麻雀ゲームが好きな常連客で、思い出に残っている人がいます。
彼の名はゲンさん、年齢は30代後半ぐらいで独身でした。
よくビールをおごってくれたりしましたが、そんな時はたいてい給料日で、あっという間に使い切ってしまう人でした。
たまに酒が回って饒舌になると昔の事を良く話してくれます。
「俺の友達は大会社の社長の倅でさ。一緒につるんで遊んでたんだ。ああゆう大会社の社長は金があってさ、息子にやる小遣いがね、何十万もあるんだよ。いつもそいつおごりでしょっちゅう高級なバーに行ってさ、だけど親がみんな面倒を見てくれるわけよ。」毎日楽しかったんだと懐かしそうに語ってました。
そんなゲンさんの生い立ちはかなり不幸でした。
この話は一度きりでしたが、私の覚えではこんな状況だったと思います。
親が再婚して義母とはウマが合わなかったので、学校を辞めて直ぐに働きに出てしまったそうです。
父親から離れた後、母親に会いに行ったらしいのですが、母親は既に家庭を持っていました。
そして母親から今後は逢えないと言われたそうです。

ゲンさんは中退で学歴も無いので、とりあえず小さな下請け会社の日雇いで工場の掃除をしていました。
そして仕事帰りに店に来ては、一人で麻雀ゲームやっている毎日でした。
マスターはゲーム台のところまで来て一緒にビールを飲みながら話をしたりしてました。
多分、そんなゲンさんを、放っておけなかったんでしょう。
ゲンさんはパンチパーマで強面でしたが、笑うとあどけなさが残っている無邪気な人でした。