父が視察で満州へいったという話は、祖父からでなく、祖母からよく聞いたが、詳しいことは覚えていない)

そして、敗戦となって、戦後生まれの私の耳にも大人たちが話す言葉が断片的にはいってきたのでした。

お嫁にいった村生まれの人がうちに来て、満州から引き揚げてくるときの苦労を話していたのでしょう、敗戦となるや、関東軍が真っ先に帰国してしまい、取り残された人々の大変な苦労など、かすかに記憶にある。

 

劇中にも、一刻も早い帰国を望む国民に、日本政府からは「日本も大変な状況で、帰ってこられても困るから大連でよろしく自活されることを望む」という連絡があって失望している場面がありました。

 

この劇で笑いながらも当時のことに思いをはせ、笑いながらも涙を拭きながら、これは決して昔の話ではない、とも思う76歳でした。