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           ダバオ通信  ヤン爺のラストライフ・ダバオ 
              Last Life Shift In Davao Philippines
    

            フィリピン社会に戸惑う ダバオ隠居物語
                  「団塊 百年の孤独 老いの抗い」  
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肌寒い朝だった
ゾクっと感じる 涼気に
アッパーシーツを 引き上げた


「 なんなんだろう また 同じ夢の断片」

寝起きは 良くなかった
窓からみた外は どよんとした 重さ

「もう少し 寝るか・・」

歯磨きを していると
オハヨー  うん?
アハヨー  アイよー  アイヨー 
叫ぶ声が 聞こえる
家には 自分しか いない

「はぁぁぁい」
歯磨きの泡だらけのため
腑抜けた声で 返事をした
ブクブクもいい加減に ゲートを覗いた
そこには だーれも いなかった

あれ? 聞き間違い かなぁ

辺りを 見渡すが
いつもと変わらない 近所の風景

家に入ろうと 振り向くと・・

「ひぇっ!!!」
聞いたこともない声が 出た
ドアの前に 1人の女が 立っていた
ビクッと 身体中を動かし 後ろに下がった

その女は 下を向いていて
おっきな帽子を かぶって いたため
顔が分からず 口元だけが 見えていた

真っ青にも近い 唇の色だった
この女に あったことも ないはず
女は なんだか 落ちついた 態度だった

「どなた?」自分は 訊ねる

「西の魔女が 危篤だ
   あんたが 必要だ 
   ついてきて ほしい」

片言のような 感情が 伝わらない
流れるような 三文だった

だが 不思議と内容は 
自分の耳を スゥっと通り 
切実な気持ちは 受け取れた

「西の魔女?? だって」

耳馴染みのない 言葉だが
身体の奥が 受け入れる 感覚があった

「あなたに 記憶は ない
   だけど ついてきて ほしい」

帽子の青唇女は 続けて言った

「何のことだか わからないけど
   私が 必要なんですね?」

「必要だ すごく」

「わ わかりました」

身体の どこからか発する
信号を感じ 帽子の女を 信じた

自分が 納得すると
帽子の女は 急に へんな呪文を
ぶつぶつ言い出すと 3回 足踏みした

一瞬にして 景色が 変わった
そこは 見たこともない 薄暗い森の中
暖かさは 一欠片もなく 肌寒さむい
木の上に 飛び回る 何かしらの 物体で
木は カサカサ 唸っていた

「ついてきて」
帽子の女は 自分を気にすることなく
森の暗闇に つれていった

「ここは どこ? なんだ」
その声すら かけられない
行くがままに ついていく

帽子女は スタスタ 森の奥まで進むと
なんだか 古い木で できた家に ついた

ぼんやりと 建っている割には 
存在感が強く 只者が 住んでいる 
雰囲気では ない

冷静に考えたら
とんでもなく 普通ではないことを 
しているのに どこか 冷静な自分に 
驚きながら 家を見つめた

「貴方に 記憶は ないはず
   だけれど きっと わかってくれると
   皆んなが 信じているから」

帽子の女は フッと唇を動かし
少し笑ったように 見えた

「いいけど・・」
それ以外の言葉が 見つから なかった

ギィィィー  扉をあけると
古くしけった木の音と匂いが 広がる
そして 扉が開いた とたんに
身体に まとわりつくような
草の匂いや 謎な煙に包まれた

「ゴホッ ゴホッ」
思わず 慣れない匂いに 咳き込んだ
言われるが まま ついていくと
突き当たりに それは それは 高く 
どでかいドアに たどり着いた

帽子の女が
「つきました 開けます」と 言うと
どでかいドアは 勝手に開いた

中は 煙まみれも いいとこだった
中の家具すら 見えない
モクモクした部屋に入ると
そこには トンガリ帽子を かぶった
たくさんの女たちが いた

一斉に 自分を 見ると

「あら 久しぶりじゃない」

「あんた この人に わかる訳 ないじゃない」

「あぁ そうだったわ」アハアハ

不気味な 女たちが 
自分の方を見ながら クスクスしていた


すると バァァァーッと 女たちは
花道のように 左右に離れ 空間を作った
その先には インパクト放ち まくりの
ベッドが ドカンとあり
あからさまな ボスを思わせる 女が 
眠っていた

