政宗「約束したろ、愉しませてやるって」
「したけど・・・・・・式は明日だよね?」
不思議に思いながら問い返すと、政宗は唇の両端を上げた。
政宗「結婚前夜から、ちゃんと愉しませてやるに決まってるだろ。行くぞ」
そうして政宗に手を引かれ、部屋を出て------
・・・・・・
「すごい・・・・・・!」
入り口から拝殿まで赤い絨毯が敷かれた神社に到着し、思わず声を上げた。
政宗「明日、ここで式を挙げる」
(この神社でやるんだ。だけどこの絨毯ってなんだか・・・・・・)
政宗「ちょっと待ってろ」
考えているうちに、政宗が控えの間に入っていく。
政宗「待たせたな」
(え・・・・・・!)
政宗が手に持っている色鮮やかなドレスに目を瞬いた。
「このドレスって・・・・・・」
(私がこの前デザインしたウェディングドレスだ)
政宗「お前が描いたものを針子たちに見せて依頼したんだ。かなり急がせたが、間に合ってよかった」
「すごい・・・・・・反物で作られてるの?」
政宗「ああ。お前から聞いたような材質のものを異国から取り寄せるのは、今回難しくてな」
「・・・・・・こんな素敵などこからでも、初めて見たよ」
政宗「せっかく挙式するんだからな。お前、このどれすを着たかったんだろ」
(私がウェディングドレスに憧れてたことに気づいて、叶えてくれたんだ)
「この赤い絨毯はヴァージンロードだよね?ありがとう・・・・・・凄く嬉しい」
滲む視界のままお礼を言うと、ゆっくりと政宗の瞳が近づいた。
政宗「ゆう」
(あ・・・・・・)
穏やかな声で名前が紡がれた次の瞬間、政宗の唇が柔らかく私に重なる。いつもと少し違うキスは、優しく誓うようなもので、胸がいっぱいになった。
(政宗・・・・・・)
唇が離れると、目の前の前の政宗と見つめ合う。
政宗「明日は偽りの式だが・・・・・・そんなことはどうでもいい」
政宗「俺の妻になれ、ゆう」
政宗「一生、大事にする」
かっこいい~政宗♡
「うん・・・・・・私を、政宗のお嫁さんにしてください」
政宗「ああ。お前が嫌だって言ったって、俺の妻にするけどな」
「嫌だなんて、言うわけないでしょ!」
おかしくなって、お互いにふっと吹き出して、笑い合った。もう一度唇が落ちてきて、触れ合ったところから愛しさが溶けだす。戯れるようなキスを繰り返しながら、次第にお互いふかいものへと変えていった------
・・・・・・そして式が行われる当日を迎え------
手伝ってもらいながらウェディングドレスに着替え終えると、女中さんが顔をほころばせた。
女中「ゆう様、とてもお綺麗です」
「ありがとうございます」
その時、控え室の襖が開く。
政宗「支度はできたか?」
「あ、政宗。今着替え終わったところだよ」
政宗「------・・・・・・」
振り返った私に、政宗は少し目をみはった。
(どうかな・・・・・・)
政宗「やっぱり思ったとおり、よく似合う」
「本当?」
褒め言葉に照れくさくも嬉しくなっていると、耳元に政宗が顔を寄せ・・・・・・
政宗「このまま脱がせたくなるな」
「っ、もう・・・・・・」
(女中さんたちもいるのに・・・・・・!)
私、冗談言う男の人好きー!
「冗談だ、行くぞ」
私へと、うやうやしく腕を差し出した。凛々しい立ち姿と所作は男らしくてかっこよく、どきりとしながら腕に手をかけた。
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ヴァージンロードを踏み出した私たちに、惜しみない祝福の声や拍手が贈られる。
(みんな、来てくれたんだな)
織田軍の面々から少し離れたところには、例の大名もいた。
秀吉「これより政宗とゆうの婚礼儀式を始める。政宗、本当にゆうを幸せにすると誓えるか」
政宗「何度も聞くな。当たり前だろ」
秀吉「そうか」
ようやく安心したのか、秀吉さんが私に微笑みかけた。
秀吉「ゆう。幸せになれよ」
「うん!」
政宗「ゆう」
(あ・・・・・・っ)
名前を呼ばれた次の瞬間、腰をぐっと抱かれ口づけられる。
(みんなの前なのに、こんなキス・・・・・・!)
