夕の空 (朱音の空想想像小説) -176ページ目

『赤炎』 4ノ1

4.


その日、レイディンは手持ちの金銭で色々と食材を買いあさりました。

特に日持ちのするものを中心に。
自分はすぐにいなくなるから、せめて親切にしてくれたアサリーへの感謝の印へというレイディンの心の現れです。

その買い物の最中、あまり穏やかではない噂を耳に挟んだレイディンでした。


「近頃、若い男ばかりを襲っていた大男の通り魔が姿を見せないそうだ」
「万が一の事がある、あまり遅くに裏小路をとおるなよ」
「憲兵達も手を拱いているって噂だぞ」

レイディンは果物屋のおばさんに声を掛けます。

「そのリンゴ、一籠ちょうだい」
「あら、あんた、この辺りでは見ない顔だねぇ」

「うん、最近越してきたんだ。ねぇ、みんなが 噂してる通り魔ってなに?」

果物屋のおばさんはレイディンにおまけの品を袋に詰めながら苦笑しました。

「え、悪いよこんなに」

「いいんだよ。これからご贔屓になってくれれば」
「……ありがと」

「通り魔っていうのはねぇ、最近、ここら辺の下町に現れた怪人なのさ」

おばさんの表情が曇ります。

「怪人……?」
「あぁ、大の男の首根っこを一ひねりで殺ししまう。あれはホントに人間業じゃないよ」

おばさんの悲痛な表情がレイディンに忘れられない影を落としました。

そんなモノが居たとしたら……それは魔族の仕業……か。
男の首を一ひねりで殺せる魔族……その正体はというと……なんだ?。

考えろ。
必死でレイディンは記憶を探ります。

幼い頃から、魔族全般に関する知識はシェイヴィアから受けていました。

でも、それでも、レイディンの記憶に残っているのは、レイディン自信のモノであって、≪八将≫である≪赤炎の戦士≫の記憶は蘇りません。

自分の中で今は息を潜めている≪赤炎の戦士≫、その意識と記憶。

その事を考えるだけで、少し体温が上昇するのを感じます。

レイディンは、永い間、聖戦の度に≪赤炎の戦士≫を送り出していた一族の唯一の生き残りだと、シェイヴィアに聞かされていました。
そして、レイディンは、ハーフなのです。

父親は正体の知れない黒髪黒眼の男。レイディンは父親の地を濃く継いでいるようでした。

だから、すんなり≪赤炎の戦士≫の力を受け入れる事が出来ないでいるのです。

「……くそ」

アサリーの家の玄関を背に、買ってきた食材を紙袋からぶちまけてズルズルと床に這いました。
高熱が、体内にこもっている気がします。

しばらくは無いと思っていた発作の前兆でした。

しかし、レイディンはそれをやり過ごそうと浅い息を繰り返しながら、意識を内側から外に向けました。

散らかった食材をかき集めてキッチンに運びます。
内面を見つめると、圧倒的な高熱に襲われそうで怖いのです。


食材をキッチンに運び込むと、レイディンは手際よく夕飯の支度にかかりました。




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餌付けしようとしている。
わたしの話には、料理できる男が多い。w



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