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           ダバオ通信  ヤン爺のラストライフ・ダバオ 
              Last Life Shift In Davao Philippines  
  
            フィリピン社会に戸惑う ダバオ隠居物語
                  「団塊 百年の孤独 老いの抗い」  
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ゆとりや 遊びという「余り」を
どれだけ 抱えているかは 

老い人の 円熟度

これまで 絶対に 必要だと思っていた
なくなってみると 困りも しなかった

逆に もっと 削っても いいだろうと
感じていた ものが 足りなく なって
悲鳴を 上げた

なんで あんなものに 
夢中になって お金を かけて
いたんだろう

今まで 何も考えず やってきたこと

タバコは 肺に良くない
酒も 肝臓に良くない
それらは 寿命を縮める

リスクを わきまえた上で 選択してる

「なんで 体に悪いことを する?」

タバコや酒で 得ているものは
他に 変えがたいもの だからよ
人間として 忘れられない 何かだろ

不健康に なっていく だがな
タバコや酒が 与えてくれる ものには
健康に 似通っている部分が ある

そうしたものを 無視し

自分を守る 他人を守る
「正の力」に 身を任せて 生きるだけでは 
補いきれない部分が 人間には あるもんだ

いつ 誰に 死が 訪れても おかしくない

 

体の上半分 頭では 受け入れている
下半分は 実感が 地に足つかずにいる
もう 少し経って 会えるはずだった 人に
もう二度と 会えない空白を 悼むことが 

できるのかも しれない

どこで生きるか どう生きるのか
そして 誰と生きるのか
こうした 根源的なことを 考えれば
死に直面する コロナと 深く関係する

何を 大切に 思うかが 鮮明に 見えてきた

「あなたは 無事で いるでしょうか?」
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せっぱ つまって 頭に 血が のぼった
もう アカン・・ 人生 ゆきずまった
誰も 信じられない 頼れない 孤立

話しは 
20年もの 過去に さかのぼっては 
すぐまた 今日の 心持ちに もどり
今日の心情から  また 過去の
苦しい時代に さかもどった
 
社会の抗えない 理不尽へ 挑んだ 35年
だが 破れ 自分の抜け道は 閉ざされた
パリン パリンに 砕かれた 自我

そして 仲直りできない 家族崩壊
気まずい パートナーとの共同生活
別の目的と 価値観を 持って
偽り 共存する 疑似家族
自分の生活を しばっていた もの

四面楚歌
真面目が ゆき過ぎて そうなった
それを 誘因したのは
自分だった かも しれない

自分の生活が 家族に 制限され
ストレスが 重なる中で
他罰的な感覚さえ 芽生える
 
暗黙の 家族マニュアルが 出来ると 
それに はまらぬものは 排除し
臨機応変の対処は しなく なる

正義だけが まかり通り
それ以外は 敵視の対象

マニュアルに 個を 合わせるので なく
個に マニュアルを 応用する事が 出来ない

家族を 責めている 自分も また
家族を 責めながら 苦しんでいる

そんな 家族から 逃走
世間体 その しがらみを 断った

安寧を 呼び込む 心の声

ゆっくりと 耳 傾け
本当の 自分の姿を 知ろうとする

安心も 心配も し過ぎず
穏やかに 独り 笑って 暮らす事だ

非常に 面したとき 

有効なのは カラダとアタマ
自分しか 頼りに ならない
マトモなものを 食べ 寝て
自分の頭で しっかり考える

自らの幹を 立て直す 
動かなければ 何も 起こらない

行動することに よって のみ
自分は 自由な精神を 取り戻せる
自らの企画なら 海も 超えられる

誰も 知らない 言葉も通じない
地味な街を 訪ねる旅で あろうと
自分の感性が そちらに 触れたの なら
そこを 目指す
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──あなたの 現在に ついて
以前と 変わったこと ありますか
新しい習慣 新しい地との 向き合い方
その地で 考えたこと 聞かせて下さい

まったくの 無鉄砲 素人の冒険
『できないこと』より
『できること』
『やって みたいから』を 探しに
思い切って 飛び出した

日本では ない どこか
そこは どうなって いるのか
そこに 暮らす人たちの 日常を 訪ねる 

自分が 住める地か
見たい 知りたい と 思う心
そこは よく知られていない 街

一度 ほどいたものは 
二度と 元には 戻らない
信じて 疑っていなかった もの
蓋を 二つに割って こじ開け
半分と半分 自分の手で 分解してみた

「この地で ボチ ボチ いこか」と
「日本での 真っ暗な失望」
半分と半分 二つで一つ どちらも自分
この分離した 苦楽の心情を
縒り合わせ 別なものに 結び変える
やれるだろうか

