「どうしたの?」


何かに驚いた様子の彼に尋ねた。


「………ウン○踏んだ気がする」


え!?
僕は携帯を出して、彼が踏んだという物体を待ち受け画面で照らした。
いや…これは違うだろ。今朝は雨が降っていた、泥団子的なものじゃないかな…。
僕と額を突き合わせウン○or泥団子を凝視して彼も呟く。


「うん…、俺もそう思うわ。あー良かった、あーびっくりした」


しかし、このあと惨劇が訪れた。煙草を吸い終わった僕等は車のエンジンをかけて
寒さに耐えきれず暖房をつけた。僕は長袖を羽織っていたが何しろ彼は半袖だったのだ。


「やべ!くせぇ!これやっぱウン○だ!」


足もとが温められてどうも香りが立ったらしい。原理としてはアロマオイルの楽しみ方だが
彼は身悶えしてドアを開けた。


「え、こっちにはにおってないよ」


「じゃあ良かったけど…こっち半端ねぇ臭え!ゴメン一回止めるわ」


彼は暖房を止めティッシュを取り出し、念入りにマットと靴底を拭き始めた。
まだ新しく、しかも純正のものではない市松柄のマットはいかにも彼らしい。


「靴底水たまりで洗ってくるわ…あー凹んだちょっと待ってて」


このあと僕は 「ウン○の話なんかしたからだよ」 と彼に責められる羽目になる。
確かにここまでの道のりの間に、僕はこんな馬鹿話をした。


「ねえねえ、草むらにあるウン○、人糞かそれとも犬とかのものか見分けられる?」


「…え、わかんねえよ…ニオイとか?」


「ふふふ…これ、実は簡単なの…
紙があるか、無いかだよ」


どういったいきさつでこんな話をしたのか忘れたが…確かにした。
凹んだと言いつつ、ニオイをきにしつつ…それでも彼の麗しっぷりは変わることがなく
ウン○を懸命に拭く彼の顔をウットリと眺めた。




いつもまにか1時を回ってしまい、「じゃあ送るよ」 と彼が車を走らせた。


「どこまで送ればいい?」


僕は自分の家の近くを告げたが、少し考えた。彼は一体、どうして僕に会いたいと
思ったのだろう。こうして何もなく送られるのもどこか理不尽だ。
僕はここ一番の大仕掛けをすることにした…しかしそれは考えずして頭に浮かんだことだ。


「…近くに公園があってね、そこで下してくれてもいいよ」


「なんで?家まで送るよ」


「いやね…今日君がどんなつもりで会ってくれたのかは知らないよ?でもさ、もしなんなら…
公園なら人気も少ないし、キスくらいは出来るんじゃないかと思ってね」


こんな言葉がスラスラ出てくる自分が意外だった。
だって、この人を前にして…僕はほんとに彼を鑑賞用としか考えないようにしていたのに。
それとも、結局彼が他の女性と遊んでいたことでタガが緩んだのだろうか。
なんて馬鹿なことを…何言ってるんだ。


「あはは、冗談だよ、家の前まで送って」


彼はしばしの沈黙を破り、落ち着いた声で言った。


「じゃあ、公園に行こう」


「いいって、ウチで下して」


「いや、公園行こう」


…ウソでしょ?え、マジすか?
もう一度彼の横顔を盗み見た。そこにはもう少年のあどけなさを残す彼は居ない。
懐の深い男の顔をした彼が居た。



(アイドル現る 4へ続く)




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