「あれ…?リリオじゃない」


男ばっかズラリ鈴生りのバーカウンターから、
一人、腕を引っ張り引っこ抜いた。


「あ、お久しぶり」


なんか坊主頭になっていた。よく気づいたな、自分。
髪が長い時はもうちょっと爽やかでカッコ良かったのに…
この子顔が台形してるから、なんか海苔はったおにぎりみたいじゃないの。
坊主はいただけんなぁ。いや、ある意味いただけるけどさ。中身 すじがいいな。


「あ、ハンターちゃんだ、とは思ったんだけど…なんか…」


僕はリリオのドリンクを持って店内をずんずん奥へ進む。
僕の隣に座らせるためだ。


この日はイベントでハプニングバー内は異常な盛り上がりを見せており、
僕は奥の席で2組のカップルさん達とおしゃべりしていたところだった。


「なんだよう、声、掛けてくれればいいのにさ」


カップルさんと話すのは、はじめて会う単独男性より骨が折れなくていいんだが、
仲良しに囲まれていると、ピンの僕はだんだん退屈になる。
リリオが来てくれてちょうど良かった。




実は、リリオと初めて会ってから、この日で会うのは4度目だった。
2度目に来店したとき、リリオは僕の隣には案内されず、ずーっとカウンターの端で
店長に怒られていた。
勿論、前回僕にゴム無しで入れたからだ。


そのとき僕なんとなく、彼に種を捲いてみたくなった。
叱られが一段落したところで、彼の腕をとって部屋へ連れ込む。


「あの、こないだは、ごめんなさい」


ソファーに腰を落とした彼を正面に据えて、僕は黙って彼の目を見て頬を撫でた。


「俺、わかってなくて…ほんとごめんなさい」


なおも黙って頬を撫でた。


「あの…」


何か話して場を繋ごうとするリリオを、僕は黙って見つめ続けた。
瞳に泉を湛え、彼の目から奥へと忍び込む。そこいらに脈打つ彼の心に
芥子のような小さな種を、一粒まいた。


もしかしてあと何週間かして、小さな種が芽を出す頃、
リリオはとっておきの愛情を心箪笥から出してくるかも知れない。
それは僕のほんのいたずらで、リリオに愛してほしいとか、そういうことでは
無かった。


ただ単に僕は退屈していたので、気まぐれに思いついただけだった。


まさかの結果に目を丸くするのは、それからひと月ほど後、3回目に会った
時のことだった。



(巫山戯るのもほどほどに 2へ続く)



ブログランキング参加しています
クリックしていただくと投票が完了します
   ↓↓↓
乙女心とハプバーと