「はじめまして」


電話の向こうではたたき起こされたと思われる若い男の子の声。
いくつって言ったっけ?24とか言ってたっけ…?


「…ごめんなさいね、こんな時間に…おたくの社長かなりご機嫌だよ」


一体何をしゃべったらいいのか迷った。
そういえば昔、久しぶりに友達に電話したら、何の脈絡もなく彼氏に電話を
取り継がれたことがあって、他にもいろいろあったがその行動が引き金となりその子と連絡を
取らなくなったことがある…まあ…確か20歳くらいだったし、彼氏が物珍しいとでも思ったのか…
自慢したかったのだろうか。


福山君の行動は一貫して少し幼い。でも会社を興す人は往々にしてその傾向があるように思う。
無邪気、天真爛漫…でも山のように動かない説得力。
会話を2、3交わした後、電話を福山君に返した。


「な、すげーだろ。俺らマロのこと置いてきちゃったよ、あいつおばさんとやってたぜ、
ほんっとモテない男だよなあ…あれ?もしもし?おーい」


電話が切れたらしい。そりゃそうだろ、そんなたわごとに付き合っていられないだろ…。
ていうか…「おばさんとやってた」とか…よお言うわ。君もしようとしてたじゃないか。
長い友人であるマロくんのことも…よく言えるな…。
しかしあまりにもキレがよく、僕はなにも感じなかった。まるでかまいたちだ。


「あれー切れちゃった」


「ちがうよ、切ったの。もう夜中なんだから寝せといてあげなよ」


「待って、今ね写メ見せてあげる。ほんとにカッコいいんだから」


見せられた写真は今時の綺麗な男の子だった。




ベッドの上の彼の荷物を除けて、僕は裸のまま横になった。
僕にマッサージされた彼はうつ伏せのまま隣のベッドで寝ていた。
趣味で格闘技をやっているといっていた。どうりで形のいい筋肉が付いているわけだ。
ツインのベッドは、きっちりシングルサイズだった。
2人で寝たら狭いけど、こっちに来ないかな…そんなことを考えているうちに
いつの間にか寝てしまった。



ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ


「…福山君、電話鳴ってるよ」


「ん?ああ…メール」


ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ


「ハンターちゃん電話鳴ってるよ」


…あたしの電話か。つーか目覚ましが鳴ってた。始発で帰ろうと思ってたんだった。
福山君は明かりをつけて煙草を吸いだした。
マスカラが落ちて面白い顔になっていないかどうかバスの鏡で確認するため、ベッドから起きた。
幸いにもひどい顔じゃない。でもいいや、顔落して帰ろう。
僕は洗顔をして服を着るとベッドに座る福山君のとなりに座った。
彼の首に手を回す。


「ごめん、静かに帰ろうと思ってたのに起しちゃって」


「いや、いいんだ。そろそろ起きようと思ってたし」


「ウソだね、9時に起きればいいって昨日言ってたよ。もう帰るからもう少し寝てね」


「じゃあ…そうさせてもらおうかな…」


彼の瞳からは、昨日の熱が消えていた。言葉こそ優しいが、僕への執着が消えていた。
そうか。
そうか。
そうなんだ。


じゃあ、またね、と僕は扉から出たが、彼が見送ることは無かった。
ガチャンと部屋と通路が遮断され僕は歩きだす。…ここを、マロ君も通ったかもしれない。




僕は…取り返しのつかないことをしてしまった。



(夢は今も夢のままで 後日談へ続く)



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