ストーマ・ソング・ライター心の日曜日♪-2.jpg
久しぶりに妻を怒鳴りつけてしまった…。

その夜僕は手術後初めて仕事の会合に出席した。
すると会議の途中、自分でも驚くほど大きな音でストーマからガスの鳴る音がした…。
慌てて手で押さえたがどうしようもなく、「誰だよ!?汚い!!」不意に誰かが声を上げる。…仕方ないのだ。
僕がストーマになった事を知らないのだから。
ましてやストーマの僕には、ガスを我慢する術もない。
だけど根性無しの僕は、真っ赤になって逃げるように退席してしまった…。

すると、ちょうどそこで偶然会った知人に食事に誘われ、先ほどの事もあるので気分転換になるかと、誘われるまま同行した。

彼はどこからか僕が入院していた事を聞いていたらしく、初めは気を使っていたようだが、生ビールをジョッキ3杯飲み終える頃にはそれも消え、急に「顔色が悪い!」と言い出した。
最初は「もう大丈夫だよ」と笑いながら流していたが、あんまりしつこく言うのでカチンと来てしまい、「顔色悪いようだから帰って寝るわ!」と言ってテーブルに一万円を置いて帰った。

帰宅したのは午後8時。予定よりずいぶん早く帰宅してしまった…。

妻はその日地区の婦人会の飲み会。あまりアルコールが得意じゃない妻は、僕の病気の事もあってか遅くとも10時半までには帰宅する事がほとんどだ。
だけどこの日は11時を回っても帰らない。
僕はこの日ちょうどストーマの装具交換の日だったため、なるべくなら一番最後に入浴しようと思っていた。
折しも外は雷雨!
大雨洪水警報が出ている。
少し心配になって来た所に妻から電話があった。
「今から○○さんの旦那さんに送ってもらって帰るから~」と楽しげな声。電話の向こうから大きな笑い声とカラオケの音…。

カチ~ンと来てしまった。

僕はストーマになってから、毎日何かしら諦めながら生きている。体力が回復し普段の生活に戻って行くたび、気づかなかった事が当たり前に出来なくなった事が増えて行く…。悔しい思いも辛い思いも後悔も、いちいち口には出さないが噛みしめながら生きている…。

ストーマを圧迫するから帯が出来なく、浴衣を諦めたから、浴衣が正装のお祭りのお囃子手を諦めた。
ピタッとしたジーンズも、ベルトも同様の理由で諦めた。
友人と行く温泉も、娘に泳ぎを教えにプールに行くのも諦めた。
娘と風呂に入るのも諦めた…。
(ノ_・。)

その日の僕は、会合で起こった事がきっかけで、胸にしまい込んでいたたくさんの想いが一気に溢れてしまった…!

帰って来た妻を見るなり怒鳴りつけてしまったのだ…。
そして自然と涙が溢れていた…。

…今ではすまないと心から思っている。
闘病中、明るく前向きな妻にどんなに励まされ支えられた事か!本当に感謝している。
だけどこの日、僕は孤独な気がした。
忘れられていると思った。
愚痴りたい事がたくさんあった。
僕がこんなに切ないのに、脳天気に楽しんでいる妻が許せなかった。
癌患者のわがままだろうか?辛さや切なさを一緒に感じて欲しいと思った…。

そうして妻を泣かせてしまった…。
妻は何回もごめんなさいと言った。
そんな事があったなんて、日々そんな風に感じていたなんて知らなかった…と言ってまた泣いた…。

僕には強烈な自己嫌悪だけが残った…。
悪いのは僕だ!
妻は全然悪くない!!
僕が癌なんかになるから悪いのだ…。

だから、「自信がなくなった…」なんて言わないで欲しい。
僕がもっと強くなるから。
それまでもう少し待っていて欲しい…。