本当は会社のYちゃんに借りた

須賀 しのぶ
帝国の娘 (前編)

について書こうと思ったのだけど、そこからサトクリフに連想が飛んでしまい、どうしても紹介したくなってこちらに変更。

ローズマリ・サトクリフの「王のしるし」

ローズマリ サトクリフ, Rosemary Sutcliff, 猪熊 葉子
王のしるし

どうしてこちらに連想が飛んだかというと、自分から望んだわけではなく、高貴な人の身代わりになる、というところからなんですが・・

サトクリフという人は、体が弱く学校に行かずに独学で学んだ人ですが、その作品はどれもとても力強く、誇りと気概に満ちています。このあたりについては自伝も出ています。

ローズマリ・サトクリフ, 猪熊 葉子
思い出の青い丘―サトクリフ自伝

舞台はほとんどがローマ軍支配下のイギリス(といっても長いですが)におかれ、主役となるのは輝かしいローマ人ではなく、ローマの人であれば傷を持つもの、そうでなければ蛮族と称されたであろう周辺民族です。

この人のテーマは、基本的には何かを背負っていて、傷ついている人間が、どうしても譲れないものを守り抜いていく過程でより成長していく、というようなことかなあ、と思います。

歴史ものとしてもかなりレベルが高く、史実に基づいて時代考証がされているようです。

世界史専攻だったにもかかわらず、恥ずかしながら、ローマ時代の辺境民族についてはまったく知らず、サトクリフの歴史ロマン(というシリーズでこれを含め、6冊出ています。どれも素晴らしい)で初めて単なる野蛮な民族などいなくて、それぞれに背負うもの、信じるものがあるんだよなあ、という当たり前のことに気がついたのでした。


どうしようもなく格好いい人物ばかりなので、読むほうもつい力が入ってしまいます。

岩波書店からでていて、一時期絶版でした。結構高い本なのでどうしようかさんざん悩んで、数年前の誕生日祝いとして購入しました。こういう本は背筋が伸びます。

訳者も猪熊葉子さんなので、とても雰囲気があります。

今は、岩波の少年文庫から「太陽の戦士」が出ているらしいので、機会があればぜひ読んでみてください。

これとアーシュラ・K・ル・グインの「ゲド戦記」が私にとってのファンタジー最高峰かなあ。