さすれば この地に 意味を 見出せた
そう言える 日だって きっと来る
今は そう信じて 行動する
気ばらしする世界は 広い

人生の 冬期で
男は 当惑を 強いられたの だった

「どうする? 俺たち」

「一緒に いても しょうが ないわネ」

「そうだな 俺らは 今日で 解散」

今日までで 明日は 別々の日にしょう
サラッと 言った ものの

男は 気が 散りにくい
思いつめる という
厄介な美質を 持っている

日本で 気にせず しらんぷりして
老い先を 突き進んで いけるほど
自分は 強く なかった

周りを 気にして 健康を 害したり
気持ちが ふさいで しまう
そんな事に 残された時間を 費やす
あまりに 惜しい

ところが 女は ちがう
女も 淋しい生物で あろうが
まぎれやすい 神の恩寵が ある
関心が 拡散する

自分が 自分で やってる こと
信じているか どうか 
それを しているとき
楽しい気持ちに なって いるか 
それが 基準

病気に なった時 どうするんですか?

締め切りのある 人生を 閉じるだけだよ

異国の地に 逗留して
自然に発せられる 楽しさや
喜びを 見出すことが できなければ
そこには 何か 間違った もの
不調和なものが あることに なる
そしたら 住む街を 変えれば いい

異国では「自分の常識」を 
自分で 作らないと いけない だろう

いきなり 現地の常識で
いけるわけでも ない

自分の中に 根付いている
日本の常識との バランスを
ここで 誰かが 提示してくれる 
そんな ことも ない

これは 心地いい と 思うから
自分の中の「常識」に しよう

まわりの人は やっていても
自分は 気分いい と 思わない
自分の「常識」には しない

「常識の 二歩先を 歩く」

いつも ご機嫌で いられる
誰かや 自分を 責めたりしないで すむ

浮き足立っては いけない
異国の地名を 手がかりに 
土地の記憶を 紐解く
目の前に広がる 景色との 答え合わせ

冷静に 住む地を 眺め
自分が どんな行動を 取るのか
自分自身を 見守っていく

これほど きれいな
直線は ないはず なのに
時に ノイズが ありすぎ 線が 乱れる
日本で 長年 生きてきた からネ

ここでは
自分のことを 誰も 知らない
それは 自分の「明後日」の 希望
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市役所の 男性スタッフは
どの国に 住むのですか?
国名だけを 問うた

現地の住所も 連絡方法も
必要ありません と 言って
事務的に 住民登録を 抹消した
手続きに 5分も かからなかった

日本への納税義務 
福祉の恩恵からも 外れた
ただ 唯一 繋がる 年金

会社を辞めて 2年後
一人 南へ 南へ  旅立った
それは 五十七歳の 晩夏

何をするか 何をしないかも
決まっていない

バス停で 見知らぬ人に
話しかけることは あまり ない
機内では 何故か 見知らぬ人と
気軽に 会話してしまう

飛行機内という 場所は
国境 性別 年齢の垣根を 越える
小さな コミュニケーションの場

隣り合わせた男
インド人? 
いや パキスタン人だと 名乗った 
その名前が 長くて 憶えられない

鼻下に たくわえた髭 ソフトスーツ
会社員では ない 政府官僚の落ち着き
その 中年男が 訛りのある 英語で
パキスタン建国の いきさつを



 

