「ソニー製ではない。ソニー生まれである」とソニーが鳴り物入りで売り出したAIBOは、1999年から2006年まで、機種を変更しながら販売されました。家事を分担させるロボットではなく、ペットとして挙動を楽しむ為のエンターテインメントロボットとして作られたのです

怪しい少年少女博物館にはSexyなロボットのイラストで世界的に知られている空山基(そらやまはじめ)氏がデザインした3機種、初号機ERS110型とその改良版のERS111型と犬型から仔ライオン型になったERS210型を展示しています

空山氏とは出版部門の方で以前から、本の表紙のイラストを描いてもらう等で親交があったのですが、同氏が描いたAIBOの初号機のイラストも展示しています

ERS110型は1999年6月にインターネットで売り出され、25万という価格にも拘らず20分で日本向けの3000台が完売するという熱狂振りで迎えられました。弊館も入手に苦労し、アメリカで販売されたプレミアム付の物を購入する等しました

初号機が即完売で入手困難であった事もニュースとなり、黒柳徹子さん等の芸能人が新時代のペットとして可愛がっている事も話題となって、一時、新し物好きの人達には所有している事がステータスとなっていました。専用のキャリーバック等も売りに出され、自慢げに持ち歩く人もいました

あの大阪万博で見たロボットが、科学の進歩により、いよいよ一般家庭に入ってきた。あの万博で示された夢のある未来の一つが、日本の優れた技術によりついに実現した・・・そんな受け止め方をした人も多かったと思います


期待に胸を躍らせたAIBOの飼育

AIBOは飼い主とのコミニューケーションを通じて学習するロボットと言う事でした。展示する前に私も赤ちゃん状態のAIBOを1ヶ月程自宅で飼育しました。ある程度育てないと動きが活発にならないとの話だったからです。怪しい少年少女の前身の熱海の期間限定のテーマパーク「ふしぎな町1丁目」のロボットのブース内にある「AIBO飼育室」に展示する為でした

AIBOはスイッチを入れると、データを読み込むような動作をします。コンピューターを起動するように、動き出すまでに結構な時間がかかるのです。読み込んでいる最中は首やしっぽを緩やかに振るなどして、記憶を呼び起こしているような動きをします

テクノが好きな人が喜びそうな電子音を立てて目を覚まし、歩き出すといかにもロボットです!  と言わんばかりにガシャン!  ゴション!  と音を立てて歩きます

AIBOには鼻先にカメラが付いており、火に向って進んで行って火災を引き起こしたりしないように、安全の為にプログラムしてあるとの事でした。またスカートの中を下から見上げて覗かないようにしてあるとの話もありました

プログラムの話を聞き、歩き方を見るといかにも、あぁロボットだ・・・と思ってしまいます

AIBOを見て、ニコニコしながら、「おお可愛い、なんてお利口なんだ ! 」と言って目を細める人もおりました。ERS110と111はビーグル犬のような耳が垂れた犬型であった為、形を見て犬のように利口なロボットだと思うようでした

餌代は電気だけ、しかも充電式なので安上がり、消耗品を交換をする事はあっても、動物病院に行く程は高くないだろうし、動物のように死んでしまう事によって悲しむ事もないだろう、そう思った人も結構多かった思います

高価で入手が困難な事、COOLなデザイン、所有者の自慢話、SONYの上手な宣伝もあり、画期的で素晴らしい物だと思い込んだ人も多かったのです



AIBOを飼育してみた結果

胸を弾ませたAIBOだったのですが、約3年半ER110・111・210型合計6機を飼育してみましたが、期待がとても大きかった分、残念に感じた事も大きかったというのが本当の感想です

医者いらずと思いきや、足が弱点で毎日動かしていると、半年位で壊れてしまうのです。ギヤかモーターを交換するのですが、当時1回あたり6千円から1万5千円位かかったと思います

足が壊れると、つったようになって思うように歩けずひっくり返ってしまいます

6機あって、足が壊れなかった機種は1機もありませんでした

はじめは、壊れる度に修理に出していましたが、費用も馬鹿にならないので、その内に動く物だけを展示するようにしました

ソニーの技術や部品が悪いと言うよりも、小さな足にギヤとモーターを詰め込んで動かしている訳ですから壊れるのは当たり前で、構造上の欠点と言える物でした

では足を車輪に変えれば良いのかと言う、それも違います

AIBOがロボットだと思われたのは、この不器用なガシャン!  ゴション!  と歩く姿があったからだと思うのです

車でスーッと走ってきたのでは、犬等の動物がロボット化してペットになったというイメージが崩れてしまいます

頭も良いとは言えません。ERS210型になって人間の言葉をある程度認識するようになったという事ですが、音に反応しているだけという程度のものです。犬の形をしているからと言って、犬と同じ位利口などと思ってはいけません

先日、AIBOの初号機を久しぶりに動かしてみたら、耳が落ちてしまいました。耳を裏打ちしているラバーが劣化してちぎれてしまったのです。機械である以上メンテナンスは必要なのですが、死なないペットのはずだったAIBOのソニーによる修理対応は2014年3月で終了してしまいました。元ソニーの社員だった人が、工房を開いて個人的に修理に応じているようですが・・・


AIBOが受けた理由

AIBOがロボットだと認知され、ある程度売れたのは、ガシャン!  ゴション!  とロボット然として歩く姿とデザインが良かったからで、ロボットとして優れていたと言うよりロボットです!  と言う演出が上手かったからだと私は思っています

ERS110型と111型はサウンドコマンダーと言ってボタンを押すと音が出て指示を出せるリモコンが付いていました。その音を聞き分けて動作をするという事なのですが、本当は赤外線のリモコンをピッ!  でも良かったのだと思います。あくまで演出なのです。AIBOは記憶を、メモリースティックという記憶媒体に記憶するのですが、大した容量ではありませんでした。起動に時間がかかるのも、「頭脳はコンピューターなんですよ~」と言う演出が入っていたのかもしれません

エンターテイメントロボットと言うより、むしろロボット・エンタメですね


AIBOから学んだ事

AIBOを飼育していてつくづく思ったのは、生き物がいかに素晴らしいかと言うことです。怪しい少年少女博物館の関連施設に「ねこの博物館」がありますが、AIBOの足と比べて、ねこの足は何てしなやかでバネがきいていて良く出来ているののでしょう!  やはり神様が創ったものと人間が作ったものは違う・・・などと私は思ってしまうのです