□□■─────────────────────■□□
ダバオ通信 ヤン爺のラストライフ・ダバオ
Last Life Shift In Davao Philippines
フィリピン社会に戸惑う ダバオ隠居物語
「団塊 百年の孤独 老いの抗い」
□□■─────────────────────■□□
住宅地に 元の音が 戻ってきた
魚屋 引き売りの 元気おばさんの声
新築工事現場 カン カン 鎚の音
路上にたまる人たちの 笑い声
自転車タクシーを 呼ぶ声
家の前で バナナキューを 売る声
いずれも しばらく消えていた音
再開レストラン
店内での 飲食客は まばらで 静か
学校に 子どもたちの姿は ない
命 失われても
なお 遠くにある 終息
それでも あふれんばかりに
みなぎっていた この街の 活気が
ほんの少し 確かに 戻っていた
感染が 確認された 3月から
今日が 何時なのか 忘れた 4ヶ月目
風が 全身を 吹き抜けた 後に
「ヨシ! 生きよう」


下痢を していても 比較的元気
なのに 肺のCT画像は 真っ白
「なん なんだ このウイルスは」
かつてない 気持ち悪さ
「鬼が だれか わからない 鬼ごっこ」
防備をして 出かけるのは
すっかり 日常に 組み込まれた
外出パスを 持ち 口元を 覆う
携帯用の除菌剤を かばんに入れる
外に出るだけで 体が こわばる
街を覆う 緊張感は 薄まって いた
街の 中心部の高層ビル
工事が 再開された
交通整理をする おばさんに
「きょうから ですか?」声を掛ける
「そう・・」と 笑った
「よかったネ」と 親指を 立てた
7月に 入れば
「いやぁ~ やっと ですねえ」
みんな 笑顔に なれるのか?
多くの人が やはり その日を
待ち望んでいる

フィリピンで 感染すれば
入院治療で 200万円かかる
回復する 保証など 30%程か
命 取られて たまるか 家にとどまる
誰かに 頼まれたからでは なく
自分の 意思で ・・
誰かに 命令されて やるより
自分で 率先して やったほうが
命を 守ることに 気持ちが 軽い
◇◆◇ ──────────────────────
生命としての 身体
自分自身の 所有物に 見えて
自らの制御下に 置くことは できない
いつ 生まれ
どこで 病を得
どのように 死ぬか
選り好みすることも できない
すっかり そのことを 忘れて
計画どおり 規則正しく 効率よく
予定に したがって 行動し
自らの意志で 生きているように
思い込んで きた
本来の 自然と
脳が作り出した 自然
対立が ここに あった
生命は 自然の中にある
人間以外の生物は みな
約束も 契約も せず
自由に 気まぐれに
ただ 一回の まったき生を 生き
ときが 来れば 去る
自然なる 動植物の生命を
論理で 決定することは できない
人間の生命も 同じ はず
それを 悟った ホモ・サピエンス

人間は 個体によって 見た目も
身長も 体重も 声も 体臭も 異なる
それこそ 生の人間
他の人では 決して 替われ ない
五感を 研ぎすませば
たくらみに満ちた つくり
断片的な 年月
男が 一人の女性と出会う
明かりの落ちた部屋が 舞台
光が 当たっていない 場所だから
触覚や 嗅覚や 聴覚が ヒリヒリと
解像度を 増す
肌から伝わる ぬくもりを 捉え
目の前の人の 熱や汗を 感じたい
生身としての 価値だと 思うから
「体液」で 描かれる 男と女の距離
自分に とっての「自分」と
他者に とっての「自分」は
まったく 別の生き物
他人の目から あぶり出される
哀しさや いとしさが ほんのり 滲む
根っこの部分で 絡み合う
ずっと 手放したくない
一生ものの女 出会っていた

