【旅話-1】冬の欧州で天気快晴・・・しかし・・・ | 「はなぶさ」に集まる仲間たち

【旅話-1】冬の欧州で天気快晴・・・しかし・・・

【ご注意】以下の文章は海外物であることに加え、個人の備忘録的色彩が強く、かなり長めとなっておりますので、興味のない方はご覧にならないことをお薦めします。m (_ _)m



1月14日  NGO 8:20-NH338-NRT 9:25
       NRT 12:50-NH207-MUC 17:05
       ミュンヘン空港駅-S8-ミュンヘン中央駅
1月15日  ミュンヘン中央駅 7:17-EC196-ザンクト・ガレン 10:41
       ザンクト・ガレン 11:48-ICN1524-チューリヒ中央駅 12:53
       チューリヒ中央駅 13:30頃-Sバーン-シュタデルホーヘン 13:33頃
       シュタデルホーヘン 17:30頃-Sバーン-チューリヒ中央駅 17:33頃

       チューリヒ中央駅 18:16-EC197-ミュンヘン中央駅 22:45


 1月にヨーロッパに行って来た。ヨーロッパには何度となく行っているが、冬の時期は初めてである。この時期のヨーロッパは、寒いのはともかく、日照時間が短い上に、天候が悪くて昼でも夕方のような暗さという。写真を撮影するのに、こんな不適切な時期はない。多少、航空運賃が安くても、割にあわないと思っていた。


 こんな時期に欧州に行くことになったのは、ひとえに原発事故が理由である。


 鉄道と並ぶ筆者のもうひとつの趣味は、オペラである。これまでも、撮影に併せてスケジュールを組んで、海外のオペラハウスを訪ねてきた。その数は、両手の指ではもはや足りない。その筆者が楽しみにしていたのが、2011年の来日公演であったが、聴きたかった歌手たちの何人かが、原発事故を理由に来日を中止してしまったのである。欧州では、チェルノブイリ事故以来、原発事故には敏感になっており、来日中止はやむをえないとは思うものの、今が旬の歌手たちの妙技を聴くために少なからぬ金額のチケットを買って1年前から楽しみにしていただけに、多いに落胆したのはいうまでもない。中でも期待度満点だったのが、メトロポリタン・オペラ(米)のヴェルディ「ドン・カルロ」。もう、これ以上、何を期待する、というメンバーの豪華さだけに配役の変更は残念でならなかった。鉄道的に言うならば、C6120、D51498、C571、C57180、EF5861のそろい踏みと考えて貰っても、当たらずとも遠からず、である。


 しかし、来日を中止した歌手が出演し、まったく遜色がないメンバーによる公演が1月にミュンヘンで行われることがわかった。さらに情報を収集するなかで、同時期にチューリヒとパリで、これまた見逃せない公演があることに気が付いた。行程をうまく組めば、1週間で3つのオペラ、それも世界的に話題の公演を見ることができる。


 もう、これは行くしかない。コマッタコトダ(^^;)
 それがわかったときに、なんとか休みをとるべく、根回しを開始していたのであった。


「はなぶさ」に集まる仲間たち


 海外に行っても、基本的には天井桟敷である。そこしかいけない。(^^;)


 こんな調子では、なかなか本題に行かないので、話は一気にミュンヘンに飛ぶ。着いた日は、ミュンヘンのバイエルン州立歌劇場の合唱として活躍されているKさんと10年振りにお会いして、駅から5分ほどのビアホール、Augustiner Kellerに行って、楽しい会食をする。メニューを選んで頂き、本日のランチということで、鹿肉(ジビエである!)をメインとした料理にビールで乾杯である。話も弾んで美味しかったこと。
 

 その翌日は、チューリヒ歌劇場でオペラをみるため、チューリヒまで日帰りで往復する。国境を越えて日帰りでスイスに行くなどとは大事のように思われるかもしれないが、ミュンヘンとチューリヒの間は列車で4時間ほど。感覚的には、名古屋と富山の間を往復するようなものである。通常、オペラの公演は夜に行われるが、この日は日曜で午後2時から5時までの公演であったし、ユーレイルパスがあればどこでも行けるので、こうした荒唐無稽の行程も容易にできてしまう。


 ミュンヘンとチューリヒを結ぶルートは、以前に一度乗っているし、確か検査掛さんも乗られたことがあったはずだが、クック時刻表の国際連絡のページでは経路を簡略化しているため、列車によって2つのルートがあることは知らなかった。メミンゲンとオーストリア国境に近い南側のケンプテンを経由するルートで、4往復あるユーロシティ(国際列車)の内、朝のチューリヒ行きと夜のミュンヘン行きが南側のケンプテン経由のルートで走る。


 朝7時17分、チューリヒ行きのユーロシティEC196はミュンヘン発車。あたりはまだ真っ暗であるが、7時半も過ぎるとようやく明るくなってくる。天気は良さそうだ。
8時半頃、陽が昇って雪原を赤く染める。南側にはオーストリア国境の山々であろうか、快晴の青空の下、パノラマのように山と湖水が広がり、実に美しい。昨夜、雪が降ったのだろうか。木の枝先には樹氷のように雪が着いて、それが朝日にキラキラと反射して、雪の精が降りてきたかのようだ。


