右隣のドSくんの隣の男性も紹介された。
茶色いテンパの若い男の子だったが、もちろん割り込みで座らされた
このドSくんのほうが数十倍僕好みだ。
もしかして…ハプニングバーでも店員同士で会議とかあんのかな。
「はい、Bハンターさんはイケメン好きです。細身、色白だと尚可、
物静かなドSが来店した際は優先的に回して下さい」
とか?…無いか。でも会議みたいな形じゃなくても、普段の会話で
なんとなく伝わっているのかもしれない。
とりあえず僕は左隣の勝村ナントカ似の男性と喋ってみることにした。
「お仕事帰りですか?」
「…ええ。今日で寄るのは2回目です」
まだ場に慣れていないのか、緊張が取れていないようだ。
何故なら僕が話しだした際、身体を斜めにしてわずかに身を引いた。
ここが変態の巣窟と知っているにも関わらず、
まだ呑み込めていない男性によくある行動だ。
「ネクタイ取られちゃいましたか」
「…はい。暑いから脱いだらってことだったんで」
「真面目にジャケットまで着こんでたんじゃないですか?
そのワイシャツだって暑いでしょう」
「まあ…そうですけど、脱ぐのはちょっと…」
「あれ。彼は脱いでらっしゃるじゃないですか。気持ちいいですよね?」
と、さりげなく右隣のドSくんに振った。
彼はカウンターの上で組んでいた腕を解きながら少しこちらに身体を
向けた。
「まあ…楽ですよね。涼しいし」
少々面倒臭そうだが、場の雰囲気を壊そうとしているわけではないらしい。
おそらくそういう気質なんだろう。
陰鬱な眼差しは現世を見ずに、
自分のつま先に落ちる淵を見ているかのようだ。
頭を揺らせばサラサラと音を立てそうな真っ黒いストレートの前髪といい、
端正な顔立ちに映える縁なし眼鏡といい、
TVゲームのポリゴンで作られた主人公のように出来過ぎている。
「…ほらそうおっしゃってるじゃないですか。脱ぎましょうよ」
僕は右隣のドS君に吸い込まれるのを拒否しながら勝村君に提案した。
「いやあ…」 と渋る彼に、右側の彼が思いがけず舟を出した。
「じゃあ、Bハンターさんもコスプレになりましょう。
彼だけ脱ぐっていうのもやりにくいでしょう…それでどうですか?
ワイシャツも皺にならないで済むでしょ?」
勝村君は仕立てのいいシャツを着ていた。
クリーニングに出すにしてもこの熱気の中着続けているのは
賢明とは思えない。
多少勝村君の頑なな心も動いたようだ。
「ていうか…Bハンターさんはいいんですか?」
よっしゃ。僕はニッコリ笑って言った。
「勿論。暑いですから丁度いいですよ」
僕は立ち上がってコスプレが置いてあるハンガーラックの前に立った。
すると僕の横から長く青白い手がにゅっと伸びた。
僕は気配を感じていなかったので飛退きそうなほど驚いた。
「…じゃあ、何着ましょうか。普段どういうの着るの?」
ドS君がコスを手に取ってしげしげと眺めている。
ああ、びっくりした…。いつの間に後ろに居たんだろう?
「ええと…この辺のキャミワンピみたいのとか…あとメイドですかね…」
うんうんと彼は、しっかりと噛みしめているような、
全く聞いていないようなよくわからない相槌を打ちながら、
壁にディスプレイしてあるコスをのろのろと眼で舐めていた。
最終的にひとつのコスに目を留めて 「あれがいいな」 と指さした。
それは僕が一番気に入ってる胸の開きの大きいメイド服だった。
「露出少ないかな」 と彼はいいつつそれを取り、僕にあてがった。
彼は洋服を見ているのに、自分が見られているようで
身体の真芯が熱くなった。「着替えてきます」 と僕はそれを預かったが、
彼はロッカールームまで着いてきた。
「あの…」
ここまで着いてこられてしまうと着替えるの着替えられない。
すると、彼はシャワールームに僕を押しこんだ。
「綺麗にしておいでね…ここで待ってるから」
彼は初めて僕の目を見て、そして初めて笑った。
見ていたのは僕の目だけど、見竦められた脳髄が宇宙を旅した。
笑った…彼が笑った…。
それはこの世の幸せであり、
僕と彼が今日出会えたことを途端に祝福されたような出来事だった。
(ダブルカード 3へ続く)
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茶色いテンパの若い男の子だったが、もちろん割り込みで座らされた
このドSくんのほうが数十倍僕好みだ。
もしかして…ハプニングバーでも店員同士で会議とかあんのかな。
「はい、Bハンターさんはイケメン好きです。細身、色白だと尚可、
物静かなドSが来店した際は優先的に回して下さい」
とか?…無いか。でも会議みたいな形じゃなくても、普段の会話で
なんとなく伝わっているのかもしれない。
とりあえず僕は左隣の勝村ナントカ似の男性と喋ってみることにした。
「お仕事帰りですか?」
「…ええ。今日で寄るのは2回目です」
まだ場に慣れていないのか、緊張が取れていないようだ。
何故なら僕が話しだした際、身体を斜めにしてわずかに身を引いた。
ここが変態の巣窟と知っているにも関わらず、
まだ呑み込めていない男性によくある行動だ。
「ネクタイ取られちゃいましたか」
「…はい。暑いから脱いだらってことだったんで」
「真面目にジャケットまで着こんでたんじゃないですか?
