ぼくの救世主 | 松本風民の催馬楽ライカ

ぼくの救世主

「金縛り」って、なったことある?


ぼくはね、1回だけあるんだよね。

別に霊感とか強いわけでもなんでもなく・・・むしろ無いほうだと思う。


でも、そういう現象があるのは信じてるし、

「頭は起きてるのに体が寝てるとき、そーなる」っていう説も分かる。
ただあれは、めちゃくちゃ怖かった・・・


ぼくが19とか20歳の(けっこー大人な)ころ

久々に田舎に帰ったときの話。


友達と遊んだあと、朝方、家に帰ってきたら、

ちょうど父親が起きてきたところだった。

ぼくは、めんどくさかったので、自分のフトンを準備せず、

2階の空いた父親のベッドで眠ることにした。


朝方とはいえ、日差しが部屋に入り込み、

まぶしく感じたぼくは、掛けフトンを頭からかぶった。


それから数分後・・・

ベッドのまわりの畳の上を「みしっ、みしっ」と誰かが

歩く音がした。

ぼくは、てっきり父親が何か忘れ物を取りに部屋へ

戻ってきたのだとばかり思っていた。

ただ、階段を上がってくる物音が全く

しなかったのが少し気にはなっていたのだが・・・


すると、次の瞬間、頭からかぶったフトンが

サーッとへっこんできた。

(これ、意味わかるかな?つまり、ドーム状にかぶったフトンが、

中から見ると自分の方にへっこんできて、顔にそのフトンの内側が

くっついてきたイメージ)


『なんだ、オヤジのやつ。コートかなんか忘れたのか?

振り回したのがフトンに当たってんだろな・・・』 と思っていたら急に、

横向けで寝ているぼくの肩を誰かが思いっきり押さえ込んでくるのだ。

(これ書いてるいまも、鳥肌がたっている!トラウマ体験)


そして、耳元で、人間の言葉ではないと思われる何か(少なくとも

日本語ではなかった)をささやいている。フトンはかぶったままなので

相手は見えない。ぼくの緊張はピークに達した。


こういうケースに出くわしたら、「力をゆるめたあと、一気に起き上がると

金縛りが解ける」と、以前、聞いた事があったので、わらにもすがる思いで

試してみた。


するとさらに悪化。


ゆるめた分だけ、余計に押さえつけられ、息ができない。

耳元でのささやきもボリュームが上がってきている。

へんな言葉や、気持ち悪いお告げを聞かされたくなかったぼくは、

心の中で大声で唄っていた。

『ポッポッポ!ハトポッポ!』 と、そこだけを狂ったように

リフレインしていた。・・・これマジ。


で、一向に収まりそうになかったので、正直

『あ、俺、死ぬかも』 と本気で考えた。ほんと、息ができなかったから。


あきらめかけたその瞬間、首のあたりから1本の熱い線?みたいなのが

ジリジリと足の方へと降りていき、ゆっくりと首から金縛りが解けていった

のでした。


フトンをはいで、飛び起きたぼくは、肩でハアハア息をした。

あたりは何事もなかったかのように静かだが、耳鳴りがしている。


・・・たすかった。


呼吸が落ち着くとすぐに階下へ降りていき、大声で叫んだ。

「ちょっとー!みんな、しゅーごー!集合!みんな集まってー!」

尋常ではないぼくの慌てっぷりに、みんな心配して集まってきた。

みんなというのは、両親と妹とばーちゃんの4人だ。

ぼくはせきを切ったように話し始めた。


「いや、実はいま、金縛りにあったんやけど・・・」と言うとすぐに

みんなはタメ息をつき、元の忙しい日常の朝へと散らばって行った。

「いや、いや、ほんまやって!ちょっと、聞いてぇーなー!」

妹などは、舌打ちまでして去っていく始末。


「くそっ!ほんまやのに・・・ウソちゃうのに。

 こっちは死にかけてんのに・・・」

ガックリ肩を落としていると、そこへ救世主が現れた。


マサエばーちゃんだ。


祖母 「ふーみん。分かる。わかるでぇ、ばーちゃんわ」

ぼく  「おぉ!分かってくれんのか、ばーちゃん」

祖母 「あたり前やがな。よー分かる。よー分かるでぇ、ばーちゃんは!」

ぼく  「良かったー!ばーちゃん。信じてくれて」

祖母 「そんなもん、信じるわな。よーあることや!そんなもん。

    それはなぁ、ふーみん、それは・・・多分あれや・・・


   


   「ねずみのせいや」




ぼく  「・・・は?・・・ね、ねずみって・・・」

祖母 「あぁ~そーや。そんなことするんは、ねずみしかおらん!

ねずみの仕業や!」


唯一、自分のことを信じてくれた救世主の口から飛び出したのが

まさかの「ねずみ犯人説」


気まずいの沈黙あと、2人は会話を発展させることなく

無言で元の場所へ戻っていったのでした。



でも、ばーちゃん。嬉しかったよ。信じてくれて。
いま、こうして思い出しても楽しいよ。

むこうで元気にしてんのか?ばーちゃん。

それとも、もう生まれ変わって、この世にいんのかな?



ばーちゃんが亡くなって、もうそろそろ4年が経つ・・・