切り札は一度だけ | そうではあるけれど、上を向いて
 正月は、弁護士でもある中嶋博行のリーガルサスペンス「新・検察捜査」(講談社文庫)を読んでいます(「」ということは「検察捜査」も1994年に講談社から上梓されており江戸川乱歩賞を受賞しています)。

 今回の記事タイトルもサスペンス小説みたいですが、昨日の記事←クリックについて高弟「ころきり」教授から、

 「戦術的に『リコンに応じる』カードを切るタイミングはケースバイケースかと。」

 とご指摘をいただきました。

 全く同感。

 離婚は不可避であるとしても1回しかできないのですから、応諾の意思表示をいつするかは面会交流争訟のキモであることは間違いありません。

 「それじゃ人質交渉じゃないか

 と考える向きもありますが、民法766条1項は場合によっては人質交渉になることを明言しています。

 もちろん、ダイレクトには書いてありませんが、養育費と面会交流は離婚する夫婦の協議事項であり、子を伴った不同意別居状態では、「監護の継続性原則」と併せ、その実質において人質交渉にならざるを得ません。

 誤解のないように言っておきますが、改正前の同条には面会交流のメの字もなかったことを考えれば、明文化されただけでも大きな進歩だと考えています。

 是非はともかく現状がそうである以上、特に離婚訴訟の附帯処分として扱う場合は、離婚と面会交流、あるいは養育費と面会交流は協議事項という名の取引材料なのです。

 ワタシの場合、離婚訴訟と面会交流審判は別々の裁判所(前者は事物管轄元妻さんの住所地、後者は応訴管轄ワタシの住所地)で行われ、面会交流の方が先に決着(面会交流の付調停合意は別居から1年10か月後、和解による離婚成立は別居から3年後)したので、結果的に人質交渉にはなりませんでした。

 ですから、争訟の状況(併合か分離か、それぞれの証拠関係等)に応じて判断は慎重にしていただきたい、としか言いようのない今日この頃です。