国家的な危機を語り掛ける事のタイミングはとても重要だ。
エマニュエル・マクロン大統領はフランス国内でのデルタ株の流行に際して先日重要なスピーチを行った。
まず現在、医療関係者の尽力によって感染拡大が抑えられていて日常生活を取り戻す事が出来ている事について感謝の意を表明し、2021年の経済成長率にも言及した。
その上で他のヨーロッパ諸国と比較しても学校閉鎖が12週間で抑えられており、自らの政権の政策が間違っていない事を強調した。
ただここから重要な事として、現在のフランスでの新型コロナウイルスの感染者の60%がデルタ株によるものとし、世界中での流行の危機の真っ只中である事を強調して、9月15日までの医療従事者へのワクチン摂取の義務化を発表する。
摂取しない従事者には例外なく勤務不可とする罰則付で、だ。
また医療従事者でない一般の国民にもワクチン接種の重要さを強調し、イベントや文化・娯楽施設の利用についてワクチンパスまたは48時間内のPCR検査結果の提示の義務化を表明。
また8月以降では外食、電車やバス、飛行機での長距離移動にも上記の証明が求められる事になった。
上記の対象は従事者にも求められ、事実上のワクチン接種の義務化と考えていい。
マクロン大統領のこの義務化の発表の巧妙なところはバカンスシーズンにコレを訴えた事である。
それだけ重要でデルタ株の流行を抑える為には猶予が無いという事を訴える為のタイミングであるし、何よりバカンスシーズンなのでデモをしたがる連中も集まらないという、なかなかしたたかなタイミングと立ち振舞である。
バカンスと余興を盾にしてワクチン接種と危機を訴える事で、それらに命を掛けるフランス人にとってもウイルス接種の要請に従った上で危機を否応なく認識せざるをえない訳だ。
僕はマクロン大統領の事を、マリーヌ・ル・ペンの国民連合という極右政党へのカウンターで出てきて政権を幸運にも取れてしまった人だと思っていた。
実際フランスの前回の大統領選は右か左かどっちを選ぶかで、仕方無しにマクロンを選んだという側面も強いと思う。
だけどもこのしたたかで巧妙なワクチン接種の義務化とその先にあるものを示す政策はフランスとその未来を真剣に考えた上で断行しているのだろう。
このコロナ禍で、僕はあまり好きではなかったジョンソン首相やメルケル首相、マクロン大統領への評価を改めざるを得なくなっている。
もちろんこうした素晴らしい事で評価を改める事は喜ばしい事であるのだが、その反面上記のコラムでもマクロン大統領にネタにされてる東京五輪を断行しようとしてる御仁達の考えてる事を思うとなんだかゲンナリする訳で。
ジョンソン首相やメルケル首相やマクロン大統領の様に、この危機に対して政治家が伝えるべきメッセージは何であろうか。
少なくともチャイニーズピープルの為にスポーツで感動して、今そこにある危機を見て見ぬ事にしようとバッハ男爵様が提言する有り難いお言葉を首肯する事ではないよね。