【瀕死の白鳥】
ダンサー/朴智善
ピアニスト/宮内美寿保
『白鳥は自分の最期を知ったとき
群れから離れてたった一人で死を迎える。
まだ生きたい。
そんな気持ちを抱え苦しみもがき
最後の力を振り絞るが
希望は叶わずたった一人で息絶えてしまう』
……バレエ名作
『瀕死の白鳥』の美しくも悲しい姿です。
今年、世界中が
新型コロナウイルス感染症の影響を受け
多くの人達が日常を奪われました。
バレエ界も公演自粛を余儀なくされたため
私たちダンサーにとってこの自粛期間は
【踊りたいのに踊れない】
期間となったのです。
このような期間は
私にとっては初めてではありませんでした。
怪我などによって過去に同じような状況を
経験したことはあったからです。
しかし、コロナによる自粛は
過去と同じようでありながら全く違うもの。
私が今回の自粛期間中に強く感じたのは
【でも、私は生きている】
という感情でした。
そして、それを強く感じた時、心の底から
【表現したい】
という気持ちが溢れ出てきました。
私はずっと、『瀕死の白鳥』を
恐れ多い作品と感じ、でもずっと、
いつか踊ってみたいとも思っていました。
そこで自粛期間中に部屋でも練習できるのでは? と思い立ち、踊ってみることにしたのです。
そんな中で、自粛をきっかけに始めた
オンラインレッスンをピアニストの
宮内美寿保さんが受講してくださり
舞台は難しくても共演することが
出来ないだろうか……
というアイデアをもとに宮内さんに
協力をお願いしこのような
動画を作成することになりました。
自分の躍りを自ら撮影し
動画配信するということはやはり
恐れ多いことであると感じます。
二の足を踏む気持ちもあり始動が
遅くなってしまったために
舞台が再開してからの投稿となりましたが
踊りを指導していただいたり
衣裳に関してもわがままをお伝えして
協力していただきようやく
配信することができました。
『死』というものを想像したときに
私には愛する人たちがいて
そして私を愛してくれる人たちがいる
ということに改めて気づかされました。
白鳥がもう一度飛びたいと羽ばたく姿は
私が感じた
【踊りたいのに踊れない】
気持ちと重なるものでした。
そして、そんな白鳥の姿を表現する瞬間に
私は【生きたい】
という思いのエネルギーを感じたのです。
今般のような大変な状況かにあると
生きていることを
愛されていることを
忘れてしまう時もあるでしょう。
でも……
私は生きている。
私は一人じゃない。
自粛期間を通して、この作品を通して
再確認した気持ちを胸に刻み
これからも一所懸命に生きていこうと思います。
自ら企画した動画配信ではございますが
ピアニストの宮内さんをはじめ
ご協力くださった皆さんに感謝を申し上げ
いつも私のことを愛し、許して、支えてくれる
皆様へ
感謝の気持ちを込めて配信致します。
まだまだ大変な状況が続きそうですが
私の愛する人達の笑顔が絶えることのないよう
心から願っています。
愛を込めて 朴智善