□□■─────────────────────■□□
ダバオ通信 ヤン爺のラストライフ・ダバオ
Last Life Shift In Davao Philippines
フィリピン社会に戸惑う ダバオ隠居物語
「団塊 百年の孤独 老いの抗い」
□□■─────────────────────■□□
家のゲートを コインで
カンカンカンと叩く音
アイよー アイよーの声
とても清潔とは言えない
服を着た中年女性が
立っていた
フィリピンの
あるところに幸福がいた
幸福は
「人に幸福を分ける」
人の心を 知るために
「貧乏」のふりを
することにした
「私は貧乏です」と
名乗りながら
いろいろな家を
訪ねてまわると
「貧乏は こめんだね」と
追い払われ……
顔を変え 歳を変え
衣装を変え 姿を変えた
貧乏のふりをして なお
人の心を探り続ける
ある家を訪ねると
「チョッと待ってて」と
おにぎり1つ

「幸福」が 訪れた
フィリピン人は
お米を食べてる時
ほんとに 安心した
顔を見せる
それを見て 微笑む
ダブルプレーをとられて
「モッタイない」という
表情をした 長嶋さん
実生活の長島さんは
大邸宅に住んでいるけど
包装紙やそのヒモを
捨て切れずに
しまっておくのと
ちがうだろうか
食事をしても
若い連中が
米粒をいっぱいつけた
茶碗を残して
席を立つのが
許せないんじゃ
ないだろうか
目がつぶれるぞ
白湯で茶碗ぬぐって
ご馳走様
フィリピンでは
「幸せが」突然 訪ねてくる
震災から11年の日
鎮魂 合掌

◇◆◇ ───────────
異国で老男
独り暮らしとなれば
誰に 小言を言われる事も
なくなっていた
若い頃と違うなと思う
何もしない 一日も
「よかったな」と
思ったりする
若い頃は
「何か面白いこと
ないかなぁ」
快楽を飢えた狼のように
探しまわっていた

いまでは
日々の何げないこと
ひとつ ひとつを
いいなぁと思えるように
なってきた
人生も いずれ
終わると知っている
いまをなるべく
笑顔で過ごしたい
今日をプチ一生と考えて
一日の終わりに
「今日も よかったな
明日もよく生まれよう」
そう思って 眠りにつく
その繰り返しが あれば
いつ終わっても いい

今日は 何もしなかったな
そんな 一日でも
何かは あった
茶柱が立った おぉ! とか

そういう自分にとっての
特別な瞬間を
自分だけでも
楽しめるようになる
それが年齢を重ねた
心のゆとりなのかな
家事一切を
自分でまかなう
この歳で いきなり
今から やれって
言われたら 無理
できないだろうね
60代からやってきて
よかったと思うよ

どっかで食べたんだよ
よく覚えてないけどね
ほぼ 自分流の鍋
相伴してくれるかい
あ そんなに煮ちゃダメ!
魚のしゃぶしゃぶも
「いいもんだろう?」
缶ビールを プシュッと
あ! 魚がなくなったか
じゃあ 野菜を煮よう
「食わないかんもん
ひとりもんになったら」
冷凍してある
餃子を鍋に加えた
嬉しそうに笑って
ビールを もうひと缶
お湯の沸く音がする
「芋焼酎を
お湯割りにするけど
よかったら飲むか?」
もう少し
ここに居たくなって
あつかましいとは
思いつつ
自分の居心地の
良いことだけが
生活の中心になる
それで いいんだ けれど
女に気をつかう
エネルギー 失っては
つまらないジジイに

70歳を超えて ようやく
『準備が整いました!』
壮大な自由奔放
70歳 超えたら
自由を楽しむ季節
「欲望のコントロールが
できるように なって
少し 楽になったかな」
何の変哲もない
毎日を過ごす
ベッドに入って寝て
ちゃんと暮らす日々
朝起きて
仕事に行く必要も無い
スーパーとかに寄って
食料を補充する
馴染みの店で ひと休み
U TUBEで
人間の証明なんか見て
23時には寝る
何のトラブルも
ハプニングも起きずに
自分の予想した通りの
その日の暮らしを終える
隣家は
自分が住む借家の家主
自分を 優しく
面倒見てくれる
日本家屋では
建物を雨風から
守るために
屋根を長めにして
「軒」をつくる
今 自分が
借りている平屋にも
フィリピンでは
珍しく 軒がある
軒下には 空間ができ
日本なら 縁側が生まれ
此処では テラス
そこが 寛ぎの場
テラスで
ダバオの風に吹かれ
無為な時間を過ごす
風は ダバオのご馳走
くつろぐ場所で
時々 去来する雑念と
戯れる
記憶の彼方から
やってくる「波動」に
耳を傾ける

