トイレの中から・・・ | 松本風民の催馬楽ライカ

トイレの中から・・・

『ヤゴゲルゲ』


これね、前に書いた「バロームワン」っていう

実写ヒーローもんに出てくる怪人なのね。


なんか薄暗く、ほんのり赤いところ

(障子かなにか)から出てきたような・・・

ストーリーとかは全然覚えていないんだけど。


とにかくその、ヤゴゲルゲのテーマソングが怖かった。


『ヤゴォ ヤゴォ ヤァーゴの 子守唄~♪』という歌詞で、

曲調も、おどろおどろしい。

そこしか覚えてないけど、今も頭の中で再生できるほど。

ある種、トラウマ。


その頃ぼくが住んでいた家は、古い木造の平屋で

トイレもボロボロ。薄暗くて、床はぎしぎしいうし、スキマかぜだらけだし、

ラップ現象なんてしょっちゅう。

「ヤゴゲルゲの住み家って、こんなのじゃね?」って言われても

仕方がないような家だし、トイレ。トイレというか便所、いや 正直「カワヤ」 。

もちろん水洗ではなく、くみ取り式。おつりもくる。(汚ねー!あー気持ちわるっ)


とーぜん、1人ではトイレに行けないわけですわー。怖くて。

怖さ、暗さ、汚さ・・・あとなにさ?・・・・あーヤゴゲルゲが出そうさ が、

完全に排泄の際の快感を上回ってるわけですわー。圧倒的に。

でもまあ、ぎりぎりまでガマンしたあと、覚悟を決めて行くんですね。カワヤへ。


そんなある日のこと・・・


いつものように「肛門はれつ装置スイッチオン」のレベルに達したぼくは

しょーがなく和式の便器にまたがった。

「ふぅーっ」と第1波を無事終了させ、第2波に備えていると、

遠くから何かが近づいてくる気配がする。何かやってくる音がするのだ。


「でも、トイレやで?なんで遠くからの気配を感じるわけ?」

・・・そう、ここはせまい密室だ。


初めは、テレビの音を誰かが大きくしたのかと思っていたが

どーも、そうではないらしい。しかもどんどん近づいてくる。

近づくにつれ、そいつの息づかいもはっきり聞こえ出した。

どうやら、便器の中から聞こえてくる・・・


『これは、完全、ヤゴゲルゲや!』 


そう思ったぼくは、トイレを飛び出し母親の元へ駆けつけた。


僕 「なんか、おる。トイレになんかおる!」

母 「えー?そんなん、おるわけないやん」

僕 「いや、でもなんか来てるもん!こっちに!」

母 「あー、それ、ちゃうで。一緒に来てみ」


母はぼくの手を引き、トイレへ向かった。

一体なにが違うというのだ・・・


トイレに入ると、まだ何かが便器の下でゴソゴソしている気配がする。

2人は便器の中をゆっくり覗き込んだ・・・


何かが、サッと通り過ぎた。しかも2体も・・・



母 「ほれ、見てみ。・・・やま犬や」

僕 「やま犬って?」

母 「のら犬やん。のら犬が群れになって、山で暮らしてるやろ?

   アレがたまーに、こうやって便所の下、通るんや。」


ちょっとすいません・・・それ、初耳なんですけど・・・


母 「あれっ?言わんかったっけ? でも、これでもう怖ないやろ?」


怖いわっ!

じゅーぶん怖いわっ!

蒙古斑だらけで、やわ肌の いたいけな子どもが

野犬という猛獣の鼻先で、ケツ丸出しにしてんねんぞ!


それやったら、まだ

『子どもは さらうかもしれへんけど、殺しは しないかもしれん』 っていう

可能性がちょっとだけ残ってるヤゴゲルゲのほうが、なんぼかマシじゃ!