ロシア:「闇」深く…反政権に凶行再び 野党指導者射殺
2015年02月28日

ネムツォフ氏が殺害されたモスクワ中心部の現場に花をささげる市民=2015年2月28日、田中洋之撮影

 【モスクワ田中洋之】ロシアの野党勢力指導者で元第1副首相のボリス・ネムツォフ氏(55)が2月27日深夜、モスクワ中心部で何者かに射殺された。プーチン政権批判の急先鋒(せんぽう)だったネムツォフ氏の暗殺は社会に衝撃を与えている。事件の背景は明らかになっていないが、昨年3月のウクライナ南部クリミア半島の一方的編入でロシア愛国主義とプーチン大統領の支持率が高まるなか、政治的な寛容さが失われている点を指摘する声もある。

ネムツォフ氏は3月1日にモスクワで大規模な反政権デモを計画していたほか、ウクライナ危機へのロシアの直接介入を証明する報告書を準備していたとされる。弁護士によると、同氏は最近ネット上で脅迫を受け、警察に通報したが、身辺の警護態勢はとられなかったという。野党勢力は1日の反政権デモを中止し、モスクワ中心部で同氏の追悼行進を行う。

 ネムツォフ氏が歩行中に車から銃撃された場所はプーチン氏が執務するクレムリンのすぐ近くで、野党勢力からは「見せしめ効果」を狙った犯行との見方が出ている。2006年に政権批判で知られた女性記者アンナ・ポリトコフスカヤ氏が殺害されたのは、プーチン氏の誕生日だった。同年にロンドンで起きたロシア情報機関元幹部リトビネンコ氏の毒殺など、反政権派に絡む変死・暗殺という「闇」の歴史が繰り返された形だ。

 ロシアの野党陣営がプーチン政権の締め付け強化で影響力を失うなか、一定の知名度を持つネムツォフ氏は反政権運動の数少ないシンボルだった。同氏を失ったことでロシアの変革を求める勢力はさらに後退を迫られる可能性がある。野党指導者のルイシコフ氏は今回の暗殺の背景として「(プーチン政権と)異なる見解を憎悪する雰囲気が社会に広がっている」と指摘する。

 ロシア捜査当局は28日、ネムツォフ氏暗殺について国内情勢を不安定化させる挑発や、イスラム過激派の犯行の可能性を指摘したが、政権側による陰謀説は触れなかった。プーチン氏は事件の徹底捜査を指示したが、過去の暗殺と同様に真相解明を疑問視する見方が早くも出ている。
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