複雑な世界政治
ありきたりじゃない
普通じゃない世界
自分でも 意味が
分からんところが
いくつもある
正しく分からず
複雑な感情に
なれるものに 世界は
仕上がっている
人間達の泣き叫ぶ声
声をかき消す 銃の音
ミサイルの炸裂音
昔の写真を見て
「このときは みんな
その後に起きることを
知らなかったんだね」と
毎日の
生活のマンネリが
心地よいと思うのは
どうなんでしょうね
当たり前の 平和
なにより 有り難い
「違和感」が 並ぶ日本
「普通においしかった」
だったら それで いい
「むずい」
「〇〇はんぱない」
「ムカつく」
といった乱暴な言葉
そんな言い方への拒絶
磁石を手に
「とりあえず 南だ」と
つぶやいて ダバオに

ダバオ人との
会話だったけど
知らない世界を
教えてもらったり
同じであることが
意外に多かったりに
気が付いたり
出会いが あるなら
知らない街が いい
笑っている顔を
飽きず ずっと見ていたい

70歳で 南国で
独り身の生活
なんちゃってを
目の前にしたら
やられたなぁ~
そう 思いますか
「そっか……」と
片付け ますか
男がひとり身で
高齢者街道を進む
その厳しさは
女のひとり歩きとは
比較にならぬ
しかし
「ひとり身の楽」にも
表裏はある
わかるかなぁ~?
わっかんねえだろうな
誰かに向かって たまに
独り言のように つぶやく
◇◆◇ ───────────
「年寄りを楽しんで終わる」
日本のおやじたちの心意気
明日のことなんて
考えずに生きる
100歳まで生きて
どうするの・・?
ラジオから 唐突に
「スカボローフェア」が
流れてくる
いつ死んでも いい
おやじの会ってのを
10人で 結成したら
半年たたないうちに
5人死んじゃってさ
こりゃダメだって
即解散したな
この年になると
壮大な目標もないし
来週 来月
ちょっとした予定が
ひとつあれば
それが生活の張り
物忘れも
激しくなってきたけど
情報に振り回されても
仕方ないから
逆に忘れたほうがエコ
年寄りなら 年寄りを
楽しめば いい
誰か 一人に
好かれていれば
求めている欲は
満たされる

汚いジジイには
なりたくない
人に不快感を
与えない程度にネ
清潔感を心掛ける
70歳って
まだ 元気な日もある
たまに 欲望が
ピュッと芽生える
そのときは
「いまだ!」と 思って
欲望のままに 突っ走る
女から求められた
抱っこには
100%応えてあげる
こうして
女と会っていられる
「あなたが いい」を
貰っている からだな
投げかける言葉に対して
びっくりするような
返事をくれる楽しい女
そして もう女に
隠すことが
何もなくなった
男は 見栄を張らなくなり
自分を裸にさらした
「いい人」を
演じることも ない
そのまんまの男
男と女が がどんどん
自分らしくなっていく
二人とも飾らず
そのままを受け止めあう
今一番 無視され
片隅に取り残されてしまった
老人達の稀有な恋物語
底のない安心感を抱く
生きてて よかった
うわ 何これ
めちゃくちゃ
うまいんだけど
男は タコなのよ
タコ タコが言うのよ
オクトパス タコスって

楽になるからと
その欲望を
あきらめてしまうのは
もったいない なって
そこの加減が 難しい
いずれ
全く欲望が
出てこなくなるときが
来ると思うので
今のうちに
やれるだけやっておく
精神と身体は
つくづく不思議な関係
ある 密やかな
関係があったとして
その生活や空間を
守り通すことも また
孤独に向き合うことの
ひとつなのだ と
「愛」と「人生」には
最期まで 付き合ってみる
二軒め 三軒めと
余計に
ついてしまったものを
全部 そぎ落として
これまでとは違う老いへ
行ける所まで進んでみる
老いの道へ
安心して身を委ねて
愛と人生の中にいる
自分自身という男を
精一杯 励ます
生(なま)の人生
感受性は〈ナマ〉をもって
最上とする
それは 別の表現では
自分は 自分の眼で
見たものしか信じぬ
自分が見て
確かめてきた事実が
異国生活を生き抜く基盤
愛と人生 いいもんだ

◇◆◇ ───────────