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           ダバオ通信  ヤン爺のラストライフ・ダバオ 
              Last Life Shift In Davao Philippines
   
  
            フィリピン社会に戸惑う ダバオ隠居物語
                  「団塊 百年の孤独 老いの抗い」  
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子供の頃 お守りの中を 開けて見た
読めない漢字で 書かれた 
小さなお札が 入っていた だけ
秘密めいたもの 何も 隠されて ない

おまえ 罰が当たるよ 母親に叱られた

 

以来 お守りを開けるという 発想自体
頭の中から 消えていた



 

発売された「紙だのみ」
見た目は 普通の お守り

中には 神様の お札では なく
折れることのない 分厚い紙で 作られた
メッセージカードが 入っている

親や友人や恋人が 
メッセージを 書いて 中に入れ 渡す

お守り「紙だのみ」
ポケットに 入れて おくだけで なく
いざという時に 開けて読むことも 出来る

言霊とは よく言った
大切な人からの 言葉には 何かが 宿る

「紙だのみ」という ネーミングも 面白い

受験に限らず 大会 面接 オーディション
コンクール 上京 海外留学 など
すこし 考えた だけでも
「紙だのみ」用途は たくさん 思いつく

お守りの スタンダードに なる?
神社 仏閣が また 遠くなる

「やる気 スイッチ」 人それぞれ
 本人と 近い間柄だから こそ 言える
「粋な 一言」を 忍ばせた お守りを 渡して

「ピンチの時は 中を開けて 読めよ」なんて・・

中を 開けたら
「弱気になって 開けてんじゃねーよ バーカ!」
ふふっと 笑って リラックス

あなたの心と躰 お変わりありませんか
ヤン爺です 今日も ダバオにいます
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「春 死なん」
妻を 亡くしたばかりの 70歳の富雄
理想的な はずの
二世帯住宅での 暮らしは 孤独で
何かを 埋めるように
ひとり自室で 自慰行為を 繰り返す 日々
そんな折 学生時代に
一度だけ 関係を持った 女性と再会し・・

「はは ばなれ」
夫と共に 早くに 亡くなった 
実父の墓参りに 向かったコヨミ
専業主婦で 子供も まだなく
何事にも 一歩 踏み出せない
久しぶりに 実家に立ち寄ると
そこには 母の恋人だという 
不審な男が・・

 


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母亡き後 父と妹たちの世話に
青春の日々を 費やしてきた 
三姉妹の長女 砂子

六年前に 父を 亡くしてからは
会社勤めを 辞め
有楽町の裏通りで
おでん屋を 切り盛りしながら
妹たちの 親代わりを 務めてきた
 
ようやく 妹たちも 
結婚や短大進学を 経て
手が かからないように なってきた ころ



 

砂子は もし 結婚できたら と思える 

男に 出会う
男は 常連客のひとり 殿村良介

 

既婚者で あるものの
社内でも
「奥さんは 悪妻 別れた方が いい」
との 同僚との会話に
砂子は 淡い期待を 抱く が・・
婚期を逃した女の はかない夢 か

新聞社の 週刊誌編集部で働く 良介
校了日に 砂子のおでん屋に
夜食の定期便を 出前してもらうの が
半年ほど前から お決まりと なっていた

メニューは
おでんに 茶めし おしんこの 3点セット

ある日の 校了日
砂子が いつもの夜食を 岡持ちに入れて
良介のもとに届け 店に帰ると
見知らぬ 中年女性が
カウンターの真ん中に 座っていた



 

良介の妻 みつ子 修羅場の始まり

「あッ あたしに 
   お豆腐と スジと 大根」
いつも 主人・・ この三つ なんでしょ
 
亭主の 好きなものは
知ってるわ と 言わんばかりに 
マウントを とる みつ子

砂子の おでんのおいしさに
だしの 隠し味を 聞き出そうとする

「……こんぶと かつおぶしと
   ……あとは
   お酒を 少し フン発する くらいで……」

「フーン じゃ うちのと 同じだわ ねえ
   どこが ちがうの かしら?」
 
材料や作り方が 同じでも
料理は やはり
心も 大事なのでは と 思わせる
砂子の  胸の内

誰かのために 心を込めて作る 料理
みつ子の 歪んだ愛情とは 違う
砂子の 良介に対する まっすぐな 想い
砂子の おでんの 隠し味

出産すると したら
おおよそ この年齢までに
店は 続けるのか やめるのか
人生の節目で 選択を 迫られる 女
男も 選択を 迫られる

女性に 負担が いく社会
砂子 自分自身を 保つことは 難しい
人は 強くない ゆらぎも ある

 