いつか コロナが 治まれば
命の尊さ 女と 生身で 喜び合いたい
◇◆◇ ──────────────────────
末は「総理大臣になる」と
子ども時代 青竹のように フレッシュ
少年たちが 貧乏な昭和に 育てられた
学生のデモ隊は スクラムを 組み
シュプレヒコールを あげながら
ジグザグに 走った
そこに 加わった 個人は
次第に 隊列全体に 溶け込んでいく
どこまでが 自分で
どこからが 他人なのかは 不透明
心に宿った 疎外感から 解放され
実存の リアルな 手ごたえを 得た
そこに「肉体感覚」を 通じた
「連帯」への 希求が 生まれる
受験勉強で 他人と競い合ってきた
バラバラの個が 運動によって
手を取り合い 一体感を 獲得
他人と つながり
感覚に 訴えることで
存在を 確認しあう そんな運動は
政治的な「成功」から 見放されていた
彼/彼女らの「正しさ」は
政治の中には なかった
徹底的に 皮膚を 擦りむきながら
権力に ぶつかる「肉体感覚」
そのものが「正しさ」だった
そして その「正しさ」は
手触り感のある
暴力へと 傾斜していった
若者と同じ「肉体感覚」を 求めた
三島由紀夫の熱量
全共闘に対し 肉体的共感を 抱き
割腹によって 肉体の露出を 現した
「リアル」の あり方は
闘争の中で 変質していった
安田講堂 攻防戦では
火炎瓶が 飛び交い
機動隊は ガス銃で 狙い撃ちした
これは ゲバ棒とは 異なる
脱 肉体化した ゲーム的暴力
結果「情動的な塊」は
「冷徹な バラバラの銃弾」へと 解体
あさま山荘事件へと 行きつく
個々の視点で 見れば
自分一人が デモに 行った ところで
何も 変わらない
ただ 政治は
それでは 済まない のだ
その根本が 60年 安保だった
細かい理屈は 分からずとも
何かに 関わりたい
自分の声を 伝えたい
若者の 身体からくる 欲求が
社会的争点を 呼び起こした
そして 今 60年前の 出来事は
市民と 無関係な 昔話では ない
この 10年の間にも
様々なデモが 起き その確信を 深くする
肉体を持つ 人間で ある限り
当時の若者と 同じ欲求を 抱き得る
同種の 大衆運動が また 復活しても
おかしくは ない
背に腹は 変えられない
情けなくも 長髪を切り 就職した
華やかバブル 青年期に 目一杯 酔い
宴の後 銀行 証券の破綻で 終わった
順風満帆な サラリーマンに 激震
壮年期 リストラに 叩きのめされた
人生の苦汁を たっぷり 吸い過ぎて
メンマのように なった
団塊 ゆるふわ系おじさんに 肩たたき
老いて なお 日本人口の 最大勢力 団塊
目的も無く 街を ただ タラタラ歩く
妻に先立たれた方 養老院にいる方
独り身の無聊を 慰めている方
生活保護を受け 暮らせている方
車の中で 暮らしてる方
年金で なんとしてる方
みんな まったく 元気を 無くしていた
隠居する 老人天国など どこかに 消えた
さぁ 立派なことからは 離れ
空や風と ともに のんびり
ビールを お供に 海辺の散歩でも・・

生涯のことは 忘れる
人生のことは 敢えて語らない
生涯の規模で 考えることも 一切しない
知恵ある人の 生き方
この先を 考えて 腕組みするより
今日 一日を 生きるのみを 方針とする
訳知り顔の ゆるふわ系おじさん
かわいいのは 自分だけ
暴走する 身勝手さを 分かって いて
そんな 自分を 制御できない
ものすごく 威張ったりする

近所のコンビニ 看板娘
「威張って いるのは
昔から だから ブレてなくて いい」
「そういう 捉え方も あるのか」と
ゆるふわ系おじさんは 恥じ入る
ゆるふわ系おじさんたち 4人が 酒宴
みんな 70代の 渋ズラ
宴たけなわ 酔いが 回ってきた
一生分の 微笑みを 交換する
元 薬屋主人が
「女体と 言うけど
男体とは 言わないですねぇ」と
何を考えたのか 唐突に 話し始めた