自分は 女たちに 背中を押され
サーっと 前に押し出され
ボスのような女の ベッドサイドに たたされた

すると ボス風な女は 眠そうな顔で
自分を見て 口を開いた

「まぁまぁ よく来てくれました 
   ジョエルヌッサ
   悪かったね 呼び出したりして」

「え?」

「ジョエルヌッサ  あんた なんでしょ? 
   よ~く しってるよ 
   そりゃ あんたの親友? いや
   戦友みたいな もんだった からね」

「なんの話です?」

「ドリチェーナ あんまり深くは 言わなくて 
   いいんじゃ ないかしら? 
   重要なことを 今の この人に」と
トンガリ帽子の一人が 口を開いた

このボス的な女は 
ドリチェーナという 名前らしい

「そうだった ゴホン ひぃー  ゴホン ゴホン」
ドリチェーナは 苦しそうに 咳き込んだ

すると 周りのトンガリ帽子 女たちが
「無理しないで 寝てなさい」
あとは 私たちが と 言うと

「あぁ ありがとう」
それじゃ 頼むわね そういうと
自分は 他の部屋に 連れられた

そこには いずれも 美しい
4、5人の トンガリ女たちが
自分に 説明し始めた

「わからないこと だらけだろうけど
   落ち着いて 聞いて欲しいの
   ドリチェーナは いま 3560歳
   まぁ あなたの世界では 
   考えられないかも しれないけど
   こっちの世界でも 長生きのほうよ
   そんな ドリチェーナは 急激に
   ここんとこ 身体が 弱ってきてね・・」

「はぁ・・」

自分は 何が 何のことだか という顔で 
口を ぽかんとあけて 聞いていた

「でね なかなか 信じられないだろうけど
   さっき ドリチェーナが 言って いた通り
   あなたは 昔 ドリチェーナの深い友達だったのよ
   そんな あなたも 強い力を 持っていたの」

「それで つまり 自分がきた意味は なんですか?」

「よくぞ 聞いてくれたわ」

ドリチェーナが 良くなるには
グッカサ草が 必要なの 貴重な草よ
グッカサ草は あなたの守備地域に しかない
そこには あなた以外 誰も 入れやしない

「は? なんですか それ」

「まぁ 分からないのも 無理ないわ
   あなたの中に 記憶は ないはずだから
   だけど 行ったら きっと何か 分かるはずよ」

「どこに その地域は あるんですか?」

「東のほう 東の森は あなた以外 入れないのよ
   だから 今回 あなたを探す指令が はいり
   人間界から 連れてきたの
   地域ごとに 入っていい人が 決まっているのよ」

「グッカサ草を 
   あなたが 取ってきてきてくれたら
   あなたの大切な ドリチェーナも 助かるの
   大切だった が  正しいかも しれないけど」

「なんで 自分なんだか 分かりませんが
   自分が ドリチェーナさんを
   助けることが できて
   みなさんの お力になれるのなら」

戸惑いながらも 緊迫した緊張感のある
雰囲気にのまれた 自分だった

「ありがとう そう言ってくれると 思ったわ
   じゃあ 早速だけど 行ってもらうわ
   グッカサ草は とんでもなく 光っている
   きっと 分かるはず 
   忘れないでね 帰ってくる時は 
   ゴンゴンゴニョーロと言って
   足踏みを 三回したら 帰ってこれるから」

そう言われて また外に出た

「ゴンゴンゴローニョ・・?」
口で 何度も口覚えして 焼き付けた
そして 家に来た 帽子女が
また スラリとやってくると
足踏みを また 三回し始めた
トン トン トン

