注意

こちらネタバレ込みでの感想ですが

見た人にしかわからないようなネタバレの仕方ですので

該当作品を読んでいない方が理解できるような内容ではございません。

 

該当作品はこちらです。

「キャッチコピーが思いつかない」とやたらTwitterで話題になっていたため何事かと思い、

読んでみた当作品。

 

読む前の読書コメントで

「二周目で見え方がガラッと変わる」

といったものがあったため、数回読むつもりで挑んだのですが

最初の段階で「何が来る何が来る」とそわそわしていた予感のようなものが

二周目以降は「来てる来てる」というぞわぞわしたものに変わったといいますか

わかった後により薄気味悪さを各所から感じられるような作品でした。

 

さて、ネタバレ含めで感想書きます。

Facebookで昔の知人を見つけて思わずメッセンジャーを送った50代男性の

メッセージから話が開始されますが、

長々と書いてしまうところや「ストーカーではありません」と

自分で言ってしまうあたりの痛さというか

予防線の張り方がより危なく感じられるのはおかしな点ではないというか

こういうオッサン、いますよね。というくらい。

 

自分の中では貴方はあのとき(相手の女性が結婚式場に現れなかった出来事)

に死んでいる、と勝手に言っておきながら

いざ返事が来ると相手の現在の苗字を知りたがったり住所を知りたがったり

未練たらたらじゃないかと思えるあたりは一周目の嫌悪感でした。

 

お互いのやり取りの中で昔の印象的な出来事の答え合わせが

なされるシーンは唯一懐かしさが伝わるようでほっとしたものの。

所々で挟まれる男性の警察への苦手意識、これ、何なんだろう?

そして自分が相手と立場が変わって夢を見るという結婚式の出来事で

何故、この人は息を潜めているのか?

結婚式からの脱走ってもっと颯爽と逃げていくものでは?

細かいひっかかりが少しずつひっかかりながら物語は終盤へ。

 

かつての許嫁との離別のくだりから、一気に物語が不穏になっていきます。

男性の語り口では、裏切られたあたりから自分の人生がおかしくなり始めた

という文脈ですし、周りから隠されていた真実を発見したことを語り始めますが

取っておいていた元許嫁の不義の証拠を「警察に押収された」?

ここでも出てくる警察。うっすら何かわかるようではっきりとわからない嫌な感じ。

 

それにしても家庭の事情で風俗で働いていたことについて

知りながら知らないふりをして付き合うのはわかるにしても

「許すと決めたのです」の尊大っぷりと言ったら。

周囲の出来事を許してあげられる立場に自分があるという

無意識での上から目線、というのが感じられてまた別の嫌悪感。

 

しかし真実が全て明かされた、というか

男性の目線では決して描かれなかった面が女性の最後のメッセージで

ぱっ!と出てきたときの衝撃たるや。

嫌悪感の正体がわかったある意味のカタルシスは

タイトルの「ルビンの壺」の別の見方が浮かび上がり

気づいた後には戻れないというショックと共に得られるものでした。

 

性犯罪による逮捕で世間から隔離されていて、出所後初めてPCに触った男性

自分が結婚までしようと思った男性が幼女殺害の犯人という真実を知り

何も言わずに挙式当日姿を消した女性。

脱走後逃げ隠れるように暮らしていた女性に対して、

自分の人生を狂わせた人として明言してしまう男性は

空気が読めないオッサン、でなく狂気の殺人者でした。

 

相手に自分の人生を狂わされてしまったと思い込み

出所後、危害を加えにいった幼女殺害の犯人

ということがわかってしまった今となっては、

話の序盤のメッセージすら恐怖の塊に変貌しました。

何故、苗字や住所を知りたがったのか。

男性の方では執着と怨念の区別はもうついていないのでしょうけれども。

 

男性がメッセンジャーを最初に送信した際の狙いなど

考えれば考える程ぞっとしてしまい

ここにも!ここにも!と男性の執着の欠片が見えるようで

悪寒が止まらない二周目となりました。

 

ミステリーでは決して無い(トリックがないため)のですが

この嫌悪感に耐えられる人は二周目は必読かと。

 

キャッチコピー募集期間中にもう何度か読んでみようか、と思える作品でした。