栃木県日光市に「男体山」は あるが
たしかに 日常的に
男の体を「男体」とは 言わない
なんで そんな話しを?
「いやね 昔 石川県の温泉宿で
組合の宴会が あってね
女体盛り というのを 見たこと
思い出した もんだから・・」
「女体盛り」とは
清めた 裸体の女を 器に見立てて
刺し身 寿司などを 盛り付ける

自分も 80年代の 頃
熱海あたりで 見たことが ある
当時は 各地の温泉宿では
宴の余興として やっていた
宴会案内のパンフレットに
「女体盛り承ります」の 文字が
あったのを 覚えてる

『わかめ酒』と いうのも あった
現役の コンビニ店主が 言う
足を閉じた 女の股間に
酒を注いで 飲むんだ

バカげたことを してたなぁ〜
男たちは「オッ オー」と 叫び
大騒ぎ したもんだ
ゆるふわ系おじさんの狂躁

何にでも 好奇心を 持てば
脳を老化させない と 言うぞ
そうだ 間違いない
頭のなかで 妄想する
それだけでも 大切な 脳の保守
年を重ねてくると だんだん
ワクワク感が なくなってくるからな
女性に ワクワクしながら
老いていく というのが 健康
脳だって 刺激を 欲しがって いる
前頭葉が 萎縮するのは 嫌だろう から
エロ以外にも 方法は あると
元 熟経営者が 講義した
右利きの人なら
左手で 自分の名前を 書く
右手で 箸を持って 食事をする人は
左手に 箸を持ち替えて 食事する
利き手と 反対の手を 使うことで
前頭葉が 刺激される
そんな面倒 やってられるか!
買い物も 店内を回る順路を
いつもと 逆にする
それなら できる
まだ 若いと 思っていても
油断すれば 近付いてくる 認知症
そんなの こなくて いいよ
アッチいけ シッ シ
ところで 次回の宴会で
わかめ酒 飲んでみる?
全員 驚きと 興奮の表情で
「えっ どこで やるんですか?」
「自宅で やるのさ」と 言うと
「それって デリバリーですか?」
ヤバく ないですか
フィリピン娘は
頻繁に わかめ 刈り取ってるから
茎ワカメみたいに 固いのじゃ
酒に漂う わかめの風情が でないだろ
そこは ほれ なんて 顔を赤くして・・
彼らは 金で 女を 呼ぶと 思ったのだ
「バカもん!」何 考えている
徳島産の 鳴門わかめのエキスが 入った
正真正銘の吟醸酒 わかめ酒だ
一同 何だ そうなのかと
がっくり 興ざめた顔
一瞬でも エッチなことを
妄想して ワクワクしたんだ
前頭葉が 刺激され 喜んでいる
ゆるふわ系おじさんたち
大いに 結構な ことで ある
盛大に わーっと それだけで
一日の雰囲気が 変わって いった
◇◆◇ ──────────────────────
仲間と一緒に 酒飲んで 肩組んで 騒ぎ
ボランティアでは 一緒に働く
でも「結局は 1人だなあ」と
孤独を かみ締める
「トゥゲザー・アンド・アローン」
夜明けに 帰った
独り暮らし 家のドアを 開ける