人生の たづなは
取っていないように 見える人が
取っているのかも しれない
もう 一歩を 踏み出そうとする

みつ子が 帰った後
ひとり ご飯を 食べるとしたら
何を 食べるだろう

人は恋い 性に焦がれる
年を重ねても 揺れ動く 心と体
鮮烈な小説集「高齢者の性」「母親の性」

枯渇することのない 性的欲望と
それを 抑圧する 社会の「常識」
その間で 揺れる 人々の姿を 書き出す
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事実は 小説より奇なり

愛人と 家を 出ていった 父
高齢に なって 家族のもとに
返され そうになり 苦悩する家族

横浜市に住む マイコさん(50代)
マイコさんの父・ヨシオさん(80代)は
長年 母・ケイコさん(80代)と 別居

離婚こそ していない ものの
ヨシオさんは
千葉県に住む 女性と 暮らしていた
親族は この女性を
千葉の「愛人」と 呼んだ

母が 受話器越しに
『夫が そこに いるのは
   わかっているん ですからね!』
怒っていたことが あった 
マイコさんは 父親の 愛人の存在に 
気付き 始めた

あきれた 妹のアコさんが
母に 離婚を 勧めた

 

だが 母は
「手続きが 面倒だから いい
   生活費は 入れてくれて いるし
   老後に 年金が 半分もらえれば 
   それで いい」と 応じなかった

そんな 状態が
揺らぎ始めたのが 3年前
『千葉の女』と 呼ぶ 愛人から
マイコさんの兄 長男・タカオさん(50代)に
次のようなメールが きた

「ヨシオさんが 高齢になり
   私も 歳を とったので
   面倒を見切れなく なってきました」
せめて 老後は ご家族の もとで
お過ごしください

思わず『ふざけんじゃ ないよ!』
タカオさん 乱暴に叫んだ

 

散々 好き勝手 しておいて
面倒を みられなく なったから
『お返し します』って
猫や犬じゃ あるまいし
こんな 都合の良い話が あります? か

マイコさんは「千葉の愛人」と 会う事に
今後に ついて 話し合うことに なった

現れた女性に マイコさんは 驚いた

「若い時の 母に そっくり なんです」



 

愛人って いうと 若くて 派手な服を 着た
強気な女性を 想像していた
会ってみたら 70代の 普通の女性

話し合いでは
「介護の義務なんて ない」と
主張し続けた マイコさん だが
相手の女性も 折れない 
議論は 平行線の まま

「面倒 みられないなら 勝手に 別れてください」
父のことは 放っておいて 大丈夫です と いうと
女性は『そういうわけには いかない』と 言う

マイコさんらは
今さら 父の面倒を みるつもりは なく
母の認知症介護で 精いっぱい
母と妹のアコさんが 住む家は
今も 父名義に なっており 頭を 悩ませる

母は
女性として 父のことが 好きだったと 思う
あんなに 女性に だらしない 人でも
私たちに とっては 父 憎み切れません

ヨシオさん なんと自由で 身勝手な男

 

いや そうでは ない と 気づいたら ぞっとした

ヨシオさんは 自身の内に
相反する矛盾を 

矛盾のまま 抱えている だけ
まったく 自覚せず

家族を 続けたい が
恋愛に 生きても いたい
自由を 欲しながら 束縛を 求めた

何も 失いたくは なく
何も 持っていたくは ない
ヨシオさんは その矛盾に 

翻弄され 続けてきた
 

何も 決定しない まま
矛盾を 抱えているのは 

ヨシオさん だけでは ない
夫を 糾弾しながら 待ち続け
夫に憤怒しながら 受け入れた 妻も また
大いなる 矛盾を 抱えている

さらには 家族
子どもが 成長していった
彼らも また 矛盾に満ちていた

家族の ひとりは 言う
この家には 表面的な秩序と
実質的な 無秩序が ある

ひとりの人間の 抱える矛盾は 目に見えないが
この家に 満ちた 矛盾は
第三の眼で グロテスクな までに 暴かれる

それでも 人や 人生に 嫌悪感を 持てない
この家族だって 軽やかで すら ある
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「年相応」って 誰が そんな基準を 決めた?

