やエビ
の殻はナカナカ硬いようで、甲殻(こうかく)類というよりも狡猾(こうかつ)類といった感じです(分かる人だけ笑ってください)。で、助力を乞うにあたって「弁護士職務基本規程」(規定ではないので注意)を調べる機会があり、また、先週の「民法(不法行為・不当利得法)」の小テスト対策で択一の問題集を解いていたところ、
「判例の趣旨に照らせば、弁護士法58条1項に基づく懲戒請求は不法行為を構成することがある。」
という肢を発見
正解は「〇」で、法律雑誌「ジュリスト」の「重要判例解説」にも掲載された、最判平成19年4月24日民集61-3-1102がモトネタです。
詳細は最高裁HPにある「判例検索」でも読めるのでそちらに任せるとして、判旨は大要、
「弁護士法58条1項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において、請求者が、そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには、違法な懲戒請求として不法行為を構成する。」
とした全員一致の判決です(ただし補足意見があります)。
余談ながら、不法行為の重要な論点である「被害者側の過失」についても、同じ日の同じ小法廷(第三)で出されています(被害車両の同乗者である内妻が負傷した場合の過失相殺の可否について、婚姻関係にある場合と同様に、内縁関係であっても、運転者である内夫の過失を「被害者側の過失」として斟酌できるとした)。
閑話休題。
で、敗訴当事者にしてみれば、勝訴した反対当事者の代理人弁護士は「悪魔
の使徒」として憎んでも余りあるところですが、その気持ちだけで懲戒請求をすると逆に賠償請求される場合がありますヨ、という警鐘を鳴らした判決です。所管官庁が処分する他の士業(医師でさえ処分は厚労省が行います)とは違って、弁護士会自身による懲戒制度は、弁護士に対する国民の信頼と弁護士自治を担保する重要な機能ですから、事由が明確であれば遠慮なく請求すべきです。
しかし、濫訴と同様に腹いせやゲーム感覚だけで懲戒を申立て、挙げ句の果てに却下のみならず賠償命令ともとなれば、現在進行中や再燃した争訟において、
「理由もなく、あるいは言いがかりにも等しい浅薄な理由で濫訴や懲戒請求を繰り返す者の主張に説得力はないし、(不法行為として)賠償を命じられるような者が法令や合意を遵守するとはとても思えない。」
とヤラれるのがオチ(ワタシが弁護士ならばそう主張します)なので慎重に対処していただきたい今日この頃です。