再開発が進む渋谷には古い店が沢山あったが、その幾つもが姿を消してしまったのは残念でならない。その中で今なお継続しているのは、再開発の波にのまれない地の利と、圧倒的に他店との差別化を長い間続けている店の価値にあるのだと思う。
道玄坂を少し登ると百軒店の入り口があり、ここを入ると中華の喜楽や道頓堀劇場があるが、ここから細い道をひょうひょうと行くと、当店の看板が見える。
とりかつチキン。鳥がダブっているとか、鳥料理専門店なのかとか、思惑が湧いてくるが、看板に釣られて怪しげなビルに潜入すると古い扉がある。そこにだいぶん前からお母さんがご飯を作ってくれている空間が広がる。
店内はカウンターで、その内側が厨房。
壁にマニューがあり、数種の揚げ物をチョイスするのがここのルールだ。
少し前まで二品で650円だったが、世の中の流れで値上げし750円になっている。
この日、ハムカツ・チキン(750円)、おかわり(200円)
11:30頃に伺ったが先客は2名のみ。開店直後はやはりすいている。
ここはメニューを眺めて迷うことはない。好きな揚げ物を2種、もしくは3種、4種コールすればいい。「ハムカツチキン!」
今日はおかあさんが3名という布陣。カウンターには漬物、辛子。5分くらいで揚げ上がり、飯が盛られ、味噌汁が渡される。
キャベツにぬか漬け、それに一口大に切り分けられたチキンとハムカツ。サービスのつもりで分厚いハムカツを提供する店があるが、ここのハムカツは正統派の薄いもの。
飛び抜けて美味いわけではないが、風情のある定食屋で提供される一品は実に味わい深い。なにしろお母さんが注文を受けてから目の前で揚げてくれるので、揚げたて。これに勝るご馳走はない。
そのようなおかずなので、ご飯が進みお代わりを所望してしまった。最初から大盛り(150円)にしておけばよかった。ちなみにここの大盛りは山盛りである。
渋谷の地で750円という価格、この店の良心を感じずにはいられない。
※写真は値上げ前のものが含まれます。
とりかつチキン
営業時間
11:00~20:00
定休日 日曜日