ゆるふわ系おじさんを 眠らずに 迎え
お辞儀しながら「おかえりなさいませ」
生活補助を してくれる 人形ロボット「佳佳」
いて ほしいんだよ・・ だが
この世に いまだ 現れて いない
まるで 実の父親のように
誇らしげな表情で 会議に 出席した
ロボット開発者 サイさん
今後 10年以内に「佳佳」に
人工知能を 搭載した ロボットが 誕生
飲食店や介護施設 医療機関
一般家庭 などで
単純労働を 行うように なる と
持論を展開 胸を 張った
ーーほんとですか サイさん
映画のような風景が 本物に なりますか
でも 10年は 待てない
そのロボットは「佳佳」後継の娘
天気や予定についての 受け答え
会話の相手となる 基本的な お喋り
相手の認識など 正確に 行なえる
「あなたは 素敵な男性ですね」と
お世辞を 言ったり
恋人は いるのか? 問いかけに 対し
「独身で いる方が いいです」などと
表情を 変えず 答えていた
ーーそんな 複雑な動き しなくて いい
基本機能さえ 完全ならば 充分
人工知能の分野は 急速に進歩
米 ラスベガスで 開幕された
世界最大級の 家電見本市でも
AIロボットが 注目を 集めた
ハンソン・ロボティクス社が
発表した ロボットの名は
「教授・アインシュタイン」
人のように 感情を 表現し
数学や科学の 授業など
教育的な対話に 参加できる
佳佳は まだ
その域には 達していないが
サイさんは 社会の 明るい未来を
ヒューマノイドに 見い出している
サイさんが 話を 続けた
国が 豊かになれば 多くの若者が
飲食店での 接客といった 仕事を
敬遠するように なる
病院や介護施設
高齢者介護の ために
多くの人材が 必要となり
ロボットの 働く場を 広げないと
社会は 行き詰まって しまう
ーーその事は
だいぶ前から 言われてきた
だが 現在 まだ そんなロボットは
実在して いない
「スマート・ラブドール」
男性の孤独感を 埋められるか?
独居高齢者が 増え続ける 日本
ある 会社が
独身男性や 独居高齢者の ために
新しいタイプの 伴侶
「スマート・ラブドール」を 開発
会社の倉庫には
官能的な シリコン製の人形が
何体も つるされて おり
それらに 技術者や
白衣を着た プログラマーが
命を 吹き込もうと している
透ける 生地のブラウスを 着せられ
椅子に座った 小柄な金髪の人形に
声を かける

「名前は?」
すると ロボット風の声で
「私の名前は サラ
でも ベイビーと 呼んでも いいですよ
機嫌が悪いときは 答えない ですけど」
その返事 唇は 動かず
体内スピーカーから 聞こえてきた
人工知能(AI)を 使って
人形たちを 人間に 似せて
独身者の孤独感を 解消し
高齢者や障害者にも
役立てて もらおうと 製品化した
マーケティング・ディレクター は
自社製品が 社会問題の解決に
役立つ と 考えた
同社の顧客には 独身男性 高齢者
障害者 さらには 既婚男性が おり
「女性と リアルな恋が 出来ない 若者」
そんな風潮も 需要の ひとつ だと・・
人形たちは
ただ セックスの ためだけに
あるのでは ない と 語り
私たちは この人形たちが
有意義な 会話を したり
家事を 手伝ったり
できるよう 改良を 進めている
将来的には 医療補助員としても
働けるよう 更に 進化させる と
サラは 音声認識して
ネット検索などが できる
「iPhone」の 音声アシスタント
「Siri(シリ)」に 似た
アプリとWi-Fi機能を備えた ラブドール
Wi-Fiに つながった家電を
操作することも できる

音声やアプリでの
指示に応じる人形は 42万円
同社が 従来販売してきた
4万2000円程度の 製品に比べると
かなり 高額
EXDOLL社は 来年にも
AI技術 複雑な表情や 体の動き
音声認識システムを 搭載
人の動きを追える目を 備えた
ロボットを 発表する
工場建てや 入り口では
セクシーな 白いドレスを 着せられた
スタイルの良い 試作品の人形が
お辞儀しながら お客たちを 迎えている

