ついにやってしまった。。。

そんな感じの遭難体験山行になってしまった。


恥を晒す事になるが経緯と反省の2回に分けて書き留めておきたい。

悪かったと思っている点を赤 良かったと思っている点を青 幸運をで書こうと思う。


今回の山行は晩秋の品谷山・廃村八丁日帰りの予定だ。ガイドブックによると「北山を愛するハイカーに人気のコース」とのことである。晩秋の廃村の趣に思いを馳せながら自宅を6:30に出発した。車で登山口の菅原へ向かう。8:00前後に到着できると考えていたが予想以上の難路で予想以上に時間がかかり菅原に到着したのは9:00近くであった。
菅原バス停付近の空き地に車を置き朝食後、歩き始める。今回はレトロフイルム1眼AE-1Pの復活戦でもある。

EOSとAE-1Pで、極力同じ条件で撮影し、AE-1Pのクセを掴むこと、フイルムとデジタルの差を見ることも目的としている。同じ写真を2台のカメラでそれぞれ撮る・・すなわち撮影に倍の時間を必要とする。




菅原橋を渡り美しい沢に沿って林道を登っていくと尾根コース・沢コース分岐。ここは尾根コースを行く。ダンノ峠まで特に問題なし。ここから品谷山方向へ進路をとる。少し登ると境界を示すと思われるネットが現れ、これに沿って歩いていく。品谷山と佐々里峠の分岐は判りにくく、見落として佐々里峠方面へ進んでしまった。2~3分程進んだところで進行方向に山がない事から不審に感じ、地形図とコンパスで方向を確認。道が違うという結論に至り引き返すと、品谷山への分岐をあっさり見つけることが出来た。
ここからは自然林の快適な稜線を歩く事になる。歩行中は快適だったが立ち止まると肌寒さを感じた。11:50山頂到着。品谷山山頂は展望も無く、休憩するには面白みに欠けると思われた為、記念撮影のみで出発し廃村八丁へ向かう


美しい沢沿いの道を下っていく・・水が綺麗で感動した。こんな上流部なのに魚が居るのにも驚いた。写真に残したい風景が多く、なかなか前進できなかった。13:00廃村八丁到着。ここで40分程度の昼食休憩をとる。13:40下山開始、ルートはガイドブック通り刑部滝ルートを取る。ここからも美しい沢沿いの道を歩く事になる。


八丁付近


刑部滝まで二つの滝を越していくが、これもなかなか立派な滝であり、EOS・AE-1P2台のカメラで時間をかけて撮影した。

ようやく刑部滝に到着。

PM14:51であった。
ここで初めてペースが遅すぎることを認識する。刑部滝からは急な直登である、ロープを頼りに登っていくがリボンは取り付けられているものの踏み跡は消滅。登るとしたら幼木を強引に掻き分けなければならない・・「この道は違う」と判断し下る。ここから先、写真を撮影していない(そのような余裕は消えうせていた)ので正確な時刻は判らない。
下りきったところで二人組みに出会う。我々より年配のご夫婦だ。彼らは沢沿いに上っていた。我々もそれに続く。沢沿いルートには所々テープ・踏み跡があるので、それを頼りに前進。滝二つを登り、もう少し行った所でテープが忽然と消えた。4人で一旦尾根に上ってみたが道は無い。悩んでいる時間は無いので刑部滝~八丁にある分岐まで戻り、四郎五郎峠経由でいこうという事になる。この時点で16:00くらいだったと思う。来た道を引き返し四郎五郎峠に登っている最中に私がバテはじめる。足が痙攣を始め吐気を覚えた。先行していた年配二人組みPTとはここで分かれた。妻に励まされなんとか峠を通過して下りに入る。平坦地に出たときには薄暗くなってきてルートの確認が困難になってきた。しかし運良く同志社大学の施設を発見でき現在地を確定できた。この時17:30くらいだったと思われる。

