「手紙」
東野圭吾・著
東野圭吾はいわゆるミステリー作家だと思いますが、この小説は推理小説ではありません。
犯罪者の家族が受ける社会からの差別とその心情と現実を真正面から描いた作品です。
特に小さい子供を持つ親としては、子供までが受ける謂れの無い差別の描写では胸が締め付けられる思いでした。そして、最後の<手紙>を読んだとき、涙を流すことを禁じえませんでした。
東野作品で個人的には一番好きな作品です。
さて、先日、WOWOWで、映画版の「手紙」を観ました。小説とはずいぶん違う設定がありますが、なかなかよかったです。世間を騒がせまくりの沢尻エリカもすごくいい演技をしていると思いました。(あの「別に・・・」といった女王様キャラと関西弁のマッチングもいいし笑。)
幼い子供が差別を受ける場面で、沢尻エリカが演じる主人公の妻は、「何も悪いことしてへん!逃げることあらへん!子供は私が守る!」と言う。
そして主人公が働く会社の会長は、「差別は仕方が無い。差別はある。犯罪を犯すということはそういうこと。」と言い切る。そして、「ここから始めなければならない」と。
この小説、映画の主題を集約していると思いました。
そして主人公の兄は、「私は手紙など書いてはいけなかったのです。」と手紙に書きます。
犯罪者の罪というものは、その家族にまで、そして犯罪が起きたときにはこの世に生を受けていない者まで巻き込んでしまうことを、この一文で表しています。
しかし暗く重く終わらせないエピソードもちゃんと準備されています。
エピソードの内容は小説のほうが好きですけど。
まだ読んでない人、超お勧めです。☆5つ。
読書が苦手の方、映画でもOK。ぜひ!
ただいま、「ダイイング・アイ」読んでいます。