誰かが転んでケガをするのを見たとき、私たちは思わず「痛っ!」と叫んでしまいます。あえて声に出さない人もいるかもしれませんが、それでも、心の中で「痛っ!」と感じているはずです。これはちょっと不思議です。見ているだけなのに、「痛っ!」とはどういうことなのでしょうか?
どうやら、このとき、自分が転んでケガをしたときと同じ脳の領域が反応しているようなのです。
つまり、私たちの脳には、「直接体験しなくても、知覚することができる」働きが備わっているのです。
つまり、私たちの脳には、「直接体験しなくても、知覚することができる」働きが備わっているのです。
確かに、映画で悲しい場面を見たときは、どっぷりとその感情に浸ってしまいます。
さらに、キスシーンを見たときは、まるで、自分が恋人とキスをしているようなちょっとした熱い興奮を覚えます。
このとき、脳内で働く細胞のいくつかは、自分が恋人とキスをするときに働く細胞と同じなのです。
さらに、キスシーンを見たときは、まるで、自分が恋人とキスをしているようなちょっとした熱い興奮を覚えます。
このとき、脳内で働く細胞のいくつかは、自分が恋人とキスをするときに働く細胞と同じなのです。

これは、私たちの脳内にある「物まね細胞 ミラーニューロン」という脳神経細胞の仕業だと言われています。「ミラー」という名称が付いていますので、やはり「鏡」のように、目で見た出来事を脳内に映し出し、それが、物まね(直接体験しなくても、知覚することができる)作用をもたらしているのです。
自分ではない他の誰かが苦悩や苦痛にさいなまれているを目にすると、ミラーニューロンが働いて、私たちにその感情を読み取らせ、他人の苦悩や苦痛をまるで自分のことのように感じさせてくれます。いわば、このミラーニューロンは「共感」の土台になっています。
この「物まね細胞 ミラーニューロン」の働きで、私たちは他人の心理状態を自分の脳内で再現します。だからこそ、他人の気持ちを読み取ることで、他人の気持ちに思いやりを持って対応できるようになるのです。 この「ミラーニューロン」の形成は、生後間もない赤ん坊のときに既に始まっているらしく、母親が笑いかけると、赤ん坊は笑い返す。また、母親が答えて笑う。この繰り返しにより、ミラーニューロンが、育まれ、これが、成長すると、他人の心理状態を理解する脳へと発展するのです。つまり、生後初期の親の働きかけで、思いやりの気持ちが育つということなんでしょうね。
これまでの内容をまとめると、人の気持ちを脳内で「物まね」することで、他人の感情を気にかけるようになるということになります。
心理学では、実験によって、この「物まね」は共感と好感に深く結びついているということが分かっています。つまり、人はカメレオンであればあるほど、共感を覚えやすいというのです。
一緒に居合わせた相手の「顔をこする・足を揺する」などの行為・仕草を、真似する傾向が強い人ほど共感の深い人間であるとか、
複数の人と共同作業をさせた結果、自分の行為・仕草を真似する人に好意を抱く傾向があることなど、模倣行動と共感傾向の関係が指摘されています。
夫婦でも四半世紀一緒に暮らすと、容貌の類似性が高くなるとも言われ、これは「好いているから模倣する」が発展した興味深い例えですね。
このミラーニューロンには、目で見た物を脳内で再現する作用があると述べましたが、もし、暴力性の強い映画などを見た場合にはどうなるでしょうか。
やはり、暴力に繰り返し接することで、それは模倣暴力を誘発しているようなのです。つまり、メディア上の暴力をよく目にする子供は、そうでない子供よりも攻撃的になる傾向と言われます。
暴力の視聴と暴力行動の長期的なつながりも既に分かってきています
メディアの暴力を幼少期に目にすることが約10年後の高校卒業後の攻撃性や反社会的行動との相関関係にあること
幼少期のメディア暴力の視聴と幼少期の攻撃行動は30歳時の犯罪性とも相関関係にある ことも研究上明らかになっていたのです。
さて、この本では
脳内の「ミラーニューロン」は気づかないうちに、自動的に私たちに模倣を行わせており、私たちの自主的な行動も、この社会的影響によって大きく制限されている。
とあります。 私たちの行動は、過去に「目で見たもの」や「経験したもの」基づいているはずですので、これは頷ける点です。かつて「いじめらていた子」が「いじめっ子」に様変わりする場面を見たことがありますが、これは自分がされたのと同じことを繰り返しているに過ぎません。
この「ミラーニューロン」の働きが、脳科学の領域に止まらず、他者への共感や寛容の気持ちを育て、攻撃性を軽減するなど社会生活にも貢献できる方法もあるのではないでしょうか。
社会生活を成り立たせる要素として「他人の気持ちを理解する感情」は重要な位置を占めるはずです。考えてみると、私たちが「他人に優しくできる」のは、それは、今までに「優しさ」を受けてきたからです。優しく相手に接することで、相手がどんな気持ちになるかは、周囲から優しさを受けてきた人ならよくわかるはずです。他人に対する優しさはきっと自分に戻ってくるはずですし、逆に他人に対する暴力・暴言はきっと自分にはね返ってくるはずでしょう。「物まね細胞 ミラーニューロン」の働きから、そんな社会生活のあり方も見直す機会ができました。
人の心がわかるのはどうしてか?脳科学の分野からは「ミラーニューロン」の働きであると言うことができますが、「人の心を読む」って、私たちに備わった大切な感覚ですよね。
人の心がわかるのはどうしてか?脳科学の分野からは「ミラーニューロン」の働きであると言うことができますが、「人の心を読む」って、私たちに備わった大切な感覚ですよね。