ぼちゅは毎朝4時半前後に起床し

外に遊びいにくのにドアを開けろと、人間を起こします。

鳴きます。とにかく鳴き続けます。

人間が玄関ドアを開けるまで鳴き続ける頑固さ。一体全体、誰に似たのでしょう。



 

ぼちゅの意思表示。

朝っぱらから本当に大きな声で鳴きます。

 

 

 

 

さて。

私が体調を決定的に悪くした、

とりあえずパニックというものに苦しむようになった最初の症状は

ひどい胸のむかつきでした。

普通にご飯を食べていたのに、急にムカムカに襲われ

それ以降一口も飲み込めない。

最初は、あれ?おかしいな。

夏バテかしら(真夏でしたから)、とあまり気にしなかったのですが

次第に回数が増えていくようになりました。

 

当時、転職したての私は研修中で

必ず先輩・上司と一緒に1日を過ごし、必然的に昼食も一緒でした。

皆親切で、頻繁にご馳走になっていたので

残すのも気が引け、

戸惑いはますます大きくなり

昼食が苦痛になってきました。

食欲は日に日に失せ

食事がだんだん取れなくなり

キャラメルやココアなんかで、お茶を濁していました。

周りには、夏バテで食欲がないのだと

なんでもないふりをし続けていた。

 

 

 

ただの夏バテ、新しい職場での緊張、

そんなもんだと思っていたのに。


 

 

 

結局、せっかく苦労して入れる予定だった会社には入れず

それどころか一人で外出もままならない生活が始まりました。

 



毎日毎日ムカムカと食欲不振が続き

固形物が食べられなくなりました。

しまいにはお腹が減って何か食べたくてしょうがないのに

身体が食べ物を受け付けてくれない。

 

嫌いなものなんてほとんど無かったのに

甘酒と水、豆腐、りんごを少しくらいしか食べられない。

自分の身体に一体何が起こっているのかわからず

混乱して、恐怖におののいていました。

 

 

 

今思えば、私のお腹の中には

今まで言いたかったのにグッと飲み込んだ言葉が

真っ黒に焼け焦げて固まって、

マグマみたいにフツフツと煙を上げて

大きな塊になっていたんじゃないか。

 

それが溢れるまでになって、お腹を圧迫していたんじゃないか。

 



 

その頃の私は確かに、もう誰の理論もメソッドもアドバイスも教義もありがたいお言葉もこの世の真理も

 

何一つ、他人の考え、価値観は欲しく無かった。

もうお腹いっぱいだった。

それを全部全部吐き出して、自分を楽にしたかった。

 


 

 

医学的には、機能的に大きな異常は無かったので

実際のところはわかりませんが

私が自分の身体の異常に感じていたことは

こんな事でした。

 

あながち、間違ってもいないと思います。



 

タイトルの「物言わぬは腹膨るるわざなり」は

亡くなった母方の祖母が、しょっちゅう口にしていた言葉でした。

お姑さんから、辛くあたられて

いつも黙って耐えていたんだそう。

そのことは、繰り返し聞かされてましたから

「またその話?もーそれ、10回聞いた」

なんてうんざりしてましたが

その繰り言は、おばあちゃんの精神の健康に

必要なことだったんだろうな。

おばあちゃんのお腹も膨れてたのかな。痩せてたけど。

 

 

少なくとも私のお腹はきっと、言えなかった言葉で

ぱんぱんに膨れていた。

おばあちゃんのことわざは本当に正しかった。

 

ばあちゃん。その言葉の意味まできっちり解説しててくれたら良かったのにさ!と

軽く八つ当たりしたい気持ちにならないことはないですが

 

身をもって経験したよ。

孫はまた一つ、人生勉強をしましたよ。

 

 

 

ぼちゅ。とりあえず、鳴きたいときは鳴いてくれ給え。

元気で長生きしてほしいからね。