そして こんな 話を ・・

「インドを 旅してる 日本の若者を 見て
   彼らは 少しも 幸せそうに見えなかった」

「なぜ そう思いました」

「幸福に 生きるためには
   いろいろ ありますけどね」

「やっぱり できたら 与えることだ」

「与えること なんです?」 

「~を してくれない
   言い始めたら それは 人間の劣化」

「~を してくれない と 嘆く前に 

   自分が 人に  何か 
   してあげられる ことは ないか」 

「自分の したいことを
   自分の力で すると 同時に
   他者のために させて いただく
   その気が ない人間は 大人と 言えない」

「真に 幸福な人生も 生きられない」

「七割は 自分の楽しみ
   三割は 育てたいものの ために
   お金と時間を 使う」

年を 取れば 取るほど
そういう人間に なれると いいですね
そんな 応え方を 自分は した

さらに 彼は
いまは それを 間違って 考えて
自分のしたいことを することが
自己を 育てることの ように
思う人が いるので 困りますね

自己を 丹誠するには
一生を かけて いい と いう
目的を 持って いなきゃ いけない

その目的に 向かって
どういう 人間に 
自分を 仕上げ たいのか

人間は もちろん
脇道に逸れる時間も 必要です けれども
やっぱり 自分を 訓練していくと 同時に
自分も 他者のために
少し手助けする 気持ちを 
持つことが 大切

自分は パキスタン人と
長話するだけの 気力と 
集中力が その時は なかった

全てに 嫌気が さし やけくそ だったし
心には 穴が 開いた ままだった

パキスタン人との 短い会話を 終えると
彼の旅の安全を 心で願った

飛行機が ゴツん 音をたて

フィリピンに 着地した
 

ミンダナオ島 ダバオ
そこは 暖かい太陽に 包まれていた
夕方の風 なんて 優しい
 
ブロック壁とトタン屋根
または ココナツ葉の屋根
歴史を感じる 家々が
ポツン ポツンと 立っていた

島民は 見た目を 気にしない
自由に 生活してる
人々が「素」で いられる 島



 

家の前に 椅子を並べて
何を するでもなく 

ぼんやり 遠くを 眺めている

「音」が ないことに 気づいた
鼓膜を 揺るがすのは 風だけで
鳥のさえずり さえも さやか
音がない 島に流れる 時間

日が暮れて 海沿いを 散歩
どこからか 音楽が 聞こえてくる
だんだん 暗くなっていく空
細かいことは どうでも よくなった
大きく 深呼吸



 

新しい時間に 触れている間
新しい時間に 関わっている時
『孤独・退屈・不安』からは
無縁に なれる

太陽は 道を照らす 案内人
月は 名無き者を 慰める

胸の中の重い石を そっと 地に降ろす
たくさん食べて 吞んで たくさん笑う
やりたい 日々を 愛撫したい
それこそが 自分に とっての
老いを 生きる実感と 思い込めた

暗い海から 吹く風 やっぱり 優しかった
ひとりで来たのに 気づけば 誰かと いる
ひとりで いるから 誰かを 思う

集団の中に
個人が 組みこまれている ダバオ
情緒的な 一体感

個人が 独立しながら
ゆるく つながるような 関係性 東京



 

パキスタン男が 
話してくれたこと 考えていた
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一人  旅したことが ある方なら 
どこまでも 付き従って くるのは
整理できない いびつな 自分自身と
茫漠とした 寂しさだと 分かる

そんなもの 振り払うように 
「おちょくって」やる
艱難辛苦の人生 おちょくら ないで
どうして しのいで ゆける

おちょくる という 言葉
ふざける からかう 馬鹿にする

フィリピン人の 中には
自分で 自分を 笑う という風が ある
「えらいこと できましてん・・」
泣きも せず おちょくる
自分で 自分の難儀を おかしがる



 

最悪の状況をも 笑いのめす 
いろいろ あっても 笑いながら 生きて 

人生を 明るくする

訪れた 国が
好きだと 解らなくなって
嫌いだと すぐ 解る

きっぱり 言い切って みたが どうか?

フィリピンの 笑顔に
「鈍感」という 感度を 手に入れ
怖がりが「敏感」を 招いている



 

ほとんど 自分の時間に なったから
自分のために 時間を使う
自分のためだけに 揚げ物を あげる
今夜も黙って 独り 酒を 飲む
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──先に 心の安らぎが 見えない 老後 
それでも 生きていく
あなたが 自分へ 日本へ フィリピンへ
語りかけたい ことは 何ですか

「あやうく 一生懸命 生きるとこ だった」

激しい 風雨の中 
掘立小屋の 屋根に登り
危なっかしく 修繕している 
降りるに 怖くて 降りられない
雨に濡れ 呆然としている
ホームレスの老人 
それが 自分の・・イメージ