すると 一瞬にして 自分が 目を開けると
 それは 暗い 暗い 茂みにいた

「え なに ここ?」想像以上に 暗い
自分が 軽はずみに 受けて
ここに きてしまったことを 悔やんだが
ドリチェーナの あの目が 忘れられず
何か 放っておけない気持ちに 襲われた

不老不死で両性具有の「天仙」たちが 住み 
不気味な化け物たちが 闊歩する魔境 東の森

多くの花が 咲き乱れる中
醜悪な怪物たちが うごめく
幻想的な森の風景は 恐ろしくも 美しい
「地獄」にも「極楽」にも 見えてくる

暗闇の茂みを ひたすら歩いた
暗闇には コウモリの鳴き声が 響き
月の光すら 見えない

「なんだよ はやく  
   ナントカ草見つけて 帰らなきゃ」

茂みを かきわけながら 探した
すると 何かの目が 茂みから 光ってみえた
「ん? 動物?」目を 張り詰めた

近くまでいくと その目は 増えてきた
「げ! 気持ち悪」
生き物の 光る目が どんどん 増えていく

すると その 目ん玉たちは
自分を 誘導するかのように 移動した
光る目が きょろきょろと 
暗闇の道を 照らすように 先へ進んだ

目ん玉たちに ついていくと
急に紫の光を あからさまに 
違和感を 出しながら光る場所を 見つけた

「もしかして・・ あれか」
近付くと そこには グッカサ草と
ザクザクした字で 書いてある

「あったー!!」

目ん玉は いつの間にか いなくなり
紫光した光景が 目一杯に 入ってきた
取れるだけ 自分は 取った
その草は 素晴らしく 光っていた
これを ドリチェーナにあげれば 治るのか
自分は たくさん摘んだ

そして 戻ろうと後ろを 振り返ると
すぐ目の前に 壁があり 後戻りできない

「え? あ そうだ  呪文・・」
教えてもらった とおりに
「ゴンゴンゴローニョ!」と 発してから
足踏みを 3回した

すると 渦巻雲が 急にやってきて
自分の周りを 囲んだ
一瞬 バサバサバサッと 天に舞った

そして 次の瞬間 目を開けると
そこは 見覚えのある 森だった
また トンガリ帽子の女が いた

こんなに 早く帰ってきたのに
なんだか みんなは やっと 帰ってきたか
そういう 表情を していた

「遅かったわね 帰ってきたのね」

「さぁ 急いで ドリチェーナの部屋へ」

「は はい」

また 先ほど 連れてこられた
一番奥の ベッドルームにきた

「え??」さっき 話していた 
ドリチェーナは 何も言わずに 
じっと 目を閉じていた

「グッサカ草を もってきた これを あげて!」

すると 周りは 目を合わせながら
気まずそうな 顔をしている

「どうした? みんな」

すると ひとりの トンガリ帽子女が
近寄ってきて 話した
「西の魔女は もう 死んだわ」

自分は 驚きすぎて
手から グッサカ草を 落とした

「あんた グッサカ草を
   取りに行くって 言ってから
   もう どれくらいかしら
   3、4ヶ月は たったのよ」

「え? え?!」 どういうこと 
自分は さっき行って 帰ってきたのに

「魔界は そんな ちいさくないんだよ」
東の森は ものすごく 遠いから
魔男の記憶を 忘れちゃちてるん だから
そりゃ 時間 かかるさ 
まだ もしかしたら 片隅に 
魔男だった 気持ちをと 思って 
行ってもらったんだよ

「魔男? 自分が 魔男だった?」

「あぁ そうだよ
   あんたは 立派な 東の魔男だった」

ドリチェーナとは 大の仲良しで
あんたの地域では 病気を治す草が
わんさか取るれるって 有名だった
でも 東の森に 足を踏み入れらるのは 
あんた だけさ

「だから 人間界から つれてきたのよ」
自分は ひたすら黙っていた

「あんたはね 人間として
   人生を はじめたいって 
   急に 言うもんだから
   ドリチェーナは 何度も 止めたわ
   なぜなら 東の魔男が いなくなると
   西の魔女の力が ぐんと 落ちるからね」

