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ビジネス特集
日本の輸出 意外なものが伸びてます

日本勢のメダルラッシュで沸くピョンチャンオリンピック。開会式が行われた今月9日に、オリンピックとはまた違った形で海外で活躍する「モノたち」が発表されました。去年輸出された農林水産物や食品です。その額は5年連続で過去最高を更新。初めて8000億円を超えました。内容を詳しく見ていくと、そこには意外なチャンスが見えてきます。 (経済部記者 楠谷遼)

海外で人気の意外な品目

農林水産省が発表した去年の農林水産物と食品の輸出実績。品目別で金額が大きかったのは「日本酒」などの酒類や「ホタテ貝」「真珠」などですが、増加している品目には意外なものも少なくありません。

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例えば「植木」。輸出額は126億円余りで前年比で57%増加しました。主な輸出先は中国やベトナムで、農林水産省やJETRO(日本貿易振興機構)によると、中国などでは富裕層がステータスシンボルとして庭を日本風にするのが人気で、日本のマツやツツジなどの需要が高いというのです。

特に人気なのは、高さが10m近くにもなる「イヌマキ」。日本で長い年月をかけて育てる技術も評価されているそうです。日本では大きな木が植えられる庭付きの戸建ては減少傾向ですが、海外に目を向けたことが実績につながったようです。

また乳製品のうち、「粉乳」も前年比で9%増加。ほとんどは「粉ミルク」の需要だということで、伸びが目立つのはベトナムやカンボジアへの輸出。背景には、経済成長で女性の社会進出が進み、乳幼児向けの粉ミルクの需要が急増していることがあります。

日本では少子化で需要の縮小が見込まれる中で、こちらも成長する海外市場に浸透している形です。農林水産省は「日本の粉ミルクの安全性が受けているのではないか」と分析しています。

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さらに水産物の中では、22%増えた「さば」。主な輸出先はアフリカのナイジェリアです。実は、西アフリカではさばが人気だということで、去年豊漁だった日本から冷凍さばが大量に輸出されたそうです。

農林水産物の輸出に詳しい、みずほ総合研究所の堀千珠主任研究員は「特定の品目が伸びているのではなく、品目の幅が広がってきている。国内ではあまり人気がないものでも、実は海外では受けることも十分ありうる」と話します。

海外に打って出るコメ農家

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コメ農家も輸出に目を向け始めています。約70haの水田で生産する大規模農家、茨城県下妻市の石島和美さん(61)は、おととしから地域の生産者と輸出を始めました。

ことしは輸出の目標を約1000トンと、去年の3倍に引き上げました。ターゲットはアメリカの日本食レストランやスーパーなど。石島さんは、たびたびアメリカで試食会を開いて消費者の反応を聞くとともに、輸出用に収穫量が多い品種を選び栽培方法を工夫することで、価格競争力を高めています。

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コメの輸出額は、去年前年比で18%増えるなど、ここ数年は毎年20%近い増加が続いていますが、全体に占める割合は1%にも届いていません。ことしから国の減反政策が廃止され、生産者はコメを自由に作れるようになりますが、石島さんは「10年後20年後のコメ農業を考えると、輸出はそう簡単ではないが、今がまさに苦労しなければいけない時だ。世界の人たちに日本のコメはおいしくて値段もリーズナブルだという認識を広げていけば、必ず日本のコメは世界の中でナンバーワンとしてやっていけると思う」と話します。

いかに探るか海外ニーズ

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海外のニーズをつかんで輸出を増やそうという生産者も出てきています。
秋田県大潟村のコメ農家で作る食品会社「大潟村あきたこまち生産者協会」は、原料に小麦粉ではなく「米粉」を使ったパスタを開発して輸出。ことしは輸出額の目標を、去年の約500万円から一気に1億2000万円まで引き上げました。

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しかし、「ここまでの道は決して平たんではなかった」と社長の涌井徹さん(69)は話します。涌井さんたちが米粉の商品開発を始めたのは約10年前。当初は国内向けにパンなどを作りましたが、売り上げが伸びなかったことで輸出を模索します。海外の展示会に通い現地のニーズを探る中で、欧米ではダイエットなどで、小麦に含まれるグルテンを避けたいというニーズが高いことに着目。

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その後は、グルテンフリーを証明する認証を取得。さらに、アメリカと欧州で麺の固さの好みも異なることにも対応して商品を改良。ようやく輸出拡大にメドがついたということです。

涌井さんは「自分たちが売りたい商品をそのまま売るのではなく、相手の国の食文化やニーズに対応して商品を改良しなければ、可能性は広がらない」と語ります。

海外目指し“体質強化”

一方で、日本は輸入食品が多いのだから、国産の農産物は輸出よりも、もっと国内に供給すべきではないかと思う人が多いかもしれません。もちろん国内の需要に応えることは最優先です。

ただ、人口が減少するという中で、ただでさえ高齢化などで担い手不足が深刻な農林水産業の生産力をどう維持していくかも重要です。縮小していく国内市場だけに向いていると、生産能力も低下しかねません。

そのためには、需要が見込まれる海外市場を目指し体質を強化することも必要だとして、政府は農林水産物と食品の輸出額を来年までに1兆円とする目標を掲げています。

しかし、これまでのペースから見ると目標達成は難しいのも現状です。個々の生産者などの努力を、どのようにオールジャパンの取り組みにつなげていくかが問われています。