七十まで 生きられた から
わかった ことかも しれない

日本に いる頃
周りの意見など 全く 耳に入らず
意見が 食い違う人を むしろ「愚かと」
決め付けて いた

そうした 一元的な ものの見方を
改めることが できたのは
フィリピンに 移住した事が
あなたを そう させた?・・ それは 違う

一元的な ものの見方を 改めた
それは 人間の 1つの 要素だった と
頭の中で 整理できた からだ

日本の 家族への感情が
歳月を経て 変わって いく
怨み つらみ 確執が 希釈されていく

はては 懸命だった 
あの頃の 自分自身を も 
涙ぐましく 思うようになる

仕事とも 家族とも離れ 

フィリピンで 自由と なった
日本で 世間や社会の 視線に縛られて 

生きるなんて
老い人には とても 出来ない事だろ



 

新鮮で 爽やかな 気持ち
今 まさに 自由な老いを 実践

聞いてくれる 相手が いなく とも
自分の過去を ふり返り 語る
回想の海に 身をまかせる ことは
暗黒だった 心の扉を閉じ

開かずの扉とする 自分の行為

仕事で 何百人もの人と 会うよりも
一人の人と 1年 一緒に暮らしたり
1年 向き合って 言葉を 交わし続ける
そのことの方が 大事で 大きな体験




「そこら辺の光景」を 見つめ ながら
今 ここに いないと 味わえない もの 
この目で見た 光景を 老いに 溶かし込む

機内の出会い  パキスタン人が 
自分に 語りかけてくれた こと
「アローン・アンド・トゥゲザー」

誰かを 想う気持ちは 
自分を 大切にして
日々 機嫌よく 過ごすこと 

そこから しか
生まれないんじゃ ないか 
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おじさん 同士の 
ひそひそ話を 他人に 覗かせる

「閉じられていた 言葉」を
少しだけ 場所を 国を ズラして
カルピス原液に 近い状態で 伝えた

話の通じない どこか 誰かとの 対話

異国によって 生活が どう変わろうと
持って生まれた 自分に 変化は ない

形式は 変わって 時代も 進化する
その都度 誰もが 浮き足立って
自分は どう すべきかと・・

100% 正しい選択なんて ない
決断した当座は うまく いっても
後で それが 裏目に 出たりは 普通

それでも 自分の 選択なんだから と
充足感が あれば 失敗などでは ない

人生自体に 成功も 失敗も ない
本物の カニに こだわる人も いれば
カニカマだって 栄養豊富で おいしい
そう思う 自分が いる

人生は 答えのない 謎解き
あまり 深刻に なりすぎては ダサい


答えは すべて 胸の内
たゆたう海 そこで揺れる 波に 
尋ねてみたら いい

波は どんな言葉を 返してくるのか

ドラえもん「どこでもドア」
ひとつの選択 フィリピンの扉を 開けた

過去の 粉々に崩れた 自我の断片 

フィリピンで 見つけ
ひとつ残らず 拾い上げる
過去片を洗い 隙間なく 張り合わせ 供養する



 

停止していた 心を ときほぐし
新たな鼓動を つむぐ

なんか まだ 時間 あるらしいな
南国と一緒に もう少し おろうか

「東京に戻るな 異国に ふるさとを 創れ」



 

生活の営みは 生き方 そのもの
自分らしく 異国で暮らしを 整える

お金が ないのなら ないなりに できる

お金を 優先させたら
 一生 自由は 手に入らな かった
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「10分 どん兵衛」

知ってる? 
10分 どん兵衛って!

通常 5分の ゆで時間を
10分で やるという 作り方

貧乏メシの 習慣が 抜けず
そういう食べ方に なって しまった

金が 無く 
インスタント食品で 食い つなぐ 
そのために 編み出した技

 

お湯で 麺を 太らせ
嵩(かさ)増し していた

書きながら 羞恥で 耳が熱い

勘違いして ほしくない のは
貧乏で あることを 目的と 

していない と いうこと

今では 食費を 心配しなくて いい 
だが 週に 3~4度は 袋麺を 食べる

それを ふやかしたりするのは もちろん
味を 足したり 2種類を ブレンドしたり
スープに かたくり粉を 溶かし込んで みたり

「若干の 後ろめたさ」を 感じつつも
当たり前の こととして やり続けている

結果 そうなって しまった
あるいは 現在も そうなって しまっている

目指して 
到達するような もので なく
生活を 潤すものでも ない
「生活に 染み付いた 作法」

自分は 今
「玉ねぎと豚バラ肉の煮物」
その 残り汁のことを 考えている



 