あんたと 支えあって
生きていたような もんだったから
あんたが いま 人間として 生きれてるのは
ドリチェーナが 最大限の魔力を 使って
人間に したからよ

そのかわり 魔男だった 記憶は 消した

「そんな  全然しらなかった
   だから 自分には 両親が いなくて
   おばあちゃんに 育てられた のかな」

「その おばあちゃんも
   ドリチェーナの 魔法によって
   存在してるのよ」

「自分は  また 人間界に もどれる?」

もちろん ドリチェーナは
助けてもらいたかった わけじゃなく
あなたに ひと目 会いたかったのよ
照れ屋だからね 
こんな形に なって しまったけど
心置きなく 天国に行ったはずよ

そうだったのか
ドリチェーナの分まで 生きなきゃ
自分は 再び 家の外に出ると
台風どころじゃない 強風が
荒れ起こったかのように 吹いていた

「きっと ドリチェーナよ」

自分は なんだか 
急に ドリチェーナが 恋しくなり
叫んだ「ドリチェーナ!」 
あなたは ずっと 親友だよー! 

「さよなら」その言葉を 発してから
自分は 視界が 真っ暗になった

「あんた! あなた! おきてよ!!」

のそっと 目を開けると 明るかった
店じまいですよ~ 
踊り子の アレックスが 肩をゆする 

いつもながらの BAR
そして テーブルに べったりと
よだれを 垂らしていた

「あれ? 西の魔女 ドリチェーナは」
トンガリ帽子の女たち
 え?! 自分 夢・・?



 

「ナニ  訳分かんない事 言ってるの 」
あんた ワタシのダンスも見ないで
ずっと 寝てたよー
ほら 目さまして

アイスペールの氷が 水になっていた
そのまま 容器に口をつけ 飲んだ 

バーガーでも 食べにいくか
アレックスに 提案した

「いいね~ 行く いく」
着替えるから 待ってて

自分が 魔男だった って 
夢か 現実だったのか・・ 分かりやしない
だが ひとつ 分かった
自分の人生は 誰かのために あって
誰かのために 生きているとしたら
自分を 大切にできる

誰かに とって 
自分の人生は 宝物な はずだから・・

真実は 誰も 知らない
何かを暗示する 夢体験
 
『だって 見たんだよ』なんて
誰にも 言わないで おこう 
なんかの病か などと
チャカされるのが 落ちだから・・
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夢の話は 半分真実で
半分嘘という ところ だろうが
とにかく最高だ 夢は 現実なのだ
多少の 間違いは あってもね

自分は 夢の全てを 信じた
ダバオとは このBARとは
そういう場所 なのだ

アレックスは カウンターで 
この日の 日給を受け取ると
バックを 肩にずりあげ 近付いてきた
化粧を落とした顔は 健康的だった

膝丈 真っ白のスパッツ
真っ赤な 袖無しシャツ
小さな顔の髪は ポニーテールに 

「さぁ いこう!」立ち上がった

肩をかりて 階段を下り 店の外に出た
腕をからめて 角を曲がり ぶらぶら歩く 

午前2時 人通りは無い 24時間営業の店が
ぽっかりと 闇に 浮かび上がってる



 

彼女は シャンティの名を 封印した
代わって アレックスと名乗り
自分が 生きるため 家族のため
夜の世界に 足を 踏み入れた

ひとつの 属性として 社会のなかで 
夜の仕事は 受け入れられて いるの かって
それは ないよ 
隠れるように 生きるしかない
だから マジョリティーは 気付かない

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こんなに 頑張っているのに 何でだよ!
情けない部分もあって 正直に生きてる
怒りのアレックスに 触れれば 熱い