そのワイシャツだって暑いでしょう」
「まあ…そうですけど、脱ぐのはちょっと…」
「あれ。彼は脱いでらっしゃるじゃないですか。気持ちいいですよね?」
と、さりげなく右隣のドSくんに振った。
彼はカウンターの上で組んでいた腕を解きながら少しこちらに身体を
向けた。
「まあ…楽ですよね。涼しいし」
少々面倒臭そうだが、場の雰囲気を壊そうとしているわけではないらしい。
おそらくそういう気質なんだろう。
陰鬱な眼差しは現世を見ずに、
自分のつま先に落ちる淵を見ているかのようだ。
頭を揺らせばサラサラと音を立てそうな真っ黒いストレートの前髪といい、
端正な顔立ちに映える縁なし眼鏡といい、
TVゲームのポリゴンで作られた主人公のように出来過ぎている。
「…ほらそうおっしゃってるじゃないですか。脱ぎましょうよ」
僕は右隣のドS君に吸い込まれるのを拒否しながら勝村君に提案した。
「いやあ…」 と渋る彼に、右側の彼が思いがけず舟を出した。
「じゃあ、Bハンターさんもコスプレになりましょう。
彼だけ脱ぐっていうのもやりにくいでしょう…それでどうですか?
ワイシャツも皺にならないで済むでしょ?」
勝村君は仕立てのいいシャツを着ていた。
クリーニングに出すにしてもこの熱気の中着続けているのは
賢明とは思えない。
多少勝村君の頑なな心も動いたようだ。
「ていうか…Bハンターさんはいいんですか?」
よっしゃ。僕はニッコリ笑って言った。
「勿論。暑いですから丁度いいですよ」
僕は立ち上がってコスプレが置いてあるハンガーラックの前に立った。
すると僕の横から長く青白い手がにゅっと伸びた。
僕は気配を感じていなかったので飛退きそうなほど驚いた。
「…じゃあ、何着ましょうか。普段どういうの着るの?」
ドS君がコスを手に取ってしげしげと眺めている。
ああ、びっくりした…。いつの間に後ろに居たんだろう?
「ええと…この辺のキャミワンピみたいのとか…あとメイドですかね…」
うんうんと彼は、しっかりと噛みしめているような、
全く聞いていないようなよくわからない相槌を打ちながら、
壁にディスプレイしてあるコスをのろのろと眼で舐めていた。
最終的にひとつのコスに目を留めて 「あれがいいな」 と指さした。
それは僕が一番気に入ってる胸の開きの大きいメイド服だった。
「露出少ないかな」 と彼はいいつつそれを取り、僕にあてがった。
彼は洋服を見ているのに、自分が見られているようで
身体の真芯が熱くなった。「着替えてきます」 と僕はそれを預かったが、
彼はロッカールームまで着いてきた。
「あの…」
ここまで着いてこられてしまうと着替えるの着替えられない。
すると、彼はシャワールームに僕を押しこんだ。
「綺麗にしておいでね…ここで待ってるから」
彼は初めて僕の目を見て、そして初めて笑った。
見ていたのは僕の目だけど、見竦められた脳髄が宇宙を旅した。
笑った…彼が笑った…。
それはこの世の幸せであり、
僕と彼が今日出会えたことを途端に祝福されたような出来事だった。
(ダブルカード 3へ続く)
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