ささやかな喜び | 「はなぶさ」に集まる仲間たち

ささやかな喜び

撮影行に出かけると、希少価値的ネタ列車が突然現れて運良くカメラに収められたときもあれば、撮影の準備ができずに眺めるだけで終わってしまうなど、こうした想定外の出会いに一喜一憂した経験をお持ちの方も多いのではないかと思います。



最近、1986年2月に出かけたときの北海道鉄のリバーサルをスキャンしていたら、訪れた先でたまたま知り得たネタ列車情報に「一喜」したときの画像が見つかったので、当時のエピソードを披露します。


カネはないけど時間はたっぷりある学生時代の長~い春休み、家からストレートに北海道へ向かうのはもったいないので、上野から乗車した急行「八甲田」を未明の北上駅で下車し、始発の北上線で錦秋湖の名撮影地を目指すことにしました。

早朝の陸中大石駅(あえて当時の駅名を記します)に降り立ち、外が明るくなるまで待合室で暇つぶしに駅務室を覗いてみると(←怪しい行為?)、連絡板に何やら臨時列車運転のチョーク書きが見えました。それによると、自分の乗ってきた列車を追うように正体不明の列車が近付いて来るようです。「試9227」と書かれている列車番号から、客車であることは間違いないようだが試運転とは??とにかく撮影するために駅近くの鉄橋まで移動し、列車が来る方向にカメラを向けてスタンバイ。そしてその正体は・・・ ↓あ、なるほどねー。

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当時DD51重連運用で注目を浴びていた函館本線の客車急行「ニセコ」は、減車に伴い重連解消の噂がささやかれるようになりました。今のうちに重連編成を撮影しておこうと思い、有名撮影地以外にも撮れるところはないのかと、なぜか蘭島で下車して線路沿いに歩いてみるもののやはり無謀な考えであったことに屈し、天候も良くないので駅に戻って跨線橋から軟弱鉄を行うことにしました。

待合室でぼ~っとしているのも手持無沙汰なので、駅員さんにとんでもないお願い。

「すみません、臨時列車の情報を知りたいので、○○報見せてもらえませんか?」

すんなりと快くお借りすることができ、目を皿のようにしてネタ探しをしていたら駅員さん曰く、「きょうのニセコにマークが付くよ」  ええっ、!?

やがて接近時刻。カーブの向こうからDD重連の先頭にHMを従えた102レが見えました。どうせなら、もっとましな場所で撮ればいいのに、ねぇ。

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HMの装着は、まさに予想外のニュースでした。話によると、ほかにも客車急行「天北」、「宗谷」にも期日、区間限定でHMが付けられるよう。「天北」は日程が合わず撮影できませんでしたが、「宗谷」は士別駅付近の高架橋から雪晴れの中を進むシーンをゲットできました。いろいろ教えていただいた蘭島駅の駅員様、感謝しています。

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当時は希少価値列車との偶然の出合いにささやかな喜びを感じたものです。特に泊りがけで遠征したときはなおさらのこと。ところが、今や情報化社会であるが故、あらゆる手段でネタが容易に入手できるようになると、「撮影出来て当たり前/知らないほうが悪いのだ」、そんな風潮が浸透してしまいそうで、実に嘆かわしいことです。機密保持等が強化され、徐々に情報が得られ難くなる傾向にありますが、情報のやり取り以前に、いつの時代でもやはり基本は人と人との付き合い・信頼であると信じてやみません。(出札掛)

PS・北海道客車急行のHMについて後で調べてみると、R○E○が絡んだ企画だったようですね。