深くて熱い口づけに、恥ずかしくて胸を軽く押し返すけれど、離してもらえない。
「ん・・・・・・っ。ま、政宗・・・・・・!」
ようやく唇が離れて咎めると、政宗はにやりとした。
政宗「もう夫婦なんだからいいだろ」
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大名「・・・・・・こんな結婚、私は認めない」
恨みがまじく呟いたその時------
光秀「失礼」
大名「! み、光秀様・・・・・・」
光秀「こうして正式な婚姻をまえにしても、まだゆうが諦められませんか?」
大名「それは・・・・・・」
光秀の問いかけに、大名は答えられないのか口ごもった。
光秀「まぁ、その気持ちもわからなくはない・・・・・・が。あなたも、織田傘下に入ったというなら、覚えておけと良い・・・------敵に回すと厄介な者が、ここにはたくさんいますから」
大名「っ・・・・・・」
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つつがなく婚礼の儀式が終わると・・・・・・
三成「政宗様、ゆう様、おめでとうございます。どうぞお幸せに」
私たちの元にやってきた三成くんから豪華な花束が贈られた。
「わ、素敵・・・・・・! ありがとう、三成くん」
政宗「次は、ぶーけとす、だろ?」
(そのための花束だったんだ・・・・・・!)
光秀「ちゃんと人がいるところを狙え、ゆう」
「意地悪言わないでください!」
気を取り直し、青空に向かってふわっと投げると------
家康「っ、は?」
落ちた花束は、家康の手の中にぽすんと収まった。政宗は、ひゅうっと口部を鳴らす。
信長「ほう」
三成「わぁ・・・・・・! さすが家康様!」
家康「・・・・・・勘弁して」
光秀「幸せのおすそ分けだそうだな。おめでとう」
家康「・・・・・・はぁ。まぁ、いいけど」
ふっと笑う家康の表情は柔らかい。
家康「ゆう、幸せになりなよ」
心からそう思ってくれていることが伝わって、私も家康に笑顔を返す。
「・・・・・・ありがとう」
そうして、みんなからのたくさんの祝福を受け・・・・・・幸せな気持ちで式を終えることができた。
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今日は御殿には帰らず、ふたりで宿に泊まることになっていた。
(初夜ってことだよね・・・・・・)
静かな部屋に政宗とふたりきりになり、緊張で脈が速まっていく。
政宗「ゆう、こっちに来い」
(っ・・・・・・)
引き寄せられ、膝の上に乗せられて鼓動が跳ね上がる。
政宗「捕まえた。ようやくふたりきりになったんだ。側にいろ」
「う、うん・・・・・・」
政宗「今日はさすがに疲れたな」
「そうだね・・・・・・」
政宗「ん? なんだお前、緊張してるのか」
私の様子に気づいた政宗が、意地悪そうな顔で覗き込んできた。
「するよ・・・・・・!
偽装だって言われたって・・・・・・」
政宗「ゆう」
優しい声で名前を呼ばれて・・・・・・
「え? ・・・ん・・・・・・っ」
顎をすくわれるまま唇が重なり、唇を割って入り込んだ舌に貪られた。激しいのに優しいキスを繰り返されて、身体の奥が甘く痺れる。
(政宗・・・・・・?)
唇を離し、政宗は真剣なまなざしで私を見つめてた。
政宗「・・・・・・偽装とは言え、愛してることは変わらないし、お前のことがほしいことも変わらない」
「うん、私もだよ。政宗を愛してる」
政宗「ああ、知ってる」
表示を緩めた政宗が、くすぐるように私の頬を撫でた。
政宗「いつも可愛いが、今日のお前は綺麗だな」
「っ・・・・・・、政宗、恥ずかしいから・・・・・・」
照れくささから顔を逸らすと、両頬を包まれ引き戻される。
政宗「これも本当のことだ。それに、今は夫婦だろ、恥ずかしがってる顔も、全部見せろ。まるごと愛してやる」
「あっ・・・・・・」
首筋に口づけられ、甘い刺激に震えるうちに押し倒されてしまう。
(政宗ばっかりこうやって余裕なのも悔しいし、恥ずかしい。でも・・・・・・政宗に全部愛して欲しいし、政宗の全部を、愛したい)
想いが膨らみ、政宗の首にぎゅっとしがみつく。愛し愛されるふたりの一夜が、これから始まった------