ビバークするか、下山を強行するか判断を迫られる。
ここからダンノ峠まで30分。ダンノ峠~林道が60分。ただしこれは普通に歩ければの話である。間もなく完全に暗闇になる。我々はヘッドランプを持っていない。暗闇の中での行動は滑落・転倒などにより怪我を負い行動不能になる恐れがある。
ここには幸い建物があり、いざとなればガラス窓を破壊すれば内部に避難できる。水場もある・・・留まるには良い場所と言える。
この時の所持品は
服装は二人とも、下着、起毛シャツ、ダウンジャケット、レインウェア、手袋
食料はソイジョイ1本・ドーナツ・クッキー
その他としてストーブ・ボンベを2セット・マッチ1箱・トイレットペーパー1巻
ヘッドランプを持っていない事は色々な意味で悔やまれた。またツェルトやエマージェンシーシート等ビバークの負担を軽減するアイテムは購入すらしていない。
この装備であったが、無風であったこと・朝の天気予報では降水確率が30%以下だったことから、冷え込んだとしても10月の八ヶ岳テント泊と同程度と予想し、夜を越せると考えビバークを決断した。
目が利くうちに小枝を集め火を起こし、暖をとる体制を整える。葉や小枝が乾燥していたので素早く火を起こせたのは幸いだった。
時刻は18:00を少し過ぎたところ、完全に暗闇に包まれ長い夜が始まった。何という心細さだ・・・
獣の甲高い声が聞こえた。我々の気配を感じての威嚇であろうか?多分猿であろうと思ったが、その声が攻撃的に聞こえ恐怖を感じた。とにかく火を大きくする。それでも獣の声は遠ざからない。耐え切れなくなり「ゴルァ!!!!!!」こちらも腹の底から大声を上げた。それが功を奏したのか獣の声は少しずつ遠ざかり聞こえなくなった。
定期的に薪を拾いに行った。暗闇の中手探りで薪を探すのは結構難しかった。ともかく火を絶やさないように過ごしていると不思議と寒くはなかった。膝だけが少し寒かったが、この状態で焚き火さえあれば十分夜を越せる気がしていた。
他愛のない会話をしながら過ごす。昔の話が多かったような気がする。
ビバーク開始から8時間が経過しAM2:00頃になると「あと4時間ちょっとで行動可能になる」と明るい気持ちになってきた。しかし、この時、風が吹き始めたと同時に小雨が落ちてきた。「雨は降らないはずだったのに・・・」愕然としたが、薪を濡らしてはいけないと数本持って軒下へ避難した。一旦雨はやんだもののAM2:30くらいにまた降り始めた。この時から雨を避けるために軒下で過ごすことになる。焚き火を軒下付近へ移動しようとするが失敗し火を消してしまった。残った炭火と周辺の枯葉で再着火を試みるも、雨でぬれた枯葉は炎を上げない。この時は心底「まずい」と思った。ストーブを点火し最初に移動させた薪数本のうち2本を乗せて火をつける。焚き火に比べてはるかに弱い火力だが無いよりマシであった。火がついていれば僅かでも明かりがある点も心の支えになった。ストーブは2式持っていたが、この段階ではあえて1組しか使わなかった。あと3時間30分持たせなければならないがボンベ一本が何時間持つのか判らないので、一本ずつ細く長くいこうと思ったからだ。
また、このようなケースではザックを抱いていると体温保持に役立つと何かの本で読んだような気がして実践した。確かに風除けにもなり役に立った。
肩を寄せ合って体温保持に努めていたが、

・・・・AM4:00雨が雪に変わった。
雨→雪の変化は精神的にかなりのダメージだった。

ふつふつと絶望感が沸いてきたが、ここまで耐えてきた11時間という時間が我々を支えた。「あとたった2時間耐えれば良い」とお互い声を掛け励ましあいながら耐えた。


 この頃から起きているのに夢を見ている状態・・白昼夢が見えるようになる。見えるのは仕事・買い物など身近な事だった。自分が出演しているホームドラマを見ているような不思議な感じだ。夢→現実→夢→現実→夢→現実を何度も繰り返した。妻も同じ状態であり、寝ていないのに寝言を言っていた。それを聞いたときは本当にまずいと思い「起きて!寝ちゃダメだよ」体をゆすって声をかけた。逆に自分が声をかけられる事もあった。


AM4:50・・あと1時間10分である。この時積雪2~3cm・・雪降り続く。
一つ目のストーブはまだ健在だったが、ここで二つ目のストーブにも火を入れ薪を乗せる。火力が倍になったのは心強かった。絶望感が薄らいだ。


 ふと「寒い寒い」と言いながら実はビバーク開始から震えていない事に気づく。何故震えないのか判らなかったが、とにかくワザと震えてみると(当たり前のことだが)体温が上がった。妻を抱いた腕を震わせると妻も温まり自分も温まって一石二鳥だった。震えっぱなしも疲れるので20秒震えて40秒休憩・・このサイクルを繰り返した。「これを60回やれば一時間だ」と思った。「いい時間潰しにもなるな・・一石三鳥だ」空ろな頭で考える。

 やがて妻が「見て!明るくなってきた!」。頭を上げると・・周囲の風景が見えるようになっていた。AM6:00である。しかし行動を起こすにはすこし暗かったので、あと15分我慢した。


 AM6:15分行動開始・・まずお湯を沸かして飲む。自分は使用済み紙コップにラーメンの油を入れてしまっていたので味は最悪だったが、腹の底から温まった。食料は念のため少し残しておいた。

 AM6:30出発。木道を慎重に渡り東へ向かう。積雪で踏み後は全く見えなかったが視力の良い妻がテープを見つけてくれたので迷わずダンノ峠に到着した。
 積雪で昨日と様子は違っているが、見覚えのある場所である。「下山できる!」喜び・安堵・気力が沸いてくる。妻と握手した。
 ダンノ峠から前日登った尾根コースで下山。歩きながら、前日どんどん暗くなる中でこの道を歩けたのか?考える。無理であろうと思った。

 林道から国道へ渡る菅原橋。ゴールは目の前だ。
「まだ白昼夢を見ているんじゃないよね?」
二人とも同じ事を考えていた。
車に到着。やわらかいシートに座ると生還したという実感が沸いてきた。