昔、高校生の頃。
オレは英語科の高校に通っていた。
毎日毎日英語の授業があり、文法からリスニングから散々英語漬けの日々を送っていた。
にも関らず、英語は一向に身につく気配もない。
「英語とはなんて難しいのだろう...」
そんな事を思っていた。
高2の夏の研修旅行、いわゆる修学旅行でオーストラリアに行かせてもらった。
浮かれ気分と自分の英語への不安と半々の気持ちで飛行機に乗った。
無事現地にたどり着き、一歩オーストラリアに足を踏み入れると当然の事ながら飛び交う言葉は英語・英語・英語...
年端も行かない小さな子供までもが流暢に英語を操っている。
このときオレは思った。
「オレがこれだけ苦労しても中々身につかないものをこんな幼い子供が楽々と身につけている...」
嫉妬にも似た感覚を覚えた。
その感覚はそれから数年後にも感じる事になる。
オレ達バンドマンはツアーというものに出る。
車に機材を積み、あちこちでライブをするのだ。
色々な土地に行けて楽しい反面、やはり辛い事もある。
移動時間だ。
何百kmと離れた土地を車で移動するのはやはりしんどい。
運転手なら尚更だ。
オレもたまに運転するが、相当疲れる。
苦労してしんどい思いして、何時間もかけてやっと目的地にたどり着く。
そこには当然その土地に住み着く地元の人間がいる。
「オレらが来るのにこんなに苦労したこの土地を、彼らはお気楽そうに平和な顔で歩いている...」
自分が苦労して苦労してやっと手に入れた、もしくは苦労を重ねた末とうとう手にできなかったもの、それを何の苦もなく手にしている。
そんな人に対する訳のわからん嫉妬心。
そんな気持ちをふと思い出した。
今のオレは当時のそんなオレを見てあざ笑う事ができる。
実に浅はかな嫉妬心だ。
同じ物事でも人は見方を変える事によって幸せにも不幸せにも感じることが出来る。
当時のオレは不幸せなものの見方しかしていなかった。
過去のオレの誤った考えが、今のオレに教えてくれた教訓である。