『赤炎』 エピローグ
E.
業火を切り裂き『吸魂姫』は迫り、気がつけばアサリーの顔をした魔性の黒に金色の瞳がにやりと笑って居るようにレイディンには見えました。
黒く染まった爪先を振るいます。
それを避けきれず、レイディンの左肩に爪が食い込みました。
「ちっ、何してやがる!体のこなしが遅いっ」
レイディンの口から≪赤炎の戦士≫の言葉が奔り、炎が壁となって『吸魂姫』を押しやります。
左の肩口にも、炎が宿り、徐々に傷口が癒えてゆきました。
「剣がねぇってのは、戦い辛いもんだな」
≪赤炎の戦士≫は舌を打ちます。
「人の口で勝手にしゃべんな、気持ち悪い!」
レイディンが怒気をたぎらせ、再び炎の壁を突き破って迫ってきた『吸魂姫』に闇色の炎を放ちました。
黒炎は『吸魂姫』の爪を焼き滅ぼします。
「貴様、よくも!」
「おいっ、お前っ」
『吸魂姫』と≪赤炎の戦士≫の言葉が重なりました。
「何の力だ、そりゃ」
「は!?」
「だからその黒い炎!!」
≪赤炎の戦士≫とレイディンが争っている間に、『吸魂姫』が切り込みます。
右手が使えなければ左手でとでも言うように、その爪は長く黒く伸びていました。
「我の体に傷をつけおったな、小僧」
「……く、口調、変わってんし」
レイディンが体を仰け反らせると、その口から≪赤炎の戦士≫の面白そうな声がこぼれます。
「コイツ、本体は死神の鎌を持ってんだぜ」
その鎌は、魔界に封じられているようです。
「こっちに剣がないのと、コレで相子だな。助かったぜ」
「ていうか、お前の体じゃないだろ!アサリーを返せよ!」
レイディンが『吸魂姫』を睨みます。
その瞳は漆黒の中に紅蓮を抱いて、強烈な炎を生み出そうとしていました。
「お前もあきらめの悪いガキだな、言ったろ。もう手遅れだって」
「この体は我の物。生まれる前から魂を食らい乗っ取り母親の腹を突き破って生まれ出てきたのだからな」
金の瞳が、炎を受けて朱金に輝きます。
レイディンは愕然としました。
アサリーに疑念を抱いたのはほんの一日前です。
それまで、彼女から魔性の気配は欠片ほども感じられなかったと言うのに。
「こいつは、そう言うヤツだ。そうやって【時守】の眼からさえ、時に逃れる」
「……分かった」
低く響いたレイディンの一言で、炎の流れが変わりました。
紅蓮の炎が『吸魂姫』の周囲を取り囲み、漆黒の炎がその中で『吸魂姫』を襲います。
≪赤炎の戦士≫が驚愕して見守る中、業火の中から『吸魂姫』の最期の悲鳴が小さく聞こえました。
レイディンは消し炭すら残らなかった、焦げた路地を見下ろしました。
その体を操っているのは≪赤炎の戦士≫です。
レイディンの意識は、力を使い切ったのか、眠るように≪赤炎の戦士≫の手の中に落ちてゆきました。
「……このガキ、俺と≪弓使い(結界師)≫二人がかりでやる事を、二種類の炎を使って一人でやりやがった」
赤炎で結界を、黒炎で攻撃を。
「漆黒の炎の使い手……どっかで聞いた事があるんだがな」
レイディンが≪赤炎の戦士≫の力を受け入れるのに時間がかかっているのは、その事が原因かも知れませんでした。
そして、その問題の根源は、正体の知れないレイディンの父親でしょう。
漆黒の瞳と髪、そして炎の使い手……。
≪赤炎の戦士≫は少し過去の記憶に手を伸ばしかけましたが、ざわついた足音を耳にして、その場から消えました。
デルモアの街を眼下に見下ろしながら、≪赤炎の戦士≫は闇を孕んだ深紅の髪を風になびかせました。
【時守】への報告が必要でしたが、会いに行く気分にはなりません。
「とりあえず、完全にコイツが俺を受け入れるまでは、消えるか」
≪赤炎の戦士≫の力は一つの魂でもあります。
一つの体に二つの魂の存在は認められず、可能だったとしても、非効率的でした。
今まで気づかなかった黒炎の存在も気になります。
赤炎の力を使うと、時折今回の事件の発端のように、高熱を出して倒れていたのは、赤炎が、レイディン本体に内在していた黒炎を刺激して、呼び起こしかけていたからだとしたら……。
「ま、どうでもいいけどな」
≪赤炎の戦士≫は毒づきました。
「要はコイツが使い物になりさえすりゃ、誰も文句言わねぇだろ」
そしてそれきり、しばらくの間≪赤炎の戦士≫の気配は、人間界から消え失せたのです。
end.
