熱い男達のトークに盗み聞くべく、僕の席にモンさんを移動させた。


「・・・なるほどね」


小声で彼が感想を述べる。
ナッツともう1人の男性は、若いエネルギーを存分に発散しながら、
車のマニアックな話をしている。


例えば居酒屋でこんな男性の姿を見かけたらなんとも思わないだろう。
でもハプニングバーでは違う。


僕には、彼らが童貞に見えた。
女性を口説けず、男子で固まり異常な盛り上がりを見せる。
この生理・行動はまさしく中2だ。
サバンナのコントに限りなく類似する。


「なんか、昔スゲー仲良かった友達に会ってテンションその歳に戻りました、
 みたいな」


僕も顔を寄せて彼に耳打ちすると、彼は「確かに」と頷き、上半身を寄せて
僕にピッタリくっついた。


「・・・実は、元々友達なんじゃないの?」


「違う、カッコいいほう居るじゃん。あの子今日で多分2回目なんだ。だから
 それは無い」



 そうそうそうそう!


ユニゾンで声がでかくなる。
僕らは苦笑した。





相変わらず誘わないモンさんに僕は痺れを切らした。


「時計見てた?」


「ん?」


「実は時間が無いんだけど」


「あ、そっか」


「そっかじゃない。ムード無いなあ」


大体にして時間を気にしてるあたりでムードなんか無いけどね。
カウンターに肘をついていた左手を顎から外し、彼の手を握る。
その手を彼が握り返し僕をそっと立たせると、そのまま奥の部屋へ移動した。





彼の額から僕の胸に汗がしたたり落ちていた。
照明が暗いのでなんとも言えないが、彼の顔色が優れないように思った。
繋がっているとなんとなくそんなことがわかる。
口をついて出た言葉はこうだった。


「・・・無理しなくていいんだよ?」


彼は腕立て伏せの要領で僕の上にゆっくり胸を落とした。


「ごめん・・・頭痛くて」


頭の上においてあるティッシュを2、3枚取り、彼の額を拭った。


「シャワー浴びてお茶飲んだら少しは良くなるかも」


「ほんとごめん」


「謝らなくていい」


僕は彼にタオルを持ってきて渡すと、シャワールームへ見送った。




ウーロン茶のグラスをこめかみに当て、こざっぱりとしたモンさんが
この話を切り出したのは、まさに閉店ぎりぎりの時間だった。


「あのさ・・・良かったらメアド交換しない?」


そう。それは前会ったとき以来、こちらも思っていたことだ。


「あたしもそう思ってた、実は前会ったときに聞いとけば良かったって思ったんだ」


「あ!そうでしょ?俺もそう思ってたんだよね」






このとき。


 僕はある覚悟を決めた。





(平穏と安定 終わり)





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