イヴァン・シーシキン、<正午、モスクワ郊外>、1869年
こんな絵に今まで会っただろうか。
画面の四分の三を占める空。そして、その下に広がる大地。
こんな場所があるのか。
そして、画面の真ん中を奥へ奥へと誘うように伸びて行く、ややぬかるんだ道。そこに自分の足で踏み入ってみたい。誘われるままへ奥へ奥へと進んでみたい。風を顔に感じ、肺一杯に吸い込んでみたい。
そう思わずにいられない、しばらくその前から動けなくなる風景画に会ったことは、それまで無かった。
先日終了した『国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア』(Bunkamura ザ・ミュージアム)で、シーシキンのこの絵に出会ったことは、2018年における出会いで、もっとも大きなものと言えるかもしれない。
風景画というと、まず思い浮かぶのはやはり印象派だろうか。木漏れ日や、水に反射してきらめく光。一瞬の輝き(印象)を描きとどめた作品の数々は、日本では人気が高い。
他に思い浮かぶのは、印象派の先駆というべきイギリスのターナーとコンスタブルあたりか。
あとは、個人的にはドイツのカスパー・フリードリヒが好きだ。
カスパー・フリードリヒ、<雲上の旅人>、1817年
印象派やフランスの絵画だけではなく、どちらかといえばマイナーな国や派の作品も併せて紹介する、そんな本があったらどうだろう。
西洋に焦点を絞るなら、ヴェネツィア派の絵画も入れたい。イタリア絵画は人間が中心となるからそちらに眼が行きやすいが、ヴェネツィア派のティツィアーノらは、背景の空の表情にも着目したい。
いっそ、「空」に、「水」や「山」を組み合わせて章を作るなら、日本の水墨画なども扱えるのではないだろうか。
ティツィアーノ、<うさぎの聖母>、1530年頃
参考(過去記事)
~ロシア絵画を旅しよう~Bunkamura ザ・ミュージアム 『国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア』 内覧会レポート
http://girlsartalk.com/feature/31176.html