「年相応」という 固定観念に 縛られ
自身の性欲を 周囲に隠しながら生きる 孤独
老いて 生きる時間は 長く
恋愛と余生を 思いのまま 楽しむ事は
命を 無駄にしない 気概

「高齢者も 性欲を持っている」事実
その事を 表に出しては いけない と  隠す
性の解放は「老人には 相応しくない」と でも 

恋愛にせよ 性行為に せよ
若いときは 当然の事として 扱われるのに
なぜ 高齢になると 途端に見られ方が 変わる
違和感や滑稽さを フィリピンで 感じていた

世間が 言う『年相応』も
いつから 誰が そんな基準を 決めたのか
そんな あやふやな ものに よって
自分の意思とは 無関係に
恋愛や性の自由が 奪われれば たまらない

その恐怖や 寂しさを 想像したら
今の自分とも 関わってくる

世の中には 性別や年齢
社会的な立場に応じた「役割」が 存在し
それに みな 従う様に 縛られている
家庭内の役割 父親 母親 長男 兄弟序列

家庭内の役割から 逃れても
自分の属する社会を 変えたと しても
同じような役割の強制は 付きまとう

自分は 人を縛る役割に
強く抗(あらが)って きた けれど
日本社会に在る限り 攻防と憎しみに まみれた

女性だって 自分のために 性が あるわけで
性役割の ために 自分が あるわけでは ない

家族が 身内に対して
「役割」どおりの 生き方を 強制する
亡き祖母が 悲しむと 言って
祖父の再婚を望まぬ 高校生の孫

あるいは 子育てを 終え
老後の恋愛を 楽しもうとする 母に
心理的な距離を 感じる 20代の娘
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妻に先立たれた 70歳の富雄
大学時代の 後輩女性と 
ベッドで 肌を重ねることで
自身を縛る 役割や固定観念から
自由に なろうとする
だが 一筋縄では 許されない



 

老人と いうには 若すぎる
老人に なりたてで まだ 若さも残る
宙ぶらりんな 不安定さは 

表に 出てこなかった が
愛人が あいだに 入ってきた ことで
引き出されて いった

考えた行動では なく 行動してから 考える
いくつかの可能性から ひとつの意味を 選択し
ほかを 捨てるとき 捨てられた なかにも
いくぶんかの 真実が ある
人間の実際に 即している

どんな体験を 通じて 
役割から 自由になるかは
富雄の これまでの 人生経験による

望まない ストレスを 感じる環境
たま たまの出来事で やつれて いるなら
ちょっと 恋愛すれば いいな と

老いの中 求めているのは 自由
自由に 老いるために
信頼できる愛人と お金と 責任
そして 人生への あぶない軸

オレは オレが 美味しいと思う ワイン
多くの人は 美味しいと 思わなくても
オレには 絶対 これしかない
その ワインを 見つけ出す

自分は フラットな性格だと 富雄
それが「あぶない軸」に なっている

昔から そういう性格だったん ですか?

子供の頃から 世の中を 疑っていた
自分の意見を 一番 尊重してきた
多くの人が 賛同する意見でも
自分で 確かめない限りは 信用しなかった
ぶつかることが 多く 嫌われていた

一人の時間が 好きだし
友だちを欲する 性格じゃ なかった
大人になって 寂しいという感情が
人より 薄いと 気づいた

富雄の そういうとこに 
好感を持っ人も いた



 

歳を重ねたから 偉いとは 思わない
年下で すごい人も たくさんいる
男でも 女でも その人 自身を 見ている

髪を切った人に 

似合っているか? 聞かれた
似合わないな と思ったら
「似合わない」って 言う
相手が 感想を 求めてきたん だから
似合わない と思ったら それで いい
「似合ってる」と 嘘ついて
その人に 似合ってない方が かわいそう

八方美人で いたら
深く分かりあえる 仲間とは 出会えない

愛人 それは たんに 

一緒に いたいだけで なく
相手の人生も もっと良くしたいという
仲間のような 感情を 強く持っていた

仲が いいから こそ
僕に 責任感が 生まれる と 思う
金銭面も含めて 愛人を
不安に させるわけには いかない

愛人が 僕を
「守ってくれる存在」だとも 思う
仲間というのは 僕が 認めている存在で
そういう人は 僕を 支えてくれる存在

他に やることが ない人は
女性を 愛するようなことをしては ダメ
他にも 没頭できるものが あって
バランスが 取れる
相対性理論について 本気で 勉強してる とか

