デファクトスタンダードの戦略~業界標準を確立する業界団体モデル~ | 戦略コンサルティング日記~URBAN TRAIL DIARY~

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戦略コンサルティング業務に従事する筆者が、
日々のコンサルティング活動を通じて得た気づきや学びを書き綴ります。

あらゆる業界・製品には「ライフサイクル」と呼ばれるものが存在します。


近年、企業間の競争が激化していることもあり、ライフサイクルの進行が急速に早まっています。


現在、国内のほとんどの業界・製品はライフサイクルでいう「成熟期」、または「衰退期」に当たります。

「成長期」市場はごくわずかです。人口動態などの社会動向を鑑みれば、介護や医療マーケットの一部は成長期といえるかもしれません。

「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」と、大きく4つのサイクルがありますが、それぞれ戦い方のセオリーがあります。

今回は導入期の戦い方の中でも、セオリーとはあまりにも呼べない、強烈な戦い方をご紹介します。

その戦い方が、デファクトスタンダードを引き起こす「業界団体設立モデル」です。


まずは事例をご紹介します。

SDメモリカードといえば、ほとんどの人がご存知だと思います。SDメモリカードは、P
Cやデジカメ、ゲーム機などに差し込んで、データを外部保存するのに役立ちます。

このSDメモリカードは、“メモリカード”と呼ばれる記憶媒体の1つで、他のメモリカードである「フラッシュメモリ」や「コンパクトメモリ」、「メモリースティック」などと比べると、少し遅れた1999年に市場に登場しました。

後発参入は、あらゆる状況下において不利な戦いを強いられます。既に、関連機器であるPCやデジカメメーカーは「フラッシュメモリ」や「メモリースティック」に対応した製品を大量生産しているからです。

普通に戦っていてはこの戦況をひっくり返すことはなかなかできません。そこで、SDメモリカードを共同開発した「松下電器」「東芝」「サンディスク」の3社が共同で、SDアソシエーションという業界団体を設立しました。

業界団体設立の目的は1つ、「業界の標準化を図る」という1点のみです。

そのために彼らは、

■関連機器メーカーへ団体参画要請をした
⇒PCやデジカメメーカー等を団体に引き込む

■団体加盟社にはSDメモリカードの開発要綱を公開
⇒規格の統一化を図るとともに、新規参入企業を促進させた

■団体として大きな影響力を市場に発揮させる
⇒団体加盟社数が増えれば、影響力がどんどん大きくなる


これら3点に注力しました。

こうして、SDメモリカードは、発売当初はメモリカード類でのシェアが1%未満でしたが、5年後には70%以上にまで増やすことができました。

このように、業界団体の設立モデルは、意図的に市場へ影響力を発揮し標準化させる=デファクトスタンダードを起こすことができます。

導入期市場においては、いかに市場の制圧権を握るかが重要になります。つまり、初期から圧倒的なシェアを獲得し、かつ(代替製品に対する)参入障壁を高くするかがポイントになるのです。

業界団体設立モデルは、意図的にデファクトスタンダードを起こし、業界を制圧してしまうことが可能です。

今のマーケットを見れば、おそらく今後急速に発展・拡大が期待されるのは「ロボットマーケット」だと思われます。

ロボットメーカーの新規参入が相次ぎ、競争が激化する前に、いくつかのメーカーが業界団体を設立し、「安全基準」ないし「認証マーク」などを定めてしまえば、後発企業にとっては、少なからず障壁になります。

ロボットマーケットに、このような業界団体設立モデルの動きがそろそろ起こるのではと感じています。





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