「はなぶさ」に集まる仲間たち


 いやー、冬のヨーロッパも実に良いものだ。と、この時は掛け値なしに思ったものだが、その後、これが如何に甘い考えであったかを思い知ることになる。


 このままチューリヒまで行っても良いのであるが、少々、早いことからスイスに入った直後のザンクト・ガレンで下車する。ここから出ているアッペンツェル鉄道を見るためである。現在のアッペンツェル鉄道は、この付近の近郊鉄道を合併して2006年に誕生したようであるが、ザンクト・ガレンの駅前からはアッペンツェルに行く旧アッペンツェル鉄道線とトローゲンに行く旧トローゲン鉄道線が出ている。興味があるのは、旧トローゲナー鉄道線の方で、新式の低床車輌が入ったことからLRTに分類している洋書もあるので、LRTなのかどうか、それを自分の目で確認することが目的である。


 ザンクト・ガレンを降りると駅前にバスターミナルがあり、そこを貫くように単線の線路が伸びている。線路に沿って歩くと、右手にアッペンツェル線とトローゲン線の駅舎とホームがある。専用の駅舎とホームがあるし、運行は30分間隔で、どうやらLRTというよりも鉄道に近い運行形態のようだ。


「はなぶさ」に集まる仲間たち


 所期の目的は果たしたので、列車を撮影しようと思うが、これがうまくいかない。太陽の位置が低く、しかも快晴のため、影がきつくて、どうやっても影が入ったり、コントラストがついてしまうのである。この時期、障害物のないところで列車写真を撮るなら最高の条件なのだろうが、都市内で路面電車を撮影しようと思うとかなり場所を選ばなければならない、ということがわかる。


「はなぶさ」に集まる仲間たち

 これは旧トローゲン鉄道線の低床車。


 ザンクト・ガレンからチューリヒまでは、スイス国鉄のインターシティで約1時間。列車はきれいに整備されているし、各列車に食堂車もついていて、快適である。
 チューリヒについて、駅前のバーンホフ通りを見ると、うまい具合に陽が当たっている。寸暇の時間を惜しんで市電を撮影する。ご存じのようにスイスはユーロを導入していない。何かあるといけないので、2000円を両替して、水を買う。構内売店のミネラルウォーターが、なんと4.3スイスフラン(約350円)。スイスの物価は高いと聞いていたが、目が飛び出そうな値段である。


「はなぶさ」に集まる仲間たち


 ところで、わざわざチューリヒまで聴きに行ったオペラは、ロッシーニの「オリー伯爵」。ロッシーニといえば、「セビリアの理髪師」ばかりが有名(というか、日本の教育のせいでイタリア系はドイツ系に比べて格下に見られているし、ロッシーニも早書きで粗製濫造・・・事実そうではあるけれど・・・に思われているが、聴けば聴くほどその良さがわかる)であり、かなりのクラシック通でも多分、この曲をしらず、かくいう私も見るのは初めてであったが、これが実に面白くて、音楽も楽しく、聴いていてウキウキしてくる。好色のオリー伯爵が、男性が戦場にいって女性ばかりの侯爵夫人邸に夜這いに行くが、小姓に邪魔されて思いが遂げられない、という単純な話であるが、歌手と演出、さらに劇場が良ければ、まさに熟成したワインを飲むかのような(飲んで味がわかるかどうか、不明だが)、至福の一時である。


 関心のある方は、こちらを見てね。印象は同じです。

 http://satoshiopera.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-7993.html


 オペラは午後5時に終了。オペラハウスの前は、郊外から市内線に乗り入れてくるフォルヒバーンのシュタデルホーヘンのターミナルとなっているし、少し北に歩けば市電路線が重なるベルビューのターミナルもある。もう陽は沈んで、西側にほのかに明かりが残るだけであるが、さすがにデジカメを使えば撮影が可能である。


「はなぶさ」に集まる仲間たち


 フォルヒバーンの車輌は、スイス・スタットラーの製造の低床車で、全長は60mくらいになるだろう。こんなのが市内を走るのだから、呆れてしまう。


「はなぶさ」に集まる仲間たち


 今回はユーレイルパスがあるので、路面電車に乗らず、シュタデルホーヘンからSバーン(国鉄近郊線)で中央駅に。まだ、乗車の列車まで時間があるので、再度、バーンホフ通りで撮影。まさにデジカメ様々である。フィルムカメラなら、撮影できずに欲求不満になってしまうだろう。


「はなぶさ」に集まる仲間たち


 スイスフランの処分を兼ねて、駅売店で夕食を購入する。500mlのカンビールが6.6スイスフラン(約550円)、定番のソーセージが6.9スイスフラン(約600円)で、昼に両替した2000円がなくなってしまった。後に、乗車したユーロシティの食堂車に行ったが、そこでのビールは6スイスフラン(4.7ユーロ、約500円)だったので、駅売りのビールが食堂車よりも高かったことになる。

 1等車でオペラの余韻を味わいながら、ぐっすり休んで、22時45分、ミュンヘン着。明日は、飛行機でスペインのビルバオに移動である。(ちなみに103形の写真は、この時に撮影しました)(駅長)