プログラマーたちは
画面に表示された 3Dモデルを 凝視
別の作業員は 配線や関節が 露出した
骨格を 組み立てている

米俳優ウィル・スミスが 出演した
『アイ・ロボット』の ワンシーンを
思い起こさせる 光景

慎重に シリコン製の肌が かぶせられ
その顔に 手作業で メイクが 施されると
生きているように 見えてくる

開発責任者の 前田さんは
目標は 可能な限り 最も美しく
最も 人間らしいロボットを
作り出すことだと 述べた

ロボット技術は
すでに 開発されているので
われわれが 専念したいのは
最も 美しい顔と
最も セクシーな体を 持つ 人形を
作り出すことです と・・

女性の権利活動家 正田さん は
一部の男性は これからも
常に 時代遅れの期待を
女性に抱くと 思われるので
この「セックス主婦型ロボット」は
女性解放の 助けになる 可能性も ある
との 見解を 示した
「女性の解放に つながる?」
多くの男性は
女性に 同じことを 期待しています
セックス 家事 出産と親孝行 そして介護
男性は
女性を 一個人として 見ていません
社会性のない そうした類の 男たち
全員が ラブドールを 買って くれたら
男性の犠牲になる 女性は いなくなる
そこまで 進化したラブドールなら 本物
正田サン まだ 語り足りない 顔を していた
◇◆◇ ──────────────────────
東京芸術大学 卒業・修了作品展
衝撃的な 作品が 注目を集めた
ラブドール・マタニティー写真

題して
《ラブドールは 胎児の夢を 見るか?》
かつて「ダッチワイフ」と 呼ばれ
現在は「ラブドール」と 称される
女性を かたどった ラブドールの
「妊娠」した姿を 収めた写真
制作者は 芸大大学院博士課程の
カン・ミカさん(27)
――制作の きっかけは
「生殖」を テーマに・・ と
発想したのは 25歳の頃
周りが 結婚・出産を 具体的に
考え始める 時期になり

同年代の 女性友達から
「30歳までに 子どもを 産むように
プレッシャーを 掛けられて いる」
「何年も付き合った 恋人と別れて
結婚できない かも」
そう いった話を 聞くように なった
「子どもを あきらめた」という
年上の女性の声を 耳にする機会も
私自身も 同時期に結婚し
子どもを 持つことに ついて
具体的に 考えるように なった
学業に 専念したいので
「いまは 子どもを 持たない」
その 選択を して いますが
持つにしても 持たないにしても
人生のなかでは とても 大きなこと
そこから テーマを 着想しました
――なぜ ラブドールで
表現しようと 考えたのですか
22歳ぐらいの時「人造乙女博覧会」
オリエント社の ラブドール展覧会を
見に行った 友人が
あなたに「似ている人形が いたよ」
教えてくれた
セクシャルな人形に 似ている
そう言われたことに 対する
嫌悪感が 半分あり つつ
その人形の 造形が とても美しかった
うれしさも 半分 という 感じでした
友人が 展覧会で見た
「奈々」という 製品は
いまでは 廃番になっている
はやり顔じゃ なかったんだ
ちょっと 悲しい
それから
ラブドールの世界に 興味を 持って
いつか 何か できないかと 考えていた
でも なかなか 機会が なかった
「生殖」というテーマと絡めて
「ラブドールが 妊娠する」
その アイデアを 思いついた
もし 人工知能を 搭載した
ラブドールが 妊娠したら・・

「マタニティー・ヌードを 撮って
残しておいて ほしい」
そう 言い出すん じゃないか・・
架空のストーリーを
想像できる 作品に 仕上げた

作品に使った ラブドールは
オリエント社の製品「望月かおる」
身長や肩幅 足の大きさが
ほぼ 私と一緒 コピーみたいだな
そう 思うぐらい 似てた
「望月かおる」は 重さ25キロ
自分と同じ 背丈なので
隣の部屋に 運ぶだけでも 重労働
介護のような状況で 腰痛に なりました
――展覧会で 作品を 目にした人からは
どんな反応が ありましたか
「似ている」
「セルフポートレートですか」
よく そう 言われました
展覧会では 世代や性別によって
反応が 分かれました
「女性の尊厳を 表している」と 解釈
ほめてくださった 年配女性も いれば
少数ですが「妊婦は エロだよね」
そういう 男性も いた
縦223センチ 横152センチ
実物よりも 大きな写真で
背の高い人でも
作品を 見上げないと いけない
あえて そうした