「過去を消し 現在を変え 未来をつくろうとする」

何の脈絡もなく 憂いを帯びた顔をする
「昼は 我慢していても 夜は 泣いている」
アレックスは 孤独を 感じるとき 
自分以外に 信用できる者など いないと・・

一緒に やろうぜ  元気出せ   笑えよ

人が 人を「わかる」ことが
いかに 人を 支えるかは
いくら強調しても し足りない

セブンに寄って 缶ビールを 仕入れた
アレックスが ワインを 手に取った
チリ産の赤 あとで 部屋で 飲もうよ

アレックスは 異様に かわいい女
こまったことに 異様に かわいい
異様に かわいいのだ
純粋に 客観的に かつ 公平的基準からして
この女は 異様に かわいい 28歳

ついでに『いい女』とは 
見た目じゃない 愛嬌を醸す女



「書きすぎた感」を 反省する
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スマホじゃなく 携帯を使い続ける女
電話とテキスト そんな気概が 好ましい

金で 解決できるものと『品』とは 別もの 
貧乏が 不幸せ? 違う 幸せも 混じってる
みんなは 欲望を カネで 解決しているだけ
それを 恥ずかしいこととして やらない
金さえあればの 迷信から ワタシは 自由
それが ワタシの「品」なんだと 
アレックス 胸を張った

あって 困るものでは ない 資質
大人のいい女だよ  だから もう 怒るな

バーガー 注文しておいで

ナニが いい?

任せる 

「こんなに 幸せ」は のろけ 
謙遜を美徳とする 日本人は 表現が 苦手
アレックスに 出会えて 
誰より 幸せだったと 言える 
どんなに 謙遜した ところで
嫉妬されるべき 幸せ

だけれど 手にした幸せが 
本当なのかは わからない 
今 この瞬間の幸せだけは 真実
手にした幸せも いつか きっと
壊れてしまうの だろう・・
不変という名のオアシスは どこにも ない
そんな 切なさを はらませている 

角にあり 大通りに面した
店の横幅は 大部分が ガラス張りで
店全体が ショーケースのよう
テーブルは 窓に沿って 置かれている 

マックの店内に 客は まばら

自分は セブンで買った 缶ビールを飲み
アレックスは ケチャップを 増量した
バーガーを 無心で 食べている
一回の食事で  一回を生きるように

自分のバーガーまで 食べるつもりか?

何が 納得できないのか
「見た目と味が 頭の中で すれ違ってる?」
「店員さ~ん・・」と つぶやきながら
食べかけのバーガーを 持ったまま
店内を 子供のように うろうろ さまよう

私たちは いつも 
常識の枠の中で 暮らしている
常識というルールが あってこそ
社会生活は 守られるの だから
それは 大切な ことなの だけれど

常識に とらわれすぎると
心にストレスが たまるのも 事実
時には 常識の枠から 解放して あげる

とはいえ 食べかけバーガーを 持って
店内を うろつくのは 問題な わけで
誰にも 迷惑を かけない 非常識くらいが 
ちょうど いい

心を チューニングし 同調させている
感覚に酔っている 気分が いいのだろう
生きるに 値すると行為だと 思うことにした
腹が満ちたら 非常識も治まる
超自然体の 素敵な女

もう 大丈夫 こんなにも 幸せだもん

日本だったら 締めのラーメンか もしくは
追加のビール レバニラ チャーハン 杏仁豆腐
夜明けが 近付くときの 飯は けだるく うまい
こう言う時 フィリピンだと 打ち拉がれる

うろうろして 気が治まったのか 
自分の隣に座った アレックス

ね 分かるだろ 分からないかな~

「ブラ跡は うすみどりなる 湖底妻」一句

湖底妻ってのが 微妙
本妻じゃない 通い婚の感じ でてる?

