唇 | 松本風民の催馬楽ライカ

高校のとき、親と妹が用事で外出。

ぼくは、ばーちゃんと2人っりきりで、

何日か暮らしたことがある。


そのときは、ばーちゃんが一応保護者。

なので、ばーちゃんは


「とりあえず、ふーみんを朝起して、朝ごはんを

食べさせ、高校へ行かせる」


ということを自分の最大のミッションと考えていた。


しかし・・・ぼく、朝起きないんだな、これが。

ばーちゃんは、やきもきして何回も起しに来た。

それでも起きない。


「これでふーみんが学校へ行かなかったら

 娘 (ぼくの母) に合わせる顔がない・・・」と

ばーちゃんは思ったんだろう。



こげこげに焼きすぎた、かったい、かったい食パンを

手に持ち、寝ているぼくの口めがけてフェンシングをするように

つついてきた。


ガッ!ガッ! ガッ!ガッ!

ガッ!ガッ! ガッ!ガッ!

ガッ!ガッ! ガッ!ガッ! 


・・・って、痛いわっ!

何回やんねん!しつこい!

おまえは、ギャンか!マクベか!

くちびる切れかかったやろ!ぼけっ!


「あんたが、おきひんからやー!」

「なんやとー!」


朝から、大ゲンカ。年齢差55歳。

ばーちゃんは、スネて家を出て行った。


・・・と思ったら、ばーちゃん、すぐ帰ってきた。


「はあ、はあ、はあ・・・」 慌てている。


ぼく 「どーしたん?」

祖母  「いま、公園にいたら、誰かが追いかけてきた」

ぼく 「誰が?」

祖母 「いや、音だけして、姿は見えへんねん!」


あまりにビビッてるので見に行った。

そしたら、めちゃくちゃデカイ洗面器ぐらいの大きさの

ヒキガエル が草むらで飛び跳ねていた。


ぼく 「ただの、でかいカエルやったで」

祖母 「なんやー、そーかいな・・・」


「あたしゃ、てっきり誰かが 猛スピードのケンケンで

 追いかけてきてるんやと思ってたわ」



・・・あのね、なんでわさわざケンケンで追いかけてくるだよ。


気が強いのか、弱いのか、アホなのか、よーわからん。