ユーロ体制を指導するエリート層の本音 | にゃんころりんのらくがき

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柴山桂太@滋賀大学準教授

さて、2013年になりました。
安倍政権の誕生で景気回復の期待が高まっていますが、海外を見ると明るい材料が見当たりません。
アメリカは「財政の崖」、中国はバブル景気の後退と、世界経済は今年も厳しい状況が続くでしょう。

特に危険なのがヨーロッパです。今後、世界経済が再び大きな津波にのみ込まれるとしたら、震源地はやはりユーロ経済になるでしょう。

現行の体制を維持する限り、ギリシャもスペインも構造改革を進める以外に、債務危機を脱出する手立てがありません。
しかしこれほどの不況で歳出カットや増税を進めれば、失業率が膨れあがるのは当然です。事実、ギリシャもスペインもひどい失業率に苦しんでいます。その影響は両国にとどまりません。ユーロ圏の内需も縮小していますから、遠からず、不況の波はドイツにも押し寄せるでしょう。今は小康状態を保っているユーロ危機が、最大の正念場を迎えるのは、これからなのです。

ユーロ体制の構造的な欠陥については、いろいろな論評があります。
私が見るところ、この欠陥は制度的である以上に、思想的なものです。というのもユーロの実験は、新自由主義の理想を色濃く反映しているからです。

ユーロの理念は、究極の市場統合です。そのため加盟国は、関税や規制を撤廃し、国によって違う国内の制度(非関税障壁)も統一化を進めてきました。つまり貿易の完全自由化です。

さらに通貨まで統合して、為替変動のリスクも無くしました。そして統一通貨を維持するために、加盟国は財政赤字を一定幅に抑える協定も結びました。「小さな政府」がユーロの掟です。

貿易の完全自由化、規制緩和、構造改革、そして「小さな政府」という並びは、サプライサイド経済学とか新自由主義と呼ばれるものですね。競争によって供給要因の改善をはかることが、経済成長をつながるという考え方です。

ユーロ体制は、その考え方に基づいてつくられています。つまり欧州経済統合とは、サプライサイド経済学や新自由主義の理想を実現するという、究極の実験だったのです。

新自由主義の考え方に基づけば、どんなに不況になろうが、政府はいたずらに財政拡張をしてはいけないし、勝手に規制や保護を強化してもいけません。

ユーロ体制とはまさにそのような理念に導かれています。共通市場を導入した結果、競争力のある「北」(ドイツ)と「南」(ギリシャ)の格差が如実に表れましたが、悪いのは競争に負けた方です。ギリシャには構造改革を進めて、賃金引き下げの努力をしてもらう必要がありますし、いっそうの規制緩和を進めてもらわなければなりません。失業率がどんなに跳ね上がろうが、政府債務がどんなに膨れあがろうが、全ては「自己責任」なのです。

もちろん、そう突き放しているとユーロ体制が壊れますから、最低限の救済は行われています。でも、原則は原則です。ギリシャやスペインには自力で立ち上がってもらわないと困る、というのがユーロ体制を指導するエリート層の本音でしょう。新自由主義というとアメリカが本場というイメージがありますが、この20年を振り返ると、実はヨーロッパこそ、その最大の信奉者だったのです。

しかし、この厳しい不況下で南欧諸国にさらなる構造改革を押しつけても、景気は良くなりませんし、税収も増えません。失業率25%となれば社会が持ちません。そんな体制が長続きするはずがない、というのが常識的な見方でしょう。

今後、ヨーロッパが路線を転換するとすれば、それは単なる制度の変更にはとどまらないでしょう。ユーロ体制を導いてきた思想の変更、つまりは新自由主義からの転換を伴うはずです。

その転換がどのようなものになるのか、今の段階では、確かなことは言えません。確かなのは、今の体制を続ける限り、ユーロの未来はないということだけです。今の不況は、緊縮財政で乗り切るにはあまりに深刻です。ヨーロッパが新自由主義路線からの転換を決断しない限り、世界経済危機の第二波が始まるのは時間の問題というべきでしょう。

リーマンショックから今年で五年目に突入しますが、危機はまだ最初の段階を超えたに過ぎません。2013年の世界経済は、そのような視点から見ていく必要があります


http://www.mitsuhashitakaaki.net/2013/01/18/shibayama/
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ユーロは財政統合へと進むのか?それとも・・・


ドラギ総裁の絶妙な舵取り?で危機を乗り越えたかに見えるユーロも、
しかし実際、希望の星ドイツにも陰りが見え始めたようだし。。。
騙し騙しのアメリカも。。。

う~む。むむむ。
中国を煽って、、、

安にして、、、また日本から毟り取る算段ではありますまいね?