それでか あんた この前
「芋の煮っころがし 作ったから 来て」
みたいなメール あっち こち 送ってたんだ
「4951」・・「至急 来い」って
エロいは 美味いって  ・・ まったく

「いく いく 湖底妻」の そのブラを 
外して あげたときに 薄緑だった?
安ブラが 肌に色落ちした だけだろ バ~カ
ちょっと 締めつけられた 跡が あって
ポルノの味が した? って  舐めたのかよ

今日一日  今一刻 後悔したくない だけ

色事師  あんた 色魔か 

いや 東の魔男!

でも そう言うエロ 嫌いじゃない
もっと してよ

話は 変わるけど 
アレックス どう思う

どんな 話し 
もっと エロく 激しい やつだったら 
部屋に 行ってからにして
ここじゃ 馬鹿笑いして
ひっくり 返れないもん

テーブルに 空の缶ビールが 3本
フライドポテトを 食べながら
アレックスも ビールを 飲み始めた
店員が 警戒する目を こちらに向けている

期待を外して ガッカリさせるけど

「邪魔だ 降りろ!」
双子ベビーカー 肩身狭く 
バスに乗ろうとしたら 乗車拒否 

今日の 日本のニュースだった
何かが 壊れてしまったな 

よっぱらってるんだから 
別な 面白い バカッ話 してよ

このお母さん 子供連れでも 
今日 市役所にでも 行かなきゃ いけない 
やむに やまれぬ 用事が あったんだろう

いつか ワタシ あなたに 聞いたよね 
なんで フィリピンなんかに 来た?って
フィリピン人 みんな 日本に 憧れてるのに
だから そんな話 聞かせないでくれる

日本で 自分勝手が 広がっている
そんな景色や声を 聞きたく なかった
自分は その時 そう答えた

そう だから ワタシも 聞きたくない

学生 年寄り 赤ちゃん連れ 妊婦 全盲の方
豆腐売り 大きな荷 野菜を市場に収める人
みんなが 庶民の交通機関 ジープを 利用する
狭い車内では 普通に 譲り合っている
赤ちゃんに 乳を飲ませる 若いお母さん
年寄りが 乗り込んでくれば
乗降口に 一番近い席を空ける
幼児を連れた人が 乗れば 
子供が 転ばないよう 誰かが支える  

弱い人を 助けるのは 当たり前だよ
困ってれば 家族だろうが 他人だろうが

それは クリスチャンだから じゃない
自分の感受性くらい 自分で守れ

家族だって 血のつながりに 関係なく
友だちも含め お互いを 支え合う関係
大きな家族だと 思ってる 
共感できるから やれる 

できる範囲の 援助は する 

それが フィリピンだよ

そうだね もう少し ダバオに いよう
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共感には「不快な共感」も ある
共感しようと しても 共感できない ときって 
アレックスにも ある?

あるよ そういうときに
「共感しなさい」と 怒鳴られても
できないものは できない
答え合わせのようには 
共感できない 部分ってのは
自分らしさが あるところ だから
自分らしさを いい加減に したくない 

アレックスらしさで 共感できない とき 
さみしさ つらさ もどかしさ が 起きる
不快な共感が 心を傷つける 

共感というと 強い快感や 憐憫を伴う感情
だ けれど「不快な共感」も ある
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道ばたで 乞食の高齢者と 目が 合った
自分は どうすべきか 考えて 立ち往生

そんなの 5ペソを 缶に入れて あげれば
済む事でしょ なに 考える 変なこと言う
したくなければ 黙って通り過ぎれば いい

おせっかいを 焼く 
これが 日本では 難しい
おせっかいには 勇気が必要
バスに乗り込む 子供連れの母親
乳母車を 引き上げてあげる 
只 それだけの事に 勇気が いる

 

