ネット小説紹介~『戦国リーゼント』 | Studiolo di verde(ストゥディオーロ・ディ・ヴェルデ)

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 笑いたくなった時、つい何度も読み返してしまうネット小説を今回はご紹介。

 書籍化されないだろうか。

 

 

 まず思い浮かべていただきたい。
 ドラマでも映画でも良い。とある場所を舞台に、大名たちの互いの存亡を賭けた合戦が行われている。刀や槍をふるう兵士、揺れる旗。どちらが勝つか。その場にいる者たちの誰にも、それは見えない。
 しかし、そこに異変が生じる。轟音と共にある方角から、新たな軍勢が現れるのである。戦場であるにも関わらず、彼らは鎧を身に着けていない。見たこともない服装をしている。手にした長い鎖やら棍棒と思しき物体を振り回し、馬ではなく鉄の車に跨り、戦場を駆けていく。
 
 「小説家になろう」に掲載されている『戦国リーゼント』(作者・寛喜堂秀介)は、現代人が異世界や過去に漂着するトリップ系に属する作品である。
 このタイプの作品は最近特にネット小説に多い。何らかのスキルを持った主人公が、異世界に行ってしまい、己の知識で道を切り開いていき、本来所属する世界では叶わなかったような大成功を収める、というのが大抵の展開である。
 しかし、この作品の独特な点は、まず異世界(戦国時代)に転移してしまうのが、主人公・山田正道一人ではなく、彼が率いる暴走族100人という集団であることだ。100人といえば、学校の一学年分に少し足りないくらいである。しかも、リーゼントや長ランに身を固め、愛車に跨り、いざ走ろうというところで、不可抗力で別の時代に移動してしまう。団体ツアーと言うべきパターンは、私の知っている限りでは他に例がないと思う。
 着いた先は、尾張。そして出会ったのは、まさに桶狭間に向かう途上の織田信長だった。拳での語り合いを通して、信長と互いを認め合った正道は舎弟たちを率いて乱戦真っただ中の桶狭間に助太刀に向かう。
 
 歴史ものではあるが、特別な知識は無くても安心して読める。一息に読めてしまう。そもそも一人を除いて、主人公側に戦国時代についての知識が全くない。彼らはあくまで自然体に振る舞い、バイクを走らせ、身を寄せた熱田を盛り上げ、信長の天下布武の野望を支える一翼を担う。
 しかし、信長とも良好な関係が永遠に続くわけではない。戦国時代を代表する英雄などというものは関係ない。互いに認め合い、義兄弟となった間柄だからこそ、主人公は終盤である選択をする。この展開には驚かされるが、主人公のキャラクターがしっかりしているからこそのものだろう。そして、作品自体の魅力でもある。
 具体的に何が起きるのか。その先は、どうなっていくのか。
 それは、是非ご自身の目で確かめていただきたい。


 『戦国リーゼント』(作者・寛喜堂秀介)
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