https://www.asahi.com/articles/ASN5764G8N57ULBJ00K.html
新型コロナの抗体を発見 診断薬や検査薬への応用に期待
新型コロナウイルスを識別して無力化する抗体が見つかった。花王(本社・東京)と埼玉大発のバイオベンチャー・EMEなどの研究チームが100億種類以上の候補の中から分離に成功し、7日発表した。診断薬や検査薬への応用が期待される。
抗体はウイルスなどに結合するたんぱく質。チームは、ラクダ科動物に由来し、一般的な抗体の10分の1の大きさで構造も単純な「VHH抗体」と呼ばれる抗体を候補にして探索。新型コロナウイルスによく結びつくが、風邪を起こす他のコロナウイルスには結びつかないと期待できるものを見つけた。
新型を効率よく見分けるため、チームは抗体を外部の研究機関に提供するなどして、PCR検査より早い診断・検査への応用を目指す。VHH抗体は改変が容易でウイルスの変異にも対応しやすいうえ、大量生産にも向いているという。
北里大の協力で、この抗体がウイルスの細胞への感染を抑えることも確認した。治療薬への応用はすぐにはできないが、花王の安全性科学研究所の森本拓也さんは「新型コロナウイルスに対する強い武器の一つになることを祈っている」と話した。(藤波優)
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- RePHAGEN株式会社 邦文表記リファージェン株式会社
VHH抗体について
医薬品開発領域において、「抗体医薬」の製品化が展開されていますが、開発・製造コストが高く、高分子抗体であることから生産性や長期保存性に欠けるなど、解決すべき課題は未だ潤沢に存在します。
この課題解決法の一つとして、ラクダ科動物特有のH鎖抗体を超低分子化したVHH抗体の利用があります。
ラクダ科VHH抗体は開発・製造コストが安い(標的抗原に強く結合する抗体を抗体ライブラリー法により迅速に開発することが可能)、生産性が高い(抗体の生産は大腸菌などの発現系を利用することが可能)、安定性に富む(80度以上の高温に曝されても抗原結合能を維持できる高い安定性を有している)など、多くの利点を有しており、近年このVHH抗体技術に関する特徴を生かした医薬品開発が注目されています。
抗体が使用される産業領域は、創薬・医薬品の他、検査用診断薬や検査機器のセンサーとしての利用があり、医薬品や検査用診断薬は、人に限らず畜産業や水産業にも利用されます。
抗体作製法の比較 | |||
抗体作製法 | ポリクローナル抗体 | モノクローナル抗体 | |
ハイブリドーマ法 | 高安定型VHH抗体開発法 | ||
期間 | 4~12週間 | 16~24週間 | 1~4週間 |
必要抗原量 | 数mg | 数mg | 0.1mg以下 |
動物 |
動物免疫が必要 (動物飼育施設、費用) |
動物免疫が必要 (動物飼育施設、費用) |
動物免疫不要 |
手法 | 抗血清からの抗体精製 | ハイブリドーマ作製技術 | 分子生物学的手法技術 |
生産量 | 有限。動物頭数による。 | 無限増殖細胞を使用するので無限 | 大腸菌等を利用した分子生物学的手法により無限 |
安定性 | 生体由来の不安定さがある | 熱に不安定なものもある | 熱・変性剤・pHに対する安定性が高い |
バラツキ | 個体差・ロット差がある | 個体差・ロット差が無い | 個体差・ロット差が無い |
抗体は標的物質(抗原)に対しての特異性が高いことから、医薬品として副作用のリスクが小さいという点で優れており、現在は抗体そのものの開発と、その効力を増強する方向で抗体薬物複合体や二重特異性抗体の開発が精力的に進められています。
(略)
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