相手が 好意に頼ってくれたら 
いいんだ けれど

「いや いいんです」と
キッパリ断られたら 傷つく
「おせっかい」って 冒険

なんで 複雑にするの 普通にする事でしょ
したいから そうした それで いいじゃない

人に頼るのは 難しくなった
おせっかいを 焼かれると
弱者になった 気持ちに させたり
他者が 侵入してくる感じに させたり

日本人は「助けてもらう力」を
鍛えた方が いいよ
弱い部分を 人に ゆだねる力をね
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侵入してきて 
ねえ ワタシにも おせっかい やいてよ



 

当たり前の話 延々とされて 飽きたよ
ワイン開けて いい

ここでは おまえ 何するか 分からないから 
夜明けのボサノバ 聞きながら
部屋で ゆっくり やろう

テーブルに 突っ伏し
組んだ腕に 自分に向けて顔を乗せた
聞いてるか アレックス 
軽く目を 閉じていた

アレックスは 
助けてもらうこと 苦手じゃないよな

頼らなきゃ ならないときも あるからね
目を閉じたまま ぼそぼそと 応た
助けて 心の中で思ってたり するもん
ただ 簡単に 他人に 頼っている
そんな人を 見ると つい許せない
頼らないで 生きるって 大変だけど
簡単に 頼りたくない

安易に頼らない それは「自由」だから
自由が好き 自由を奪われると 何もできない 
頼ることは 自分を 不自由にするから

そうだね 人の肩を 借りたら
その人の ペースでしか 動けなくなる
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夕日に向かって「バカヤロー」と 叫んでも 
空しいのは 夕日は 自分のことなんか 
気にかけて いないから

本当に 叫びたかったのは
「バカヤロー」じゃ ないかもしれない
自分が 何を 吐き出したいのかも
よく わからない

本当に 吐き出したかったのは
「さみしい」という 小さな声 
吐き出すのも 簡単じゃ ない

誰しも 不快を避ける 権利がある
不快を 避けるだけになって しまうと
人は 孤立する

他人と 自分は 異なる存在
必ず 不快なところが あるもの
だから 不快と向き合わずに
他者と深い関係を 築く事は 出来ない

あらゆる人と
深い関係を築く必要は ない
付き合いを 大切にしたい 人とは
深い関係が あったほうが いい
そのとき 不快な思いを 生ずるが
互いに 傷つけ合うプロセスを 
避けて 深い関係には なれない

大切にしたい人と 一緒にいて 
不快な思いを する時に 
その人と 深く接触している はず 

「不快な共感」は「深い共感」への 入り口
「共感」とは 互いに傷つけ合う なかで
それでも 相手を理解していく タフな営み

ビール缶を 持ち上げた
自分が 思っていた重量は なく
空足を踏むように 拳が 空を泳いだ
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おい! アレックス いい女 
肩を 軽く揺すり 目覚めさせる
長い雑談で 退屈したろ 悪かったな 
聞かされる ほうは 
たまったもんじゃ なかったろ

よだれ ティシュで ぬぐつてあげる
アレックスが 上目遣いに ニヤッと 笑った
え!  西の魔女 ドリチェーナ? 生き返った 
まさか 自分は その笑いを 受けていた



 

立ち上がって 外に出た 
5時 薄明かりの街 東から白々してくる気配 
少し肌寒い空気が 酔いを 覚醒させる
夜明けの月は 居残りのように ぼやける
遠く 近く 賛美歌が 風に乗って聞こえる
早朝ミサか・・ 
『All I Want For Christmas Is You』

アレックスが 身を寄せてくる
その重みを 支えられず たたらを踏んだ
近付いてくる タクシーに 手を上げた

一日の始まり 生活の音を 街が立て始めていた

おい! アレックス ワイン どうした

アイナ コ!・・  運転手さん マックに 戻って

アレックス 照れ隠しに 顔を染め
自分の首に 腕を巻き付けて
キャツキャ 笑い転げていた

パーティーは これからだもんね

ブラを捨てて 旅に出るか  二人で・・



 

「不快な共感」から「深い共感」へ
傷つけ合うことで 生まれるもの
次号につづく

御意見・お問合せ konobukonobu2000@yahoo.co.jp
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