その日のハプバーはとても混んでいてカウンターは満席だった。
…いや、満席と思われたカウンターの中にポツンとひとつだけ空きがある。
そうか。この隣か。


僕はその席に案内された。
両脇とも男性だが、ハプバー店員花織が以前彼の容姿について語った
内容を考えると、どうやら右隣の男性が花織の彼らしい。


「背は低くてすごく華奢な身体。眼は二重でトロンとした顔だよ。
ハンターちゃん好みだといいけど」


特に好みではなかった。逆に…安心…。
年齢は確か20代後半で花織より年上だったはずだ。もう少し老けて見えた。
スーツ姿のせいかもしれない。


「どうもはじめまして。Bハンターです。よろしくお願いします」


品よく笑顔を添えて挨拶をした。
どっちかつうと今日は仕事の気分だ。


彼は、花織が僕にこんなことを頼んでいるとは知らない。
あくまで普通の客として来店し、僕らは普通の客同士として会った形になっている。


しかし実際は、
僕は「これから彼を落としてヤルぞ」という気合に溢れ、

彼は彼で、「これがふぇらガモ講座のハンターちゃんか…」と
に抱えているわけだ。
そんな胡散臭い僕らは、しれっと会話を始める。


「今日初めてなんですか?」


「はい、話だけは聞いてたんですが、一度来てみたいと思ってたんです」


花織から聞いてるわけね。そりゃあさぞかし刺激的だろう。


「楽しいですよ。下ネタがいけるだけ話の幅も広いですから、お話だけでもね」


彼は僕のことを花織に聞いて知ってはいるけれど、口説かれるとまでは
思っていない。
ハプニングバーにスーツで訪れ、大人しい感じの事務方タイプにはいきなり
ガツガツしないほうがいい。相手のテンションが上がってくるのを待とう。



花織の彼は物静かで話が続かない。ちょっと左側の男性を見ると…。
あれ、こいつ見たことあるな。


「ハンターちゃん、俺覚えてる?」


僕は正直、顔を覚えるのが苦手だ。
彼の眼鏡を見て思い出した。テンプル部分の金属が変わったカットだったのだ。


「覚えてるよぉ。何、またムチ打たれに来たの?」


もう勘弁してよ、と彼は困ったように笑った。
初来店だという時に何も知らないのをいいことに散々遊んだのだ。

色白だが、身体つきのガッシリした男性だった。
派手さは無いがよく見ればなかなかいい男だと思う。


僕は花織の彼が会話からはぐれないように、


「聞いてよ、こっちの彼こないだねぇ…」

と話しかけ、僕がトイレに立っても暇にならないようがっちりさんとも仲良くなって
もらう。とりあえず退屈はしないだろう。





花織の彼は、反応がいいとは言えないし、何を考えているかよくわからない
タイプだった。骨の折れる男は僕とは合わない。


しかし今日は別。なにせ仕事の意気込みだから。
左側のがっちりさん、今日は望み薄ですよ。
席を変えるならお早めに…。



(図に乗るのもほどほどに 3へ続く)




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乙女心とハプバーと