モンさんと僕は店を出た。
長期の休みの間というのは、繁華街は得てして暇なものだ。
僕らは数人の人を避けながら歩く。
「ねえ、家まで送ってってよ」
「ああ、いいよ」
モンさんは夜勤や残業が多い仕事をしているので、
いつも車で行動している。
彼と帰る方向は逆なのだが、僕はちょいちょい送ってもらっていた。
彼は背が高く、それは店外だと余計そう見える。
特に手足は日本人にしては異常なほど長く、
痩せた体をますます誇張していた。
僕はその背中を見ながら駐車場に向かって一緒に歩いた。
これから僕は、彼に大切なことを話さなければならない。
他愛も無い世間話をひと段落させ、僕は大きく息を吸い込んだ。
「…あのさ」
「なに?」
彼の無垢な返事が返ってくる。
僕は長い話を切り出した。
「…実はね、君に話したいことがあったんだ。
あたし、モンさんのこと好きだよね?
告白したときの君の断り方からいって、
いつか恋人になれるかもって思ってたから、
エスフレンドも仕方ないと思ってたよ。
でもね、今回モンさん、カルアちゃんに会いに来たよね?
確かにハプバーはそういう場所だし、あなたがお金を払ってるんだし、
自由だとは思う。あたしは恋人でもないからそれを注意も出来ないし、
あたしのところへ戻ってきてくれるんだって自信もない。
なんか…疲れちゃった。
嫉妬するのも、自分を納得させるのも。
今日、君がカルアちゃんに会うと言ったときは、
君にもう二度と会わないようにしようと思ってた。
ハプバー通いもやめようと思ってた。
でも、今日結局カルアちゃんとうまくいかなかったじゃん?
だから、少し考え直した。
モンさん、僕ら外で会うのはやめよう。
店で会うのは構わないよ。そのときはまた、仲良くしようよ」
……我ながらうまく説明できたと思う。
あとはちゃんと通じたかどうかだ……。
モンさんは暫く黙ってハンドルを握っていた。
彼の顔を見たわけではないが、おそらく険しい顔をしていたんだと思う。
信号、角を曲がって僕の家まであと少しというところで、
ようやくその重い口を開いた。
「……俺……電話とかマメじゃないし……」
ソコなの!?
ソコじゃないです!!
……僕は、違うよ、そうじゃなくてと説明し直したが、
その内容は全く情緒の無いものになった。
「ともかく、外では会わないけど、ハプバーでまた偶然会おうってこと」
「うーん……わかった。じゃあ、またね」
僕は彼の車から降り、その車が見えなくなるまで見送った。
モンさん…君は…
最後の最後まで僕を翻弄しますなぁ……。
(発芽 終わり)
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長期の休みの間というのは、繁華街は得てして暇なものだ。
僕らは数人の人を避けながら歩く。
「ねえ、家まで送ってってよ」
「ああ、いいよ」
モンさんは夜勤や残業が多い仕事をしているので、
いつも車で行動している。
彼と帰る方向は逆なのだが、僕はちょいちょい送ってもらっていた。
彼は背が高く、それは店外だと余計そう見える。
特に手足は日本人にしては異常なほど長く、
痩せた体をますます誇張していた。
僕はその背中を見ながら駐車場に向かって一緒に歩いた。
これから僕は、彼に大切なことを話さなければならない。
他愛も無い世間話をひと段落させ、僕は大きく息を吸い込んだ。
「…あのさ」
「なに?」
彼の無垢な返事が返ってくる。
僕は長い話を切り出した。
「…実はね、君に話したいことがあったんだ。
あたし、モンさんのこと好きだよね?
告白したときの君の断り方からいって、
いつか恋人になれるかもって思ってたから、
エスフレンドも仕方ないと思ってたよ。
でもね、今回モンさん、カルアちゃんに会いに来たよね?
確かにハプバーはそういう場所だし、あなたがお金を払ってるんだし、
自由だとは思う。あたしは恋人でもないからそれを注意も出来ないし、
あたしのところへ戻ってきてくれるんだって自信もない。
なんか…疲れちゃった。
嫉妬するのも、自分を納得させるのも。
今日、君がカルアちゃんに会うと言ったときは、
君にもう二度と会わないようにしようと思ってた。
ハプバー通いもやめようと思ってた。
でも、今日結局カルアちゃんとうまくいかなかったじゃん?
だから、少し考え直した。
モンさん、僕ら外で会うのはやめよう。
店で会うのは構わないよ。そのときはまた、仲良くしようよ」
……我ながらうまく説明できたと思う。
あとはちゃんと通じたかどうかだ……。
モンさんは暫く黙ってハンドルを握っていた。
彼の顔を見たわけではないが、おそらく険しい顔をしていたんだと思う。
信号、角を曲がって僕の家まであと少しというところで、
ようやくその重い口を開いた。
「……俺……電話とかマメじゃないし……」
ソコなの!?
ソコじゃないです!!
……僕は、違うよ、そうじゃなくてと説明し直したが、
その内容は全く情緒の無いものになった。
「ともかく、外では会わないけど、ハプバーでまた偶然会おうってこと」
「うーん……わかった。じゃあ、またね」
僕は彼の車から降り、その車が見えなくなるまで見送った。
モンさん…君は…
最後の最後まで僕を翻弄しますなぁ……。
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