私の職場は特別養護老人ホーム(特養)の中にあるショートステイフロアです。

※ショートステイとは
最短で1日から1日単位で利用できる点が特徴。
在宅で介護にあたる家族や介護者が急用やリフレッシュで一時的に介護から離れる場合や、
介護施設の入居待ちの場合などに使用されることが多い

短い人では1泊。
長い人では1ヶ月近く泊まる方もいらっしゃいます。

※ショートステイを利用するには
「要支援1~2」や「要介護1~5」の要介護認定を受けた65歳以上の高齢者。
もしくは
40~64歳で特定疾病により要介護と判断された人。

なので必然的に認知症の方も多く
日常生活に支障はなく自立されていても
認知症がかなり進行している方や
全般的に介助が必要で加えて認知症もかなり進行している方もいらっしゃいます。

もちろん認知症は軽度である程度自立されている方もいらっしゃいますニコニコ


今日ご自宅に帰られたKさんは1週間のご利用でしたが
☆何故自分がここにいるのか
☆どうやって来たのか
この2つの記憶が分刻みで抜け落ちてしまうので
1日に大袈裟ではなく100回近く同じ質問をされていましたガーン

もちろんその都度答えるのだけど
数分したらまた忘れちゃって同じ質問をしてくる…の繰り返し。

そのうち
☆お金を持ってきていないけど支払いはどうすればいいのか
☆こんな服でここに来たのか
☆家族はどうしてるのか
と、質問がどんどん増えていき
最終日の今日は
Kさん自身も何が分からなくて何を聞きたいのか
それすらももう分からない様子で
1日中不穏な様子でウロウロとされていましたガーン

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1ヶ月近くご利用だったOさん(女性)はまだ70歳。

幼い頃に受けた整体で神経を損傷し
下半身麻痺になり、以来車椅子生活をされています。

認知症はほぼなく
会話もスムーズにできるOさんですが
20年前にご両親が亡くなっていて
以降は弟さん一家と同居してお嫁さんがずーっとお世話をしてこられていました。

下半身がほぼ動かないので
トイレもお風呂も、寝起きさえも全てに介助が必要なOさん。
そのお世話を義理の妹さんがされていると初めて聞いた時は驚きました。

そんなOさんは
ちょっと自己中なところがあって…

ショートステイ利用中もその自己中ぶりは垣間見えていて
そのせいで他の利用者さんと衝突寸前ということも多々ありましたもやもや

これまでは2週間に1度
3泊4日でのご利用だったOさんが
今回は1ヶ月近いご利用と聞いて
「もしかして…」と思っていたら
案の定、特養入居の手続き待ちでした。

そしてその手続きがやっと済んで
今日、同じ建物内の別階の特養入居となりました。

荷物をまとめて
Oさんと一緒に入居される階へ行き
「今日からここがOさんの家になるね」と話しながらドアを開けると…

驚いたことにテレビもタンスも何もない。
あるのは小さな折りたたみテーブルが真ん中に置かれているだけ。
※特養は基本的に身の回りの家具等は実費で揃えなければなりません。

思わず「え…」と声が出た私に
ケアマネさんが
「ご家族は今日こちらに入居ってご存知ですよね?」って…

はぁ?

「いや知らんし!!それはあなたの仕事でしょ!!」
…と言いたいのをぐっと堪えて
「さあ…私はそこまでは分からないです。」と言いながらOさんを見たら
目に涙をいっぱい溜めて唇を噛んでいました。


Oさんが何時にここに移るのか事前に話もしてるのに
なんでその前に部屋の確認をしなかったの?
なんでご家族に一言連絡を入れなかったの?

なんで…なんで…と思ってるうちに
Oさんよりも先に私が泣いていました。


後から聞いた話ですが
Oさんの特養入居はもう何年も前からあったそうです。
でもOさんがそれを拒んでいた。

「家族なんやから世話してもらって当たり前」
と言っていたそうです。


ショートステイを利用中
自己中な態度が度々あって
そのたびに宥めたり諭したりしながら過ごしていました。

時には腹の立つこともあったけど
「仕事」と割り切って顔には出さずお世話をさせてもらっていました。

だけど…
義理の妹さんはもう限界だった。

「私はもうあの人をみれません。嫌です。
私の人生、そろそろ私らしく生きさせてください」
とケアマネに話したそうです。

そこからどういう風にOさんに話がいったのかそこまでは聞けなかったけど
最終的にはOさん自身が「特養に入る」と決めたそうです。


空っぽの部屋を見て慌てたケアマネが義理の妹さんに電話すると
「ちょっとバタバタして遅れてしまいましたが
お金は近いうちに書留で送るのでそれで買わせてください」
と言っていたそうです。


他人の私達には分からない、想像も出来ないくらい色んなことがあっただろうなと思う。

自己中で傲慢な義理の姉の世話の為に
自分の時間を全て費やしてきたんだな思うと
「本当にお疲れ様でした」と労いの言葉をかけさせてほしいなとさえ思う。

でも
だけど
これはあまりにも可哀想だ。

私はまだ仕事中だったので戻らなければならず
「Oさん、今後のことはケアマネに相談してね」
と言うのが精一杯でしたショボーン


特養には介助がなければベッドから起き上がることも出来ない方が沢山いらっしゃいます。

話せないし
自分で食べることも出来ない。

「生きている」と言うよりは
「生かされている」と言う方がしっくりくるような方々です。

1ヶ月のうちに何度も会いに(面会)来られる家族もいれば
もう何年も誰も会いに来ていない人もいらっしゃいます。


家族なのに。


働いて結婚して子育てして
戦争後大変だった日本を生き抜いてこられた方の最期が寂しいなんて悲し過ぎる。