程度の強い眼瞼下垂症では、切らない眼瞼下垂や挙筋前転法では目の開きが改善しないデメリットがあります。重度かどうかの目安は、MRD1の数値が0mmを切っている人で、形成外科専門医の診断によって正確に見極めることができるでしょう。*主に先天性の症例ケースが多いです
さて、こうしたケースでは、筋膜移植によって眼瞼下垂を治療することがあります。
具体的には太ももや側頭部から筋膜を持ってきて、前頭筋と瞼板をつないで強化します。
ゴアテックス素材やナイロン糸を使用する術式もあるのですが、自家組織ではないので、将来的な感染リスクもある点が懸念点となります。
筋膜移植での眼瞼下垂の最大の失敗例は「兎眼(とがん)」です。
これは目を完全には閉じ無くなってしまうミスで、過矯正とも言われます。
必要量以上に強く、目を開かせるようにしてしまったデザイン的な失敗です。
目を閉じた際の宇和瞼とした瞼の隙間が1ミリ以下であれば、日常の生活に支障をきたさないため、そのまま経過観察となることが多いですが、2ミリ以上隙間があると眼球が乾燥して隔膜潰瘍・視力への影響が懸念されますので機能障害になりえます。
またリッド・ラグと言って、目の開きの左右差が発生するリスクもあります。
例えば。右目の方が早く開いて左目の方が後から開くみたいな。
眼瞼挙筋のみを使用して目を開く天然の目と、筋膜移植によって前頭筋を使って目を開けるのとでは微妙に瞼の動きのタイミングが違って見えることがあるからです。
これも必要があれば、修正の対象になりえます。