これは、ドラマみたいだけど、全部、本当にあったおはなし。
私が絶対に命を捨てたりしないと誓った、そして
まだかなえてない夢を叶えてみせる、と誓った、
悲しいけど、強いチカラをくれた、ほんとうのおはなし。

長いですが、出来るだけまとめられるようにがんばります。

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私には、ウツ発症当時から働いてて、実はいまも籍が残っているバイト先がある。
飲食店なんだけど、ワタシが本業だけではキツいことと、
向こうも有名で繁盛する店だから、人手が足りないとき連絡がきて、ワタシとの予定があえば出勤する、という、ギブアンドテイクだけどなにげVIP待遇な、通称「リベロ非常勤」。

その店の、いまから3年前。
2007年、4月28日、土曜日。
一年で一番混む、ゴールデンウィーク初日。
まだこのときは、通常のフルバイトとして勤務してたので、GWは、ほんとゲンナリだった。

その初日を終えて、駐輪場に向かうと、弟分がいた。
ウチの先のほうに住んでて、配属は違うけど入社当時に教えた子。
「はじまっちゃったね~」なんて話をして。

いつもは、ヤツは中型二輪でワタシは原付なのに、
ヤツがゆっくり走ってくれて、ウチのまえまでツーリングして「おつかれー!!!!」ってヤツは
さらにちょっと先まで帰っていく。


その日。ウチで、外食にいこうといってて、ヤツ・・・今後仮に、「カイ」とする。
カイは、電話するっていってたから、じゃあ先にでるね、お疲れ!って駐輪場をでた。

カイは中型なので、途中で追いつくだろうと思いつつ、途中でガソリンスタンドによった。
疲れきってたので、超~のんびり給油してたら、低速運転のカイが通過してて、こっちをみてるのを確認した。
バイクの音が特殊で、ワタシの耳だと、通過する前に気づいて顔を上げていたので、確かだった。


かなーりのんびりの給油を終えて、のーんびりと支度をし、家に向かって再発進。
そうとたたないうちに、大渋滞にでくわした。
GWとはいえ、そしてもともとそれなりに交通量のあるウチの前の道路でも、ちょっとあり得ない。

原付でスルスルといけるとこまで前に進み、背伸びをしてのぞいていると、タクシーの運ちゃんが、
「事故渋滞みたいだよ~、原付なら押して抜けられるんじゃない?」と教えてくれた。

お礼を述べて、いったとおりエンジンをとめ、あともう数十メートルの家の前まで、原付を押していった。

もうその段階で、少し胸が、ザワついていた。

渋滞の先にたどり着くと、それはまさにウチの目の前の交差点で、
地獄絵図を、目にした。

集まって来たたくさんのひとと、進めない車と、取り巻くようにあいた、真ん中の空間に。

真っ白になって転がっている、2台のバイクらしきもの。
焦げ臭いニオイ。
現場にこだまする、たくさんのひとの叫ぶ声。

見たこともない、大きな交通事故だった。

同じマンションの昔馴染みのひとにあって、
「また起きちゃったわね~、何年かに一度起きるけど・・・サラリーマンと、若いひとみたいよ」

その言葉を聞いて、あいさつもせずに、原付を押しながらダッシュして、原付をとめて、
家に駆け込んで、信じたくない心が悲鳴をあげながら、母に叫んだ。

「お母さん、前でデカイ事故!・・・カイかもしれない!!!!」

母もウチの店に友達を連れて食べにきたりしてて、カイが近くに住んでて、遠くから出て来て一人暮らししてる、って紹介したら、「困ったことあったらいいなよ!」とかいってたし、何回もウチの母は来てたので、すっかりカイと馴染みだった。

母も顔色を変えて、飛び出した。

母と一緒に飛び出した頃には、救急車が到着してた。
すぐ手前にひとり、頭を押さえて「いてえよ~・・・・」ってうなってるひとがいたけど、

そばにはギターがあって、それはオジサンのほうだってわかった。
そのひとが運ばれていったけど、ずっと見つからない「もうひとり」は先に運ばれた、って聞いた。

とりあえず、一番仲のいい仲間に連絡をした。カイかもしれない大事故が起きてる、と。
わかったらまた連絡する、と。
店長や社長にも、出れるようにしておいてください、と連絡をした。
もうその時点で、私の中ではほぼ確信していたから。

カイのケータイに電話しても、出なかったから。

その連絡をし終わって、でもまだカイかどうかわかってない。
でもわかりたくないような気もして、ワタシはその場で固まった。

母が、道路に走っていって、バイクのナンバーを確認してきた。

「群馬だよ!!!」

その言葉で、さらに頭が真っ白になった。

搬送先がわからなかったけど、このへんで救急はあそこしかない、とりあえず行ってみよう!と母に言われて、ふたりで原付で、病院に向かった。
職場の、連絡網を持って。

病院について、自分も運ばれたことがあるから、救急処置室にまっすぐ向かった。
中から聞こえるうめき声に、聞き覚えがあった。

看護士さんが「わかりますか!?事故がおきたんですよ、自分のことわかりますか!?」
って叫んでて、

「わかりません・・・事故なんて起こしてません・・・・ごめんなさい、ごめんなさい・・・」って、つぶやいてる、その、声。

「・・・・カイだ・・・・」って独り言のように母に言った。
看護士さんをつかまえて、連絡網をみせ、私はこれです、いま運ばれて来たのが、
この同じ職場の子かもしれないんです、この子です!といったら、
看護士さんがうなづいて走っていって、

「あなた、カイくん!?カイくんなの!?」っていったら、「そうです・・・」って聞こえた。
ほんとだった。わかってたけど認めたくなかったけど、ほんとだった。

すぐに職場の人間に連絡をとって、しばらくしたら何人かが駆けつけたけど、
その間に、CTに運ばれていく途中のカイにようやく会えた。

「カイ、アタシだよ、みさめだよ!わかる!?カイ!!!」って叫んだけど、
カイはうなってるだけだった。

CTを終えて出て来たお医者さんに、「ご家族ですか?」と言われて、
事故現場に居合わせた職場の同僚です、彼は群馬から出て来てるので、と答えると、

うなづいて、
「頭蓋骨を損傷していて、非常に危ない状態です。手術は可能ですが、もとに戻るかどうかは、彼の若い力にかけるしかないと思います」と。
運ばれていくカイを、名前だけ呼んで見送った。

しばらくして、職場の上司たちと、カイのお兄ちゃんと、その彼女さんがきた。
ご両親も、いま群馬から向かっているとのことだった。

カイは、仕事のあとに、お兄ちゃんたちと食事をする約束をしていたそうだ。

上司に大体の状況を伝え、明日からも大変だから、お兄さんも来たし、とりあえずここは任せて帰って休みなさい、と言われ、帰宅した。

事故現場である家の前に戻ると、今度は救急車のかわりに、みたこともないような特殊なパトカーの大群が来ていた。
現場検証だ。
刑事さんみたいなひとがいた。バッグがみつかっていないって聞いたけど、みつかったんですか?って聞いたら、自分は非番で、大きな事故が起きたということで呼び出されたところで、まだぜんぜん把握できてないんですよ、申し分けないです、

と、その刑事さんは丁寧に謝ってくれた。軽く事情を話すと、なにか後日お手伝いいただくかもしれません、よろしくおねがいします、と言われた。

外食の予定だったのに放り出された父も、状況をなんとなくわかったらしく、
みんなでカップラーメンになったけど、文句は言わなかった。

その夜は、たびたび聞こえる他の救急車のサイレンにおびえながら、眠りについた。

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やはり長くなったので、続く。