********************************************************
書き終わって、自己満足。
でも、これでエピローグってくくりは間違ってる。
うん。分かってるんだ。
でも、6.作るほど話を長くしたくなかったんだ。


↑ ↑ ↑ ↑
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業火を切り裂き『吸魂姫』は迫り、気がつけばアサリーの顔をした魔性の黒に金色の瞳がにやりと笑って居るようにレイディンには見えました。
黒く染まった爪先を振るいます。
それを避けきれず、レイディンの左肩に爪が食い込みました。
「ちっ、何してやがる!体のこなしが遅いっ」
レイディンの口から≪赤炎の戦士≫の言葉が奔り、炎が壁となって『吸魂姫』を押しやります。
左の肩口にも、炎が宿り、徐々に傷口が癒えてゆきました。
「剣がねぇってのは、戦い辛いもんだな」
≪赤炎の戦士≫は舌を打ちます。
「人の口で勝手にしゃべんな、気持ち悪い!」
レイディンが怒気をたぎらせ、再び炎の壁を突き破って迫ってきた『吸魂姫』に闇色の炎を放ちました。
黒炎は『吸魂姫』の爪を焼き滅ぼします。
「貴様、よくも!」
「おいっ、お前っ」
『吸魂姫』と≪赤炎の戦士≫の言葉が重なりました。
「何の力だ、そりゃ」
「は!?」
「だからその黒い炎!!」
≪赤炎の戦士≫とレイディンが争っている間に、『吸魂姫』が切り込みます。
右手が使えなければ左手でとでも言うように、その爪は長く黒く伸びていました。
「我の体に傷をつけおったな、小僧」
「……く、口調、変わってんし」
レイディンが体を仰け反らせると、その口から≪赤炎の戦士≫の面白そうな声がこぼれます。
「コイツ、本体は死神の鎌を持ってんだぜ」
その鎌は、魔界に封じられているようです。
「こっちに剣がないのと、コレで相子だな。助かったぜ」
「ていうか、お前の体じゃないだろ!アサリーを返せよ!」
レイディンが『吸魂姫』を睨みます。
その瞳は漆黒の中に紅蓮を抱いて、強烈な炎を生み出そうとしていました。
「お前もあきらめの悪いガキだな、言ったろ。もう手遅れだって」
「この体は我の物。生まれる前から魂を食らい乗っ取り母親の腹を突き破って生まれ出てきたのだからな」
金の瞳が、炎を受けて朱金に輝きます。
レイディンは愕然としました。
アサリーに疑念を抱いたのはほんの一日前です。
それまで、彼女から魔性の気配は欠片ほども感じられなかったと言うのに。
「こいつは、そう言うヤツだ。そうやって【時守】の眼からさえ、時に逃れる」
「……分かった」
低く響いたレイディンの一言で、炎の流れが変わりました。
紅蓮の炎が『吸魂姫』の周囲を取り囲み、漆黒の炎がその中で『吸魂姫』を襲います。
≪赤炎の戦士≫が驚愕して見守る中、業火の中から『吸魂姫』の最期の悲鳴が小さく聞こえました。
レイディンは消し炭すら残らなかった、焦げた路地を見下ろしました。
その体を操っているのは≪赤炎の戦士≫です。
レイディンの意識は、力を使い切ったのか、眠るように≪赤炎の戦士≫の手の中に落ちてゆきました。
「……このガキ、俺と≪弓使い(結界師)≫二人がかりでやる事を、二種類の炎を使って一人でやりやがった」
赤炎で結界を、黒炎で攻撃を。
「漆黒の炎の使い手……どっかで聞いた事があるんだがな」
レイディンが≪赤炎の戦士≫の力を受け入れるのに時間がかかっているのは、その事が原因かも知れませんでした。
そして、その問題の根源は、正体の知れないレイディンの父親でしょう。
漆黒の瞳と髪、そして炎の使い手……。
≪赤炎の戦士≫は少し過去の記憶に手を伸ばしかけましたが、ざわついた足音を耳にして、その場から消えました。
デルモアの街を眼下に見下ろしながら、≪赤炎の戦士≫は闇を孕んだ深紅の髪を風になびかせました。
【時守】への報告が必要でしたが、会いに行く気分にはなりません。
「とりあえず、完全にコイツが俺を受け入れるまでは、消えるか」
≪赤炎の戦士≫の力は一つの魂でもあります。
一つの体に二つの魂の存在は認められず、可能だったとしても、非効率的でした。
今まで気づかなかった黒炎の存在も気になります。
赤炎の力を使うと、時折今回の事件の発端のように、高熱を出して倒れていたのは、赤炎が、レイディン本体に内在していた黒炎を刺激して、呼び起こしかけていたからだとしたら……。
「ま、どうでもいいけどな」
≪赤炎の戦士≫は毒づきました。
「要はコイツが使い物になりさえすりゃ、誰も文句言わねぇだろ」
そしてそれきり、しばらくの間≪赤炎の戦士≫の気配は、人間界から消え失せたのです。
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書き終わって、自己満足。
でも、これでエピローグってくくりは間違ってる。
うん。分かってるんだ。
でも、6.作るほど話を長くしたくなかったんだ。

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