「女神のような荘厳さ」を
連想した人が 多かった
なかには 会場で
「子ども産みてー!」と 叫んだ
女子高生も いたらしい・・
自分としては
「人間の女性から
生殖が 切り離された未来」を 想像し
「生命とは 何か」
「人間とは 何か」を 考える
その目的で つくった作品
マタニティー・ヌード
表現自体が「芸術か わいせつか」
その 問いを 含んでいる
ラブドールにも 同様に
「エロかアートか」という 論争が ある
私自身は
「わいせつだから アートじゃない」
「アートだから わいせつじゃない」
両方ある と 考えている

ミロのビーナスを 見て
セクシーだと 感じる人も いれば
何も感じない人も いますよね
――人間の女性から
生殖が 切り離された 未来
少し掘り下げて 説明していただけますか
日本の大学でも ヤギの胎児を
人工子宮で育てる実験が 行われている
米国では 人工知能を 搭載した
ラブドールの開発が 進められている
昨年参観した
アンドロイドの シンポジウムで
印象的な場面が ありました

女性型アンドロイドが
来場者の質問に 答えるという
デモンストレーションで・・
「将来の夢を 教えてください」
その質問に
アンドロイドは
「30歳までに 結婚して
子どもを 2人持って
幸せな家庭を 築くことです」
そう 回答した
みんな 笑ってた
それは 一般的な 反応なのだ とは 思う
アンドロイドのコメントに
批判したい気持ち 自分には なくて
私は かわいそうだな と 感じていた
映画「デトロイド」を 想っていた から

人工子宮の技術を
人間に応用すると なれば
倫理的問題が 大きい
代理母のような 生殖の外部化が 進む
人間に近い アンドロイドが
開発されている状況を 踏まえると
「アンドロイドが 妊娠したら…」と いう
発想自体は 自然に 浮かんできた

――そうやって 技術や機械が
人間の領域に 近づこうとする 一方
人間の女性の側は 逆に 人工的なものに
引き寄せられて きている・・
プリクラを 撮れば
自動的に 目が大きく 肌が 白くなり
マンガ的に ディフォルメされる
セルフィーを 加工して
足を長くしたり あごを細く見せたり
アイドルの 自撮りに
「ラブドールみたいで かわいい」
そんな コメントが ついたり
女性が
「ラブドール風メーク してみました」と
肯定的な意味で 発信したりする
プリクラ的に
加工されていく 女性の見た目と
人間に 近づいていく ラブドール
一つの交点で 重なり合う
――男性が
思いのままにできる ラブドールは
女性が モノ扱いされることを 助長する
その批判に ついては どう 思いますか
まったく 逆ですね
所有してみて 思った
ラブドールは 要求してくることが
めちゃくちゃ 多い
皮膚が 切れてしまうから
固いものの 近くには 置けないし
色移りして しまうから
安物の服は 着せられない。
シリコンから にじみ出てくる 油分を
ベビーパウダーを はたいて
とってあげる必要も ある
相当 丁寧に
柔らかく 接してあげないと いけません
何でも 思い通りになるということは なく
愛情を 掛けた分だけ 返してくれる 存在
ラブドールを すごく愛してる
ユーザーさんの なかには、
性行為を しない人も いると聞く
「里帰り」と いって
メーカーは 不要になった
ラブドールを 回収して
人形供養に 出している
どこに 傷が ついているか
どの部分の関節が 緩くなっているかで
どういう行為を して いたか
大体 わかる そう

「美とは何か」という 問題
自分の核に あるもの
その軸を ブレずに やっていきたい
◇◆◇ ──────────────────────
あれ? 何の話をしてたんでしたっけ?
◇◆◇ ──────────────────────