立場や役割によって 人は 変わっていく
これからの10年 楽しんで
ずっと 自由に 生きていきたい だけ
人生すごろく 途中で投げ出さず 上がりたい

身内に 自分の 生き方の 
お説教臭い話も 富雄に かかると
みんなが 考え込まずに いられない
魅惑的な問いに 変身する
硬質でいて ユーモラス リズム感に満ち
先鋭的 時に 詩情豊かな 語り口の力

愛人問題が 複雑に絡み合う中
身内たちは ぶつかりあい 悩み
もがきながらも 到達点に至る

「自分よし 相手よし 世間よし」ふっ ふ

想定の ないところから
ひゅっと答えを 見つけてくる
『生きる英知』みたいな もの
富雄に 身内が 教えられる
 
富雄の これまで 培ってきた 
父親として 男としての人格に 敬意
見守ろうとする 身内の者たち



 

富雄の 解放されかた

「役割か・・」と 一呼吸 おいた

彼は 穏やかな口調で 説明した

恋愛感情や性的欲求が
もっと柔軟に 受け止められる社会に
これから 変わっていく・・

社会の偏見を 振り払い
他人に 振り回される こと なく
自分自身が
「どうありたいか」
「どうしたいか」という 意志を持つ

自分自身が 
燃焼し尽くした感を 持てる
納得できる 余生を 作る

これからの 人生を 思う 
幸せの瞬間と いうのは
「熱量を 持って 行動したときに 現れる」



 

富雄さん いつか 俺が 死ぬとき
「自分の人生 本当に よかった」と 思えるか
これが 自分の人生の すべてだと
「今 死ぬけど 後悔はない」と 言い切れる
熱を発しながら 老いを生きるに 尽きる

家族に さらに 話しかける
サッカーの試合で
ボールやフォワードに ばかり 注目してしまう
無意識に 人生の筋ばかりを 追っかけている
そして それらから 逸脱したもの
ゴールキーパーばかりを 目にせざるを 得ない時
違和感 もしくは「不安」を 感じて いるんだよ
ゴールキーパーが 俺だよ

人生の 筋を追うことで
感動したり 驚嘆したりに 出会う
老いたから 感じる感覚や 
自分の理解の範疇を 超えた世界に 触れる

 

一人では 生きていけない 脆弱な存在
その上で 自分を客観視し
老いらくの 恋愛という 行為の
知らなかった側面を 知ることが できた 
富雄の 喜び

生活を 自分で 管理できれば
その機会が 与えられて 人は 幸せを 感じる
所得が 低くても 自分で 自分の生活を
管理できるので あれば 幸せだと 思える
自分の行動を 自分で 決めるという 
自由度が 満足度を上げる

あらためて 富雄は 自分に合った役割や
自分らしさを 自ら 見つけることを 得た
他者に 決められた役割から 解放された

老いたと 今 この瞬間を
悲観的に 生きている ことは
富雄の人生に とって すごく もったいない

昨日 自分を 幸せにしてくれた ことを
毎朝 三つ書き出す 本当に 小さなこと
健康な うんこが 出たとか 
それを 毎日 書き続けることで
ジワジワ 幸せ感 楽感が 満ちてくる

富雄は 常に柔軟で いたい
自分は こうだと 決めつけて しまうのは
自分で 可能性を 潰しているような もの
こういうこと しちゃダメとか
自分を 縛りつけちゃうと
そこから 一生 抜け出せない

富雄は いつも 状況を 読みつつ
固定観念を 取り払って 生きてきた
そして それを 表現して
暮らしに 残していきたいと

それを 見つけた 富雄を
縛るものは きっと もうない

身内に 自分という 自身を 知ってもらう
自分の生き方 幸せを 理解する人も 出てきた
長く生きてきた その事を 評価してもらえる
年を重ねた 「年季」が 敬われ
それを 味わい深いものと 受けとめてくれた



 

愛人と 一緒に居る 生きる励み
老いた 人生を慈しみ 楽しむ
ゴマカシの会話では ないものが ある

DNAが 欲しがる 男女の甘み
「あと3%」を くれる  何だろう?

男の品格 

女の甲斐性 

共に その覚悟が あって
してのけられる ことだ 

ジャン ジャン

 


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