バー露口が閉店するという。
酒飲みにとってこの酒場を知らぬ者はいない。ある意味、日本を代表するバーだ。
1958年に開店というから、64年に渡って続いている。
松山には大街道という大きな商店街があり、ここから少し路地に折れるとバー露口がある。
ファサードからして歴史を感じるが、店内も同様だ。
マスターご夫妻で切り盛りをされており、コースターにはお二人の似顔絵。行く都度、お土産として持って帰ったものだ。
なかなか松山に赴く機会が少なく、初めて出掛けたのは20年前だろうか。偶然、大街道脇のANAホテルに宿を取り、毎晩飲み歩く日々を過ごしたが、締めは露口のハイボールだ。
キリッとした衣装でカウンターに立つマスターと和やかな会話で呑む一時が何よりも楽しい。
あれからだいぶん時が経って、マスターは85歳、奥様は80歳だという。「いつまでも続いてほしい…」というのはファンの勝手な思いで、この年齢まで続けてくれたことに、驚きとともに感謝したい。
歴史あるバーが閉じるといえばもう一軒。
銀座コリドー街にあったバークール。
スタンディングのカクテルバーで、マスターの古川氏がつくるカクテルを楽しみに、多くの常連が駆けつけていた。
私も数回、お邪魔したが、「もう少し大人になってから通いつめよう」と思っているうちに閉店してしまった。
古書店でクールを主役にした本を見つけた。
戦争時代の話や、二世代に渡ってやってくる常連客とのエピソードなど、とても面白く。
バーに通う人であれば見る機会が多いバーの切り絵作品がある。切り絵作家、成田一徹氏の作品だ。この切り絵を見て出掛けたバーはいくつもある。
また初めてのバーで成田氏の作品がきっかけで、マスターとの会話に花を咲かせたことも何度もある。
古い酒場は単に酒を飲む場ではなく、時間をかけて自分を育てる場所なのだと、改めて思う。




