私たちがよく耳にする音の響きには「何らかの共通点」や「ある一定の傾向」があるようです。例えば、何度も繰り返し流れるテレビCMからはスナック菓子や子供向けの商品に「パピプペポ」が本当に多く使われていることがわかります。例を挙げると・・・
パピコ・パナップ・パックンチョ ピノ・ピンキー プリッツ・ぷっちょ・プリキュア ペッツ・ペロティ ポッキー・ポリンキー・ポケモン確かに、この唇から「パッ」と発射される軽やかな「パピプペポ」には意味はなくても、親しみやすさやかわいらしさを与える響きを持っています。 ですから、若い世代や子供が好むスナック菓子や商品にあえてこの音が含まれているんですね。
さらに子供の頃の口げんかを思い出してみると「ばびぶべぼ」がよく用いられていたことを思い出します。このような濁音の響きは・・・
ばか・びんぼう・ぶた・ぶさいく・ぶす・ぼけ・でべそ・でぶ・でくの坊どうも人を悪く言うような口汚い表現に使われていることに気づかされます。
音の響きが与える印象は日本語だけでなく英語にも見出すことができるのです。カタカナのキャラクターの名前に目を向けると・・・
ミッキー・ミニー・マリーちゃん・スヌーピー・キティーちゃん・キューピー・ミッフィーprettyや babyのように「イー」の音で締めくくられています。英語ではこの「イー」音はかわいらしい印象を与える響きなのです。
意味を超えた語感の力
以前から気になっていたこの音の響きについてもう少し知りたくなり、次の2冊を手にとってみました。
黒川伊保子著「怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか」(新潮新書) 「語感対決77」(山海堂)'
以前から気になっていたこの音の響きについてもう少し知りたくなり、次の2冊を手にとってみました。
黒川伊保子著「怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか」(新潮新書) 「語感対決77」(山海堂)'
やはり音の響きには潜在的に人の心を動かす効果があるようなのです。では「ことば」が持つどのような音の響きが人の意識に働きかけるのでしょうか?
ことばの音が脳に描くイメージを著書は次のように紹介しています。
知り合いの女の子が次のように言ったします。
知り合いの女の子が次のように言ったします。
「私、彼氏ができたわ。 シュンスケ・マナブ・リョウ・キイチっていうの」
このように彼氏の名前が4つあります。これらの名前を聞いただけで、それぞれの男の子にどのようなイメージが湧いてくるでしょうか?実際に見たことも会ったこともありませんが、音の響きによって抱くそれぞれのイメージは異なるはずです。著者が紹介したイメージを見てみましょう。「シュンスケ」:さわやかなスポーツマン (風が吹く抜けるようなSHの音とKの弾むような音) 「マナブ」:ちょっとナイーブな文学青年 (内に向かって響くM/Nと繁殖・増殖をイメージする振動音のB) 「リョウ」:クールなアーティスト系 (舌を最も技巧的に動かす知的なryo音・舌を花びらのようにひらりとひるがえすRの挑発的でセクシーな音) *リョウは知的でセクシーな響きを持つのでホストクラブにはきっと一人はいる名前 「キイチ」:切ないほどまっすぐな男の子 (母音が全て舌が前に出るI音でK/CHのような力強く息を出す音)
それぞれのイメージの理由が( )にあります。それによると「ことばを発音するときに体がどのように感じているか」(発音の体感)がこのイメージと結びついているようなのです。音の響きが「緊張したり」「ホッとしたり」「大きさ」や「速さ」を感じたりとさまざまなイメージを運んでくるのです。
発音の体感についてもう少し読み進めてみると、それぞれの音が与えるイメージが分析されていました。ちょっと見てみましょう(^_^)
K音:喉を硬く締めて強く息を出す乾いた音 ⇒硬さ・スピード感・乾きのイメージ・・・カリカリ、キリキリ、カスカス S音:舌の上を滑らせ抜ける音で湿度が保たれている ⇒爽やかな風のイメージ・・・ソヨソヨ・サラサラ・スルスル H音:気管からの息が摩擦もなくそのまま出てくる ⇒気管の体温が温存された温かい音・・・ホカホカ・ハフハフ・フーフー M音:柔らかく合わせた唇からゆっくりと息を出す音 ⇒まろやかな母性・・・モコモコ・ムチムチ・モチモチとあります。もちろん「こじつけ」もありますし、音から受ける印象も様々ですから「このような考えもある」という受け取りの方が楽しいと思います。最後は最も面白いと感じた分析を載せますね。
カゴメのトマトジュースが売れるのは?
トマトジュースには「カゴメ」「キリン」「デルモンテ」という三大ブランドがあります。どのブランドもパッケージのデザインと味にそれほど大きな違いはないように思われます。では、売り上げもどんぐりの背比べなのかというとそれがそうではないのです。カゴメが圧倒的なシェアを占めているのです。
トマトジュースには「カゴメ」「キリン」「デルモンテ」という三大ブランドがあります。どのブランドもパッケージのデザインと味にそれほど大きな違いはないように思われます。では、売り上げもどんぐりの背比べなのかというとそれがそうではないのです。カゴメが圧倒的なシェアを占めているのです。
スーパーの棚で、主婦が手を伸ばす「我が家のトマトジュース」はなぜか「カゴメ」なのです。「カゴメ」がトマトジュースのカリスマだという伝説があるわけでもありません。どうして「カゴメ」なのでしょうか。
先ず飲料業界の雄「キリン」が参入してもカゴメの地位が揺るがないのは「キリン」の音の響きに何か問題があるようです。「キリン」の持つ硬質なK音と冷たさと透明感のあるRi音は、キリンレモンのような「爽快」な炭酸飲料によく似合います。ですから、もしスパイシーなトマトジュースであれば売れるかもしれません。
一方「カゴメ」には甘くコクのあるやさしいイメージを与える響きがあるようで、フルーティーなトマトジュースとの相性がとてもよく、ついつい女性が手を伸ばすようになるのです。「デルモンテ」については老舗のブランド力でホテルのダイニングやバーで見かけるトマトジュースに多く用いられ「しっかり」した印象を与えるとありました。音の響きを分析すると次のようになります。但し、この場合は「音の響き」よりも「ブランドのイメージ」も大きく関係があるように思えます。
KaGoMe⇒K音によりドライ感は十分だが、フレッシュ感、キレが不足。けれど、M音の甘さ・コクにより、よく熟したトマトを連想させ、濃厚なトマトジュースが思い浮かびます。 KiRiN⇒コクは無いが、透明感のRiが効いてすっきりキレがあり、後味はさっぱり。しかしキレ・フレッシュ感があってもトマトジュースとしては物足りない感じです。 DeRuMonTe⇒コクがあり、フレッシュ感もある。D音の重量感から味というよりは老舗の信頼を 強く感じさせます。まさに高級トマトジュースにはぴったりのブランド名といえます。
やはり「パピプペポ」の商品名から感じた潜在脳に働きかける音の響きは本当にあるようです。手にした2冊の本からもそのことが伺えます。私たちにとって「心地よい音」や「不快な音」があるように聴いただけで何となく湧くイメージってあるんですね。音の響きが私たちの感覚に結びつくのは考えてみると面白い♪