ああ 残り汁・・
うまくいった時の
残り汁を 捨てることなど 出来ない

できる ことなら 
それを 翌日に 再利用したい
うどんの 出汁に するとか
あるいは おじやに 入れても いいし
とろろ昆布を 入れて 熱湯を足し
万能ネギを ばら撒いて おすまし椀に 

 

そうしたって 誰にも 諌められない

また 冷蔵庫の中に 何が あっても
有るもので なんとか する 

そのものを 作るために
買い出しに 行くのは 浅ましい
上流の やること

玉子とソーセージュが あったら
それで なんとかする



 

人に 見せるようなものでも ない
そりゃ よそ様に 見られる時は
買い物に 行くべきだ

気取る 必要は ない
味付けも 醤油と中華だしと砂糖 
ごま油で 十分

その女の 名前も 知らない
行きずりの 恋みたいで 良い
後に 本妻に 収まるように
スタメン・メニュー入りする 
そんな ことだって ありうる

生活痕が 見える料理
人が 本来 隠しているような
余分を 見つめて 作る
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まだ 20歳に満たない 手前だろう・・
薄暗い 柱の陰で 顔も さだかでは ない
10時過ぎ 露天も店じまい 人通りも まばら
サンペドロ通りの 四つ角に たちんぼ娼婦

長い黒髪 うっすら汗が 滲む肌
暗闇に 眼だけが ネオンに光る 
洗い晒した タンクトップに 短パン
膝下が 長く すくっと 伸びていた 
足下は すり減らした サンダル


 
 

彼女は 身を売って 得た
1000円を 握って 通りの店
大衆食堂「KUSINA」に 入った

料理は チキン・ボール 150円 
自分は それを 味見させてもらう
旨味が 澱のように 凝縮 熟成されている



 

老舗鰻屋の
継ぎ足しの タレのような 香ばしさ
つい 二匙目を 口にして しまった



 

やっと 手にした
貴重な 食べ物 だったのに と 気づいて
顔を 上げると・・ 

彼女は ニヤッと 笑うのだ

過酷な 環境で あるほど
食べ物は 輝いて見える

彼女には フカヒレスープより
腐臭漂うスラムの
鳥スープのほうが 断然 うまい

生きるために 食べている
シンプルな原理に 基づく

貧しさから 家を出て
ゴミを拾って 生き延びてきた 女

「今 幸せ?」と 聞く

彼女は 言う

「あなたに 会えたから 幸せだよ――」

寺を 巡礼する お遍路さんと 同じ
人の数だけ 口にできない 事情が 
立場の視線を 意識すれば
目の前の景色も 一変する

相手のことを 知る
じかに 交わることで わかっていく



 

ネオンの下では 
同じ絵を 描いても 昼間とは 全く違う

夜は 娼婦 

昼は 修理工 バイク屋の 見習い

顔つきまで まるで 異なる



 

現実が 気持ちを 振るわせる
夜 朝の境で 消える 街の灯り
走馬灯みたいに 思えた

光芒の 明滅の中
自分は まるで 異世界を
訪れたかの ように 落ち着かない
思えば 走馬灯など いまだ 
目にしたことが ないのに

人は 優しいほど
相手を 思いやりすぎて 介入できず
躊躇するうち 見えない壁が できる

その壁は 氷山となる
冷たい氷の壁が 厚くなりすぎて
本音や表情さえも 隠してしまう

自分の掘った 不和の穴で 

もがく 不器用な 人間たち
後悔を 背負って 懸命に 生きる

なんとも 優しく 

じんわり 雪解けの きっかけは 自然
劇的な ことでは ない
ただ 当たり前の 日常と地続き

ほんの 一歩 踏み出して
思いを 伝えるだけの 単純な もの
日常は いかに つまらない 

誤解に 満ちているか

誤解が 積もると
後戻りのできない わだかまりに
普段の 心の有り様を 考え直す 
その きっかけを 与える ダバオ

自らの内に「慈しむ」を 包摂し 
それを 愛で 親しむのか

それとも 余裕を 失った 果てに
無いものを 追い求めるのか

どっかに行こうと 自分が言う
どこ行こうかと あなたが言う
ここも いいなと 自分が言う
ここでも いいねと あなたが言う
言ってるうちに 夜が明けて
ここが どこかに なっていく

いま ここに いることへの 強い喜び